弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)

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番外編年齢制限なし

番外編~南の国の休暇の前の前準備~

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ああ、日差しが眩しい。

今、俺は、トアと側近二人で年中夏と言われる南の国ナンシアへ海を渡って休暇に来ている。前回母のいる山へ行った際、王の代理をトア自らスイレンに頼んだ。トアほどではなくても、王族の血を少なからず持ち、優秀なのだから何の問題もなかった。

スイレンの忠誠は本物だから裏切るような真似もなければ、黒人もスイレンがやりやすいよう動き回ってくれたとスイレン自身がトアに話していた。

さて、問題です。側近二人はもちろんスイレンも含まれています。今の王宮の王の代理は誰でしょう?休暇のために追放した親を呼び出せば色んな意味で問題が出るし、それでもなんとか一時復帰させたとしても、帰ったら王都がなくなっている可能性も考えられました。恐ろしいですね。

王族の親戚を頼るにも、下手に選べば帰るとトアの王権廃止運動がされているなんてこともありえます。王都が消滅するよりかはマシでしょうし、休暇の短い期間だけでできたそれなら、トアであればすぐ片付けられるでしょう。

でも一番は信用できる者、さらに言えば王族の血を持つ者であり、尚且つ優秀、誰もが逆らえない力もあれば批判もないし、手出しするものもいない。言っちゃえば優秀な側近がいなくなれば、王の座を狙うバカが調子づいて、信用でき、王族の血をもってなった代理人を殺害し、王都を乗っ取ろうとする可能性があるわけである。

これに全て当てはまる子がいた。あえての問題点は人間じゃないことと見た目がボーイッシュな幼女にしか見えず、威厳がないことだろうか。まあ『悪魔の幼女ゴーレム』と名を轟かせているので舐められることはない。なんせ、スイレンも敵わない圧倒的な強さ。

それに目をつけたトアが、ミーシャを王の代理にするため、教育を簡単にでも施そうとすれば、多分博士の登場。トアの記憶を魔力で知っているため、そのときに王族の知恵も授かっているとのこと。人格こそトアとは違うが、トアが王としてどう動くかはやるとなれば、誰よりも完璧にできるらしい。

つまりは、人格違いの二人目のトアみたいなものだ。人格違いは王妃の血が思うよりも強いのもあるとか。

人間に見えて人間じゃないミーシャは疲れ知らずで夜こそ眠るよう目を瞑るも、それは寝ているわけではなく、博士が下手に動かれて寝にくくならないよう、魔法設定されているだけであり、少しいじれば、不眠で仕事すらできるし、いじらずそのままでも、実際は寝ているフリなので、暗殺者が来てもすぐ気配察知、もしくは魔力察知を起動して返り討ちくらい簡単みたいだ。それなんて最強兵器?

書類なんてすごい捌いてトアを手伝ってる俺の分までやってのけた上で、側近がしている仕事すら含めて一日でやれるのだから、もう一人で国くらい作れそうだななんて思った。僕より優秀かもしれない。とトアは複雑そうに言った。

でも正真正銘人間じゃないから、非公式な俺たちの弟は。人間ならトアが一番優秀だし、トアの血と記憶を持つから余計優秀なだけだし。強いのはあの王妃の血もあれば納得だ。そんな彼と互角に戦って勝てるトア、普通にすごいと思う。

『ぼく、まだまだだ……!もっと強くならなきゃセト兄の役に立てない!』

そう言っていたミーシャだけど、あれでまだまだなら、俺はきっとミーシャから見れば踏み潰せる蟻でしかないだろうな。それに犯罪組織壊滅をひとりでできるだけでかなり役に立っているからね?普通できないから。

そんなわけでミーシャが王代理。子供に!人間じゃないものが!と反対もあったけど、ミーシャと互角に戦い、尚且つ俺のも合わせた書類仕事、側近たちの仕事も含めて一日でできる者がいるならと言えば全員黙った。

ミーシャと互角なんてまず無理だと誰もが思ったんだろう。博士は王命でミーシャから離れられないので、メンテナスも兼ねて、ミーシャの補佐役として傍に置くことに。

『研究者なのだから研究したいんだな、多分』

とは言うが、少し教えればさすが博士か、中々に優秀。慣れないせいかミスはあるものの、許容範囲。そこはミーシャがフォローするだろう。どちらが補佐かわからなくなる。俺の弟は何故優秀さが超越しているのか。俺にも分けてくれたっていいのに。

博士はあんなんだから、できないと思っていたマナーも意外にできていた。多分の口癖がなければ言葉遣いも……。まあ大丈夫だろう。

とまぁ、おかげで心配なく休暇を楽しめるわけだ。

「兄上!朝食食べて、海!海にいきましょう!」

朝からはしゃぐ成人を過ぎようが俺の前ではいつまでも子供なようなトアが、目をきらきらさせて俺を起こす。

トアが王から解放される今日という一日を最高にしようとすべく、とりあえず起きて朝食を作りはじめる俺。

前準備をしっかり整えてから来た南国ナンシアの休暇はまだ始まったばかり。
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