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番外編年齢制限なし
番外編~前編・サプライズはもう考えない~
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「兄上、何故黙って王宮を出たんですか?」
肩を捕まれ振り返れば、フードを被ったお忍び姿のトア。他人に見せる冷めた表情をして俺を見ている。しかし、他と違うのは、不安と怒りと恐怖と執着心で複雑に絡まる感情を宿した目。だが、トア、兄上はひとつ言いたいことがある。
それを言う前に、トアに見つかるまでの話をしよう。
トアに見つかったのは抜け出した早朝からかなり時間が経ち、気がつけば昼過ぎの時刻のこと。俺は近いトアの誕生日に、サプライズでプレゼントをするため、隣に眠るトアを置いて朝早くから王宮を抜け出した。
王命を破ることになるが、破ったところでトアが俺を処刑はしないのもわかっているし、成人してから俺に対して、依存と言う名の執着心が増しつつあるトアに、そんなことできるはずもないと思ってさえいた。
王になるまでは離れることはあったし、寧ろ離れて何年と会わなかった日々すらあった。側近に心を開きつつあるのは見てわかるから、側近に伝言を頼めば、多少は大丈夫だろうと思ったわけだ。
側近に凄く止められたが、気にしすぎだと振り切って、王の溺愛する兄と騒ぎにならないよう、トアとお揃いのフードつきマントを羽織って来たのは王都の市場。
誕生日プレゼントはお金より心のこもった物を。以前トアとお忍びで眺めに来ていた時見つけた場所だった。値段こそ平民でも払ってできるアクセサリー作り。手間をかけるのは自分だからと、手間賃がない分、どこかで下手にアクセサリーを買うよりも安くなると評判らしい。
しかし、仮にも王族、民の税もあるとはいえ、普通なら出来上がった上質なものを買うだろう。だが、愛するトアだからこそ、安物でもなんでも、手作りを渡したかった。
何時間とかけてようやく納得いくものを作ると、気がつけば人だかり。あまりに熱心に、女性に混じりアクセサリーを作る男性に興味が湧いた結果らしい。
『恋人に送るのか?こうケチると出来はいいみたいだが、よくはないんじゃないか?女は装飾品の価値にうるさいからな』
『お金がないなら少しでも出すわよ?あれだけ熱心なんだもの。余程大事な人でしょう?それでは逃げられてしまうわよ』
『なら俺も出そう。なんか応援したくなるんだよな、お前』
『兄ちゃん、これでも俺ぁ儲かってんだ!こんぐらいの金くらい持ってけや、ドロボー!』
凄い勘違いをされ、お金を差し出そうとする人たち。店主、お前が出したら俺はこのアクセサリー代の材料、誰に払えばいいかわからないだろ!
『お、俺は、できあがった誰でも持つような物より、最初から俺の愛情込めて作った、世界で唯一ひとつの物を渡したいんです!』
しーんとして、なんかスベったか?本心なんだがと、微妙に恥ずかしくなってきた瞬間、何故か拍手が沸き上がる。もう意味がわからない。
『感動した!』
『言うじゃねぇか!』
『世界でひとつだけなんて素敵だわ!』
『お金より愛、大事なものを忘れていたわね』
『く……っ兄ちゃん、その言葉はきっと世界を変えるぜ。持ってけ、ドロボー!』
なんだこれ状態。店主は俺に泥棒をしてほしくて仕方ないようだ。トアにプレゼントするアクセサリーだから普通に払いたい。絶対あんたらより俺の方がお金あるに決まっているのに、正体に気づかれたらわかるはずなのに、ここまでの人だかりでバレないし、フード被って隠れるお忍びの意味!俺が恥ずかしいだろ!?
なんてここまでの話で、どこでトアが登場するか、ここである。
忍ぶほど有名じゃねぇよと言われている気分の俺の肩を叩いたのがトアだった。それで冒頭に戻るわけだ。言いたいことはひとつ。なあ、こんな人だかりでそんな言葉言う?
「黒人たちに伝言を………」
「言葉を間違えましたね。何故、僕に、黙って、ここに、ひとりで?」
盛り上がっていた周囲がようやく気がつき始めたようだ。え?え?王様?ってな感じで。うん、トアにはすぐ気づくんだな。王様だもんな。拗ねてなどないったらない。
「今は言えないかなー……」
アクセサリーをそっとポケットに入れる。
「今、聞きたいんですが……ちょうどいい、王命を破ったんです。兄上にもたまには余裕をなくしてもらいましょう」
「えっちょっ!店主、お代!」
「いらねぇよ!」
トアに腕を捕まれ、引っ張られ、どこかに連れていかれそうになれば、投げるようにお金を店主に渡すと投げ返された。落ちるお金を拾うことも出来ず、俺らのも持ってけと投げられるお金たち。
持ってくも何も地面に落ちるお金拾う余裕ないし、お金大事にしようよ。
この国の国民大丈夫かと見ている間も、ズルズルとトアに引きずられ、それが見えなくなった俺は知らない。
この金投げ騒動が、貴族、平民、貧民と、身分を気にしないきっかけとなり、今日この日に『貧相な人にお金を投げつける』なんて言う行事ができることで、貧民はその日同情の分だけ痛い目をみるが、落ちたお金はもらえるため、生活に余裕ができ、貧民による飢え死にが減り、経済の動きがよりよくなることを。
金より愛と令嬢に囁かれ、王都の物作りが盛んになり、『世界にひとつの愛の手作り選手権』なんてものが開催されるようになることで、後に王都から他の街や村に広がり、お金でなく愛を込める手作りを客がすることで、国民にあらゆる分野が鍛えられ、自立心の強い国となり、各国から『愛の国』と呼ばれるようになることを。
気がつけば路地裏に連れて、弟に壁ドンされ、ひび割れるレンガの壁に、思った以上に怒っているトアに気づいて真っ青になる俺は知らないのだ。
肩を捕まれ振り返れば、フードを被ったお忍び姿のトア。他人に見せる冷めた表情をして俺を見ている。しかし、他と違うのは、不安と怒りと恐怖と執着心で複雑に絡まる感情を宿した目。だが、トア、兄上はひとつ言いたいことがある。
それを言う前に、トアに見つかるまでの話をしよう。
トアに見つかったのは抜け出した早朝からかなり時間が経ち、気がつけば昼過ぎの時刻のこと。俺は近いトアの誕生日に、サプライズでプレゼントをするため、隣に眠るトアを置いて朝早くから王宮を抜け出した。
王命を破ることになるが、破ったところでトアが俺を処刑はしないのもわかっているし、成人してから俺に対して、依存と言う名の執着心が増しつつあるトアに、そんなことできるはずもないと思ってさえいた。
王になるまでは離れることはあったし、寧ろ離れて何年と会わなかった日々すらあった。側近に心を開きつつあるのは見てわかるから、側近に伝言を頼めば、多少は大丈夫だろうと思ったわけだ。
側近に凄く止められたが、気にしすぎだと振り切って、王の溺愛する兄と騒ぎにならないよう、トアとお揃いのフードつきマントを羽織って来たのは王都の市場。
誕生日プレゼントはお金より心のこもった物を。以前トアとお忍びで眺めに来ていた時見つけた場所だった。値段こそ平民でも払ってできるアクセサリー作り。手間をかけるのは自分だからと、手間賃がない分、どこかで下手にアクセサリーを買うよりも安くなると評判らしい。
しかし、仮にも王族、民の税もあるとはいえ、普通なら出来上がった上質なものを買うだろう。だが、愛するトアだからこそ、安物でもなんでも、手作りを渡したかった。
何時間とかけてようやく納得いくものを作ると、気がつけば人だかり。あまりに熱心に、女性に混じりアクセサリーを作る男性に興味が湧いた結果らしい。
『恋人に送るのか?こうケチると出来はいいみたいだが、よくはないんじゃないか?女は装飾品の価値にうるさいからな』
『お金がないなら少しでも出すわよ?あれだけ熱心なんだもの。余程大事な人でしょう?それでは逃げられてしまうわよ』
『なら俺も出そう。なんか応援したくなるんだよな、お前』
『兄ちゃん、これでも俺ぁ儲かってんだ!こんぐらいの金くらい持ってけや、ドロボー!』
凄い勘違いをされ、お金を差し出そうとする人たち。店主、お前が出したら俺はこのアクセサリー代の材料、誰に払えばいいかわからないだろ!
『お、俺は、できあがった誰でも持つような物より、最初から俺の愛情込めて作った、世界で唯一ひとつの物を渡したいんです!』
しーんとして、なんかスベったか?本心なんだがと、微妙に恥ずかしくなってきた瞬間、何故か拍手が沸き上がる。もう意味がわからない。
『感動した!』
『言うじゃねぇか!』
『世界でひとつだけなんて素敵だわ!』
『お金より愛、大事なものを忘れていたわね』
『く……っ兄ちゃん、その言葉はきっと世界を変えるぜ。持ってけ、ドロボー!』
なんだこれ状態。店主は俺に泥棒をしてほしくて仕方ないようだ。トアにプレゼントするアクセサリーだから普通に払いたい。絶対あんたらより俺の方がお金あるに決まっているのに、正体に気づかれたらわかるはずなのに、ここまでの人だかりでバレないし、フード被って隠れるお忍びの意味!俺が恥ずかしいだろ!?
なんてここまでの話で、どこでトアが登場するか、ここである。
忍ぶほど有名じゃねぇよと言われている気分の俺の肩を叩いたのがトアだった。それで冒頭に戻るわけだ。言いたいことはひとつ。なあ、こんな人だかりでそんな言葉言う?
「黒人たちに伝言を………」
「言葉を間違えましたね。何故、僕に、黙って、ここに、ひとりで?」
盛り上がっていた周囲がようやく気がつき始めたようだ。え?え?王様?ってな感じで。うん、トアにはすぐ気づくんだな。王様だもんな。拗ねてなどないったらない。
「今は言えないかなー……」
アクセサリーをそっとポケットに入れる。
「今、聞きたいんですが……ちょうどいい、王命を破ったんです。兄上にもたまには余裕をなくしてもらいましょう」
「えっちょっ!店主、お代!」
「いらねぇよ!」
トアに腕を捕まれ、引っ張られ、どこかに連れていかれそうになれば、投げるようにお金を店主に渡すと投げ返された。落ちるお金を拾うことも出来ず、俺らのも持ってけと投げられるお金たち。
持ってくも何も地面に落ちるお金拾う余裕ないし、お金大事にしようよ。
この国の国民大丈夫かと見ている間も、ズルズルとトアに引きずられ、それが見えなくなった俺は知らない。
この金投げ騒動が、貴族、平民、貧民と、身分を気にしないきっかけとなり、今日この日に『貧相な人にお金を投げつける』なんて言う行事ができることで、貧民はその日同情の分だけ痛い目をみるが、落ちたお金はもらえるため、生活に余裕ができ、貧民による飢え死にが減り、経済の動きがよりよくなることを。
金より愛と令嬢に囁かれ、王都の物作りが盛んになり、『世界にひとつの愛の手作り選手権』なんてものが開催されるようになることで、後に王都から他の街や村に広がり、お金でなく愛を込める手作りを客がすることで、国民にあらゆる分野が鍛えられ、自立心の強い国となり、各国から『愛の国』と呼ばれるようになることを。
気がつけば路地裏に連れて、弟に壁ドンされ、ひび割れるレンガの壁に、思った以上に怒っているトアに気づいて真っ青になる俺は知らないのだ。
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