嫌われ悪役令嬢と人形王子

荷居人(にいと)

文字の大きさ
3 / 8

3

しおりを挟む
そんな騒ぎになったお茶会後、私はエリーゼと共に互いの父に叱られることに。私は叱られる案件ではあることを理解していただけで何も感じなかったが、エリーゼは拗ねた様子で、私としてはそちらの方が気になって仕方なかった。

「わたしはわるくないもん………」

「エリーゼ……人様に迷惑をかけることは悪いことだよ」

愛娘なのだろう。ファルセ公爵は強く叱れない様子で、反省を見せないエリーゼに困った様子が伺える。

反省したふりでもすればいいだろうに、それができないエリーゼは素直なのだろう。だからこそ好感が持てたし、庇いたくなったのかもしれない。

「それぐらいでいいのでは?」

「殿下……しかし…………」

「私が言えたことではないが、元々公爵令嬢でもあるエリーゼ嬢をバカにしたものたちもいたようだし、無礼を咎めるより安く済んだと思えばいいかと」

「リューシル!」

私の言葉にぱあっと明るくなるエリーゼ。本当に素直でわかりやすい。勝手に呼び捨てにしたことも気にならないくらいに、エリーゼの笑顔は眩しかった。

「エリーゼ、殿下を呼び捨てにしては………」

「いや、構わない。エリーゼの好きに呼ばせてあげたい」

「リューシルありがとう!ほら、おとうさま!わたしはわるくないんだから!」

「エリーゼ………はぁ」

私が庇ったことでエリーゼは調子に乗ったようだ。ファルセ公爵は参ったとばかりの様子だが、エリーゼの自信満々の様子が素直に可愛らしいと思う。

そこでふと何気なく父と母を見て、どこか驚いた様子で私を見る姿にはっとした。なんだかいつもと違う自分に。今まで誰かが何をしようと、されようと何も思わなかった私が、エリーゼに対して動く想い。

「………これが」

感情?

「リューシル、きょうはたのしかった?」

エリーゼにだけ動く心。

「エリーゼ!」

「もうおとうさまったらすぐどなるんだから!」

一度気づけば理由など考えることもなく理解した。初めて経験する感情というものを。

何故かなんてわからないが、エリーゼは私に心を教えてくれる。その心は決して悪いものではなく、生まれて初めて私は欲と言うものを覚えた。

エリーゼがほしい………と。

「気にしないで、ファルセ公爵。私も楽しかったから。これはエリーゼ嬢とだから楽しめたと思うんだ。エリーゼ嬢、よければ私と将来を共にしよう?」

「殿下!それは……」

「リューシル何を……」

青ざめるファルセ公爵と、声をあげる父上。本当なら父に許可をもぎとってから婚約を結ぶべきだろう。だけど、それすら待ちきれないほどに確実にエリーゼを私のものにしたかった。

「しょうらいをともに?リューシルとずっといっしょってことかしら?」

「うん、そうだよ。結婚の約束と言えばわかりやすいかな?」

「けっこん!そっか、そうなのね!リューシルがわたしのはくばのおうじさまなのね!」

「ふふ、そうだね」

白馬の王子様と言えば子供の貴族令嬢に人気の絵本があったはずだ。恐らくエリーゼもそれに憧れているのだろう。エリーゼが望むなら白馬を買って絵本を再現してもいい。それでエリーゼが私から離れようとしないのであれば。

「やっぱりそうだとおもったの!リューシルはきらきらしてるから!」

「きらきら?」

「うん!きらきらしてる!だからね、わらったらもっときれいだとおもったの!」

エリーゼの言うきらきらがよくわからないけれど、悪い気分ではなかった。笑顔で話すエリーゼはそれこそ眩しいくらいに輝いていたから。

「エリーゼ嬢………いや、エリーゼ。私はエリーゼといればエリーゼの言うきらきらをもっと出せると思う。必ず君の理想の白馬の王子様となるから、私と結婚を約束してくれるかい?」

「うん!」

貴族令嬢にしては元気がよすぎる返事。それでもそれがエリーゼであり、私が惹かれた存在なのだ。エリーゼにはずっと笑顔でいてほしい。そう思える自分がいる反面、エリーゼを閉じ込めて一人占めしたいという独占欲も同時に溢れる。

欲とは一度出ると溢れてままならないのだと初めて知った。それすらも嬉しく思う。何も感じない世界はあまりにもつまらなかったから。

「ありがとう、エリーゼ。陛下、王妃様………いえ、父上、母上、私の初めての我が儘です。エリーゼを婚約者として認めてください」

認める以外に聞く気はないという意思表示も込めて、私は覚えた笑みを携えて許可を求めた。エリーゼとの婚約の許可を。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

この悪役令嬢には悪さは無理です!みんなで保護しましょう!

naturalsoft
恋愛
フレイムハート公爵家令嬢、シオン・クロス・フレイムハートは父に似て目付きが鋭くつり目で、金髪のサラサラヘアーのその見た目は、いかにもプライドの高そうな高飛車な令嬢だが、本当は気が弱く、すぐ涙目でアワアワする令嬢。 そのギャップ萌えでみんなを悶えさせるお話。 シオンの受難は続く。 ちょっと暇潰しに書いたのでサラッと読んで頂ければと思います。 あんまり悪役令嬢は関係ないです。見た目のみ想像して頂けたらと思います。

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

処理中です...