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「先程のお二人の私についての会話なら聞きましたが」
私は迷わず素直に答えた。特に重要機密な話ではなかったから、聞いていないと嘘をつくようなものでもないと判断したがゆえに。
「何も………何も思わなかったのですか」
「おい、王妃よ。それぐらいに………」
「? 質問の意図がよくわかりませんが、私がこの国の王に相応しいか、相応しくないかは陛下が決めることです。相応しくないなら私は次に生まれる子の臣下にでもなりましょう」
何を気遣ってか、父が母を止めようとしたが、私は質問の意図を理解しないままに思うことをそのまま話した。正直、王太子として生まれたからこそ、その責務を全うしているだけであって、私自身は別に王でなくても構わなかったから。
その私の答えに、陛下は驚いたように目を見開き、母はどこか恐れるように私を見た。けれどやはり、それに私が何か思うことはない。
「話が終わったなら他にやることがあるので行きますが」
「まるで……他人ですね、リューシル」
「? 血の繋がりはあるはずですが」
ここまで来ると母が何をしたいのか全く理解できなかったが、どうでもよくもあった。所謂やろうとしてることも自分で習うべき勉学を進めたり、身体を鍛えたりなど大したことでもなかったため、母の話に付き合えばいいのだろうか?なんてそう疑問を感じるだけ。
「………リューシル、貴方には楽しいと感じる心はないのですか。悲しいと思う心すら………」
「王妃よ、落ち着きなさい。リューシル、もう行ってよい」
「はい」
「待ちなさい!貴方には心が、心が……!」
泣き叫ぶ母を私は無視して部屋を出た。母の言う心がよくわからないままに。
そんな母の言葉にも揺らがなかった私が心を………いや、感情を知る機会となったのはある日のお茶会でのこと。エリーゼ・ファセルとの出会いの日だった。
「あなたひまなの?ひまそうね、ならわたしのすることに、つきあいなさい!」
自分は偉いんだぞ!とばかりにふんぞり返る貴族の子供は少なくなかった。そんな中で現れたエリーゼも、その様子こそ珍しくはなかったが、私に命令するものは父や母を除いてエリーゼが始めて。
どんなに偉そうな子供も逆らっては行けない存在くらいは言われているものだから。
「………ご令嬢、私はリューシル……」
相当甘やかされて私の存在を知らないのかもしれない。さすがに同じ子供相手に、無礼を叱る器量のなさを見せるつもりもなく、自己紹介をすることで教えようとした。
「おうじさまでしょ?しってるわ!わたしはエリーゼ・ファルセ!よろしくしてあげてもいいわ」
しかし、エリーゼは私の身分を知りながら関わってきたのだと言葉から理解すれば、逆にどうしたものかと思う。ファルセは王家にも並ぶ公爵家の家名だったために。
生意気な様子に嫌みや悪意は感じられないため、どちらにしても同じ子供にすら距離をとられる私は、エリーゼに従うことにした。もしかしたらこのときからエリーゼに興味を抱いていたのかもしれない。
そんなエリーゼが私を連れていった先はお茶会会場の隅っこ。
「こんなところで何を……」
「わたしとあなたをね、バカにしたひとたちをぎゃふんといわせるの」
ふふんと満足気にエリーゼが笑い、どう入れていたのかスカートの下から水鉄砲をふたつ取り出す。そして片方を私に手渡した。
「さあいくわよ!」
「え」
気がつけば普段なら絶対しないことを、私はエリーゼに言われるまま水鉄砲を放っていた。そうして騒ぎになるお茶会で私はただただ、ひとり楽しそうに笑うエリーゼに惹かれていた。自分にはないものを持つエリーゼに。
私は迷わず素直に答えた。特に重要機密な話ではなかったから、聞いていないと嘘をつくようなものでもないと判断したがゆえに。
「何も………何も思わなかったのですか」
「おい、王妃よ。それぐらいに………」
「? 質問の意図がよくわかりませんが、私がこの国の王に相応しいか、相応しくないかは陛下が決めることです。相応しくないなら私は次に生まれる子の臣下にでもなりましょう」
何を気遣ってか、父が母を止めようとしたが、私は質問の意図を理解しないままに思うことをそのまま話した。正直、王太子として生まれたからこそ、その責務を全うしているだけであって、私自身は別に王でなくても構わなかったから。
その私の答えに、陛下は驚いたように目を見開き、母はどこか恐れるように私を見た。けれどやはり、それに私が何か思うことはない。
「話が終わったなら他にやることがあるので行きますが」
「まるで……他人ですね、リューシル」
「? 血の繋がりはあるはずですが」
ここまで来ると母が何をしたいのか全く理解できなかったが、どうでもよくもあった。所謂やろうとしてることも自分で習うべき勉学を進めたり、身体を鍛えたりなど大したことでもなかったため、母の話に付き合えばいいのだろうか?なんてそう疑問を感じるだけ。
「………リューシル、貴方には楽しいと感じる心はないのですか。悲しいと思う心すら………」
「王妃よ、落ち着きなさい。リューシル、もう行ってよい」
「はい」
「待ちなさい!貴方には心が、心が……!」
泣き叫ぶ母を私は無視して部屋を出た。母の言う心がよくわからないままに。
そんな母の言葉にも揺らがなかった私が心を………いや、感情を知る機会となったのはある日のお茶会でのこと。エリーゼ・ファセルとの出会いの日だった。
「あなたひまなの?ひまそうね、ならわたしのすることに、つきあいなさい!」
自分は偉いんだぞ!とばかりにふんぞり返る貴族の子供は少なくなかった。そんな中で現れたエリーゼも、その様子こそ珍しくはなかったが、私に命令するものは父や母を除いてエリーゼが始めて。
どんなに偉そうな子供も逆らっては行けない存在くらいは言われているものだから。
「………ご令嬢、私はリューシル……」
相当甘やかされて私の存在を知らないのかもしれない。さすがに同じ子供相手に、無礼を叱る器量のなさを見せるつもりもなく、自己紹介をすることで教えようとした。
「おうじさまでしょ?しってるわ!わたしはエリーゼ・ファルセ!よろしくしてあげてもいいわ」
しかし、エリーゼは私の身分を知りながら関わってきたのだと言葉から理解すれば、逆にどうしたものかと思う。ファルセは王家にも並ぶ公爵家の家名だったために。
生意気な様子に嫌みや悪意は感じられないため、どちらにしても同じ子供にすら距離をとられる私は、エリーゼに従うことにした。もしかしたらこのときからエリーゼに興味を抱いていたのかもしれない。
そんなエリーゼが私を連れていった先はお茶会会場の隅っこ。
「こんなところで何を……」
「わたしとあなたをね、バカにしたひとたちをぎゃふんといわせるの」
ふふんと満足気にエリーゼが笑い、どう入れていたのかスカートの下から水鉄砲をふたつ取り出す。そして片方を私に手渡した。
「さあいくわよ!」
「え」
気がつけば普段なら絶対しないことを、私はエリーゼに言われるまま水鉄砲を放っていた。そうして騒ぎになるお茶会で私はただただ、ひとり楽しそうに笑うエリーゼに惹かれていた。自分にはないものを持つエリーゼに。
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