弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)

文字の大きさ
47 / 55
お気に入り数突破記念(年齢制限なし)

お気に入り1000記念!~もしもシリーズ・園児たちと多分博士先生(語り手視点)~

しおりを挟む
これはもしも多分博士以外が園児になったら?年齢差は無視したそんなもしもの話。





多分博士先生はクレット幼稚園と小さな場所で、年齢バラバラな5人の園児たちの面倒を見ています。

一人はリーアベル・クレット、5歳。年齢的に小学校にあがる前のお兄さん、弟に甘いところ以外は基本普通の子で、ある意味園児の中で一番強い子です。

二人目はセトア・クレット、3歳。一言で言えばかなりのブラコン。兄のリーアベルにどこまでも着いていき離れず、何故か二番目に幼いセトアが命令したことを、園児たち皆が聞くので、多分博士先生の苦労は尽きません。ストッパーは兄のリーアベル。エミリュカとスイレンには何故か名前関係なく『へいか』と呼ばれる不思議な子。多分博士先生も名前を呼ぶと吹雪に見舞われたのでそう呼ぶ、どこか恐ろしい園児でもあります。

三人目はエミリュカ・エメレン、5歳。リーアベルと同じく小学校あがる前のお兄さん、一人にすると物凄く影が薄く、かくれんぼが誰よりうまいです。基本、手のかからない子ですが、スイレンが苦手で構いすぎると泣きます。

四人目はスイレン・クレハ、4歳。しっかりした子でありながら、エミリュカを目の前にするとただのセクハラ幼児に。異様にエミリュカがトイレへ行きたがると見たがります。

最後に五人目、ミーシャ・クレット、2歳。一番幼いにも関わらず、多分博士先生に一番なついて離さないばかりか、かなりの力の持ち主。誰よりも手がかかり、多分博士先生が離れようとすれば何が何でも逃がさず、扱いに一番困る園児です。

そんな癖のある5人を今日も多分博士先生は見守ります。腕にはミーシャを抱き、余程のことがない限り、互いにペアでいる二組を眺めるだけのいつもの光景です。

「あにうえ、えほん、よんでください」

「うん、おいで」

「れん、くっつかないで」

「いやだ」

「しぇんしぇ、あたま、なでなでして」

「平和なんだな、多分」

ミーシャの甘えた声に多分博士先生は、頭を撫でてやりながら争いもないその光景は先生から見てもただただ平和。だが、ずっとそうは行かぬのがこの園児たち。

「あにうえはこのえほんのおひめさまとおうじさまみたいにずっといっしょにいてくれますか?」

絵本の内容の最後は、一緒に暮らすそんな幸せなお話だったのでしょう。兄が一緒なのは当たり前だと言うばかりのきらきらと目を輝かせるセトアに、リーアベルは困った顔をします。

なんせ、この年が終わればリーアベルは小学校へ入学します。リーアベルもそれを理解しているのですが、セトアは幼く、知るのはこの幼稚園と自分の住む場所。それを言えば確実にセトアは落ち込むだろうことを弟を誰より想うリーアベルはやはり困った顔以外することはできません。

「へいか、おれとあにさまは、らいねんにはここにいないよ。がっこうにいくから」

そんな中、困り顔のリーアベルを見かねてか、言えなかった言葉を言うエミリュカの言葉。その言葉にショックを受けたのはセトアだけでなく、嫌がるエミリュカにくっついていたスイレンもです。

二人は雷を受けたかのように固まり、絶望へと表情を変えます。園児のする顔では決してありません。多分博士先生はそれに気づいて遠い目をしました。

実はこのやりとり、今日が初めてではありません。ショックのあまり、この二人毎回翌日には忘れるのです。忘れた方が幸せと気づいて忘れるのです。受け入れて今の時間を大事にしてくれればいいものの、幼い心には難しい話のようで、多分博士先生はこれから起きることに頭を抱えます。

しかし、頭から手を離すなとばかりに、ミーシャの頭に置いた手はミーシャの手により掴まれ、2歳とは思えない力でその手は頭から離せず、片手で頭を抱える多分博士先生。

「あにうえ、いなくなるのですか?」

「おうちで、あえるよ?」

「おうちでしかあえないんですか?」

「がっこうがやすみのひはずっといっしょだよ」

「がっこうがあるひは、いっしょにいられないんですか?」

どう言っても一緒にいる時間が減ることをセトアは理解しています。うるんできたセトアの目に、リーアベルはよしよしと頭を撫でたり、抱き締めてあげたりと甘やかしますがそれを甘受しながらも、受け入れられない現実に、次第に涙が溢れてきます。

さらに一方では絶望に染まり、簡単に離れることができてよかったものの、あまりのショックを受ける様子のスイレンに、珍しくエミリュカは心配そうに見ています。

前にも言ったよね?とばかりに何故またショックを受けているのかエミリュカには理解できません。

「りゅかのいないせかいはぜつぼうだ」

「そう、なんだ」

よく意味がわからないエミリュカはとりあえず引いたし、それを見た多分博士先生はまたか、多分と小さく呟きます。この世の不幸に出会ったかの園児は不気味でしかありません。

「りゅかの、りゅかのおしっこをみないといちにちなんてはじまらないというのに」

「みなくても、はじまるからだいじょうぶ」

正論です。既にエミリュカの目は汚物を見る目。これもまた園児がする目ではありませんが、多分博士先生的にも正解の目なんだな、多分と言わざる終えません。スイレンの将来がとても心配です。

毎回違うショックの受け方をするスイレンですが、今日はエミリュカだけで対応できそうなので、多分博士先生は兄弟の方に目を向けました。

静かに泣くセトアに、おろおろとし始めるリーアベル。リーアベルからしてもエミリュカのように、何故毎回ショックを受けるのかと思うことでしょう。何度だって学校に行き、離れ離れになることは話にあがっているのですから。

それでもショックを受ける大事な弟を放置できるリーアベルではないため、対処に困ります。

「あにうえを、がっこうからすくいだします・・・っぐずっ」

「がっこうはただべんきょうするところでわるいばしょじゃないよ?」

「がっこうは・・・うぅっ・・・あにうえをっうばいますっ!ひく・・・っ」

こうなるとセトアの中で学校は兄を奪う悪い場所に見えて仕方ありません。悪い人もいるなら悪い場所だってあるのがセトアの認識です。

「へいか、遅れてだけど、へいかも行くところになるんだな、多分」

対処しきれそうにないリーアベルを助けるが如くに言葉を告げる多分博士先生。

「・・・黙れ。」

「はい。多分」

一瞬空気が冷えました。セトアの涙も止まったかのように見えたのは気づかないふりをし、多分博士先生は身を引きました。

セトアが兄の前でいる姿は、園児を演じる何かに見えてきて仕方ない多分博士先生。涙さえも兄を引き付け、存分に甘やかしてもらおうというそれにしか見えなくなりました。

「しぇんしぇ、よちよち」

「いたいいたいいたいのだな、たぶーんっ!」

慰めるように撫でてくれるミーシャの気持ちを嬉しく感じるものの、頭を撫でてくれる幼い手には力が籠り、頭を押し潰されそうになる多分博士先生は必死に剥がそうとするも敵いません。なぜ離そうとするとばかりに余計に力を籠めるミーシャが多分博士先生が白目を向きつつあるのに気づけるのは多分博士先生が倒れたときでしょう。

「や、やだぁっ」

「あえなくなるまえにりゅかのぱんつをもらう。わたしたちはこいびとどうしだからな」

「こいびとなんか、しらないっ!うわあぁんっ」

多分博士先生が気絶寸前、さらに言えば互いしか見えていない兄弟を前に、泣いて嫌がるエミリュカのパンツを剥ごうとするスイレンを止めれる者はおらず、今日もクレット幼稚園は問題だらけで賑やかです。







作者より
お気に入り1000突破記念!ついに四桁!R18が続いたのでちょっと年齢制限なしで久々に!

少し趣向を変えて書いてみましたがいかがだったでしょうか?スイレンが幼いが故に理性なくただただ変態です(笑)こんな幼児将来不安しかないですね!でもエミリュカ以外にはしっかりしていて真面目な子なんで問題はないです。エミリュカ限定の変態加減ですから!

ミーシャは・・・まあ、恐ろしい子ですね。うん。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~

荷居人(にいと)
BL
俺の家族は至って普通だと思う。ただ普通じゃないのは弟というべきか。正しくは普通じゃなくなっていったというべきか。小さい頃はそれはそれは可愛くて俺も可愛がった。実際俺は自覚あるブラコンなわけだが、それがいけなかったのだろう。弟までブラコンになってしまった。 これでは弟の将来が暗く閉ざされてしまう!と危機を感じた俺は覚悟を持って…… 「龍、そろそろ兄離れの時だ」 「………は?」 その日初めて弟が怖いと思いました。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

人間嫌いの公爵様との契約期間が終了したので離婚手続きをしたら夫の執着と溺愛がとんでもないことになりました

荷居人(にいと)
BL
第12回BL大賞奨励賞作品3/2完結。 人間嫌いと言われた公爵様に嫁いで3年。最初こそどうなるかと思ったものの自分としては公爵の妻として努力してきたつもりだ。 男同士でも結婚できる時代とはいえ、その同性愛結婚の先駆けの1人にされた僕。なんてことを言いつつも、嫌々嫁いだわけじゃなくて僕は運良く好きになった人に嫁いだので政略結婚万歳と今でも思っている。 だけど相手は人嫌いの公爵様。初夜なんて必要なことを一方的に話されただけで、翌日にどころかその日にお仕事に行ってしまうような人だ。だから使用人にも舐められるし、割と肩身は狭かった。 いくら惚れた相手と結婚できてもこれが毎日では参ってしまう。だから自分から少しでも過ごしやすい日々を送るためにそんな夫に提案したのだ。 三年間白い結婚を続けたら必ず離婚するから、三年間仕事でどうしても時間が取れない日を除いて毎日公爵様と関わる時間がほしいと。 どんなに人嫌いでも約束は守ってくれる人だと知っていたからできた提案だ。この契約のおかげで毎日辛くても頑張れた。 しかし、そんな毎日も今日で終わり。これからは好きな人から離れた生活になるのは残念なものの、同時に使用人たちからの冷遇や公爵様が好きな令嬢たちの妬みからの辛い日々から解放されるので悪い事ばかりではない。 最近は関わる時間が増えて少しは心の距離が近づけたかなとは思ったりもしたけど、元々噂されるほどの人嫌いな公爵様だから、契約のせいで無駄な時間をとらされる邪魔な僕がいなくなって内心喜んでいるかもしれない。それでもたまにはあんな奴がいたなと思い出してくれたら嬉しいなあ、なんて思っていたのに……。 「何故離婚の手続きをした?何か不満でもあるのなら直す。だから離れていかないでくれ」 「え?」 なんだか公爵様の様子がおかしい? 「誰よりも愛している。願うなら私だけの檻に閉じ込めたい」 「ふぇっ!?」 あまりの態度の変わりように僕はもうどうすればいいかわかりません!!

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

推しカプのために当て馬ヤンデレキャラを演じていたら、展開がおかしくなってきた

七瀬おむ
BL
■BL小説の世界に転生した腐男子が、推しカプのために「当て馬ヤンデレキャラ」を演じていたら、なぜか攻めに執着される話。 ■だんだん執着してくる美形生徒会長×当て馬ヤンデレキャラを演じる腐男子 美形×平凡/執着攻め/ハッピーエンド/勘違い・すれ違い 《あらすじ》  伯爵家の令息であるアルト・リドリーは、幼い頃から療養のため家に籠っていた。成長と共に体調が安定し、憧れていた魔法学園への途中入学が決まったアルトは、学園への入学当日、前世を思い出す。  この世界は前世で読んでいた「学園モノのBL小説」であり、アルトは推しカプの「攻め」であるグレン・アディソンに好意を寄せる、当て馬ヤンデレキャラだったのだ。アルトは「美形クール攻め×平民の美少年」という推しカプを成立させるため、ヤンデレ当て馬キャラを演じることを決意する。  アルトはそれからグレンに迫り、本人としては完璧に「ヤンデレ」を演じていた。しかし、そもそも病んでいないアルトは、だんだん演技にボロがではじめてしまう。そんな中、最初は全くアルトに興味がなかったグレンも、アルトのことが気になってきて…?

処理中です...