弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)

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モブ恋愛年齢制限なし

凹凸番外編2~南国休暇の一方で(ミーシャ視点)~

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今ぼくは、セト兄、ルー兄に頼まれて王の代理をしている。ちゃんとすることは教わっているし、教わる前からセト兄の記憶を受け継いでると言ってもいいぼくは、セト兄がこういうときどう判断するかなど、セト兄に関しては一番近いやり方ができるからこちらを心配せず、休暇を楽しんできてほしい。

「あれ・・・」

「どうしたんだな、多分」

執務室で、セト兄の椅子にぼくが、博士がルー兄の椅子に座って書類仕事中、気になる書類がひとつ。

「隣国の応援要請がある」

「何の応援なんだな、多分?」

「急ぎではないみたいだけど、隣国ルーマへ攻め入ろうとする動きがリン国に見られるようだから、攻め入られる前に万全にしてせめて追い返すだけでもいいからなんとかしたいみたいだ。」

「リン国は軍事に関しては負け知らずくらいに強敵と聞くんだな、多分。ルーマ国は小さな国だからと放置されやすい故に平和な国とも言われているから戦力の時点で負け戦は確実なのも理解できるんだな、多分。」

「小さな国とはいえ、リン国が狙う理由も理解できるよ。リン国は軍事こそ強敵でも、食糧に関して難航している国。まあ他国から奪ってなんとかして、生産、売買交渉すらしないバカな国とも言えるから、平和な国と言われるだけあって、ルーマ国は食文化どころか食糧の生産性は小さな国であろうとどの国より優れているから狙うのはわかるし、平和な国のルーマ国が警戒していたのもわかる。」

「どうするんだな、多分?」

「セト兄はルーマ国と同盟を結びたいと常々考えていたよ。ルーマ国は人間が何よりも求める食糧をどこよりも豊富にしているからこそ、自ら有利な同盟を結びたい国が多いんだ。だからルーマ国は下手に同盟を結ぶわけにもいかず、有り余る食糧を輸出することで同盟を結ばなくても食糧に関しては協力しますよと言う姿勢を見せてきた。応援要請が来るということはセト兄にとって同盟を結ぶチャンスだ。どことも同盟を結ばないくらい同盟に関して慎重なルーマ国の応援要請は所謂貴方の国を信用信頼しています。の意味も持つし、恩も売れるから」

「それも戦に勝つか、引き分けで追い払えるかができればと言う話なんだな、多分」

「ルーマ国は何も考えず他国に応援要請をすれば、同盟を結びたい国はこぞって協力し、リン国とはいえ完勝も夢じゃない。ただそうすると助けてやったのだからと恩着せがましく相手の有利な同盟を結ばれるのは見えている。軍事に弱いルーマ国では逆らえない。でも結局それをしてしまえば、いくら食糧豊富なルーマ国でも同盟とは名ばかり、奪われていくだけの食糧を放置してしまうことになり、国は廃れていくしかないだろうね。」

「クレット国以外に応援要請していたとしても数は少ないと言うことなんだな、多分」

「と言うよりも、セト兄の記憶を辿ればいざというときルーマ国が頼れるのはこの国だけかな?」

「その根拠はなんなんだな?多分」

「セト兄は他国と違って、将来性をしっかり見てるから、自分の国ばかりを考えず、ルーマ国にもこの国でできることを協力する形の同盟を発案していたから。それに、時々セト兄にルーマ国独自の行事に合わせて献上されるお菓子だけど、この国だけに献上されているみたいだしね。正直、これをきっかけに本当に同盟を結ぶ価値があるか見定めて、この国と同盟を結べたらって意図もあると思う。」

「なるほど、リン国を我たちの国の力で追い返せたのならルーマ国は同盟を結ぶことで軍事にも強くなれたと他国にも証明できるというわけだな、多分」

「そういうこと。運よく時間もあるようだし、セト兄たちが帰って来るまで戦ができる準備をして、ぼくも出陣すれば百人力でしょ?」

「戦争は犯罪組織を壊滅させるのとは訳が違うんだな、多分。壊れても直せばいいかもしれないけど、ココロの修復ができるか心配なんだな多分。それに、我は我の大事なものを壊されるのは許せないんだな、多分」

「は、博士・・・っ」

博士がこんな真剣な顔初めて見た。どきどきさせられる。これもココロが生み出す感情。ぼくばかりと思っていたけど、ぼくは大事にされているんだと実感した。

「ミーシャ、本当に戦争に出る気なら、王命を少しの間破る許可がほしいんだな、多分。陛下が戻る前に我もこちらの被害を減らすため、ミーシャを守るために完勝も夢じゃない兵器ひとつくらいつくってやるんだな多分。」

「う、うん。わかった」

「では、王宮の研究室借りるんだな、多分。ミーシャは戦の準備を完璧にこなすんだな多分」

「うん、任せて」

「量産する時間はないから協力な一撃を与えられる・・・・ぶつぶつ」

既に兵器について考えているかのように最後はぶつぶつ言いながら出ていく博士。ぼくを守るために一体どんな兵器が短期間で作られるのか不謹慎だけど楽しみだ。

心配してくれる博士のためにも、同盟を結ぶ際よりいいようにいけるようセト兄のためにも、追い払うだけじゃぼくが満足できる気がしなくなってきた。完勝じゃなくても勝利を。勝つことで軍事崩壊を意味するリン国相手にこちらが有利な同盟を結ぶことは可能。豊富な食糧と強者を誇って来た軍事両方を手に入れるつもりで励もう。

二兎を追う者は一兎をも得ずと言うけど、これは欲ではない。ルーマ国を助けるついでにリン国もという一石二鳥みたいな話だ。

すぐぼくが命令しても嫌そうにしない人に指示を出して戦の準備、反対するものはセト兄の努力を無駄にする気かと説得、時には普段は優秀でありながらこういう部分では理解できない賢ぶるバカは脅して穴のない準備を自ら確認しながら進めた。もちろん他の仕事も怠らない。

「戦・・・?ルーマ国から応援要請?判断は間違ってないけど、休暇終わりすぐこれって・・・」

セト兄がようやく帰ってきて戦前の空気にぼくを訪ねてきたから説明すれば冷めた表情の瞳からは疲れが見え隠れするのがわかる。

「他の仕事は急ぎでないものも全て片付けたからセト兄はルーマ国のことだけ考えたらいいよ!」

他の仕事をしながら戦のことについてなんて大変だろうからそのことが気がかりなのかもと片付けていることを言ったけど、セト兄の瞳から見え隠れする疲れはなくならない。

「それが一番面倒じゃ?」

苦笑いするルー兄に首を傾げた。面倒も何も戦争に勝った後、セト兄にしてもらうのは、ルーマとリンに同盟を結ぶだけの作業だ。もちろん、油断しているわけじゃない。

「・・・勝てる見込みはあるの?」

まあ、ぼくが人間じゃないから疲れ知らずとはいえ、無双というわけにもいかないし、戦に勝ってこそのそれだから、セト兄が気にするのはわかる。

「博士が味方識別魔力限界吸収装置を作ってくれたんだ。ぼくが敵と認識した人物の魔力を半径100メートル内で吸いとれて、ぼくとの距離が近いほど吸いとる速度もあがる。魔力は命の要、ぼくは歩く殺人マシーンみたいな感じになるけど、敵だけなら問題ないよね!魔力が少ない人は、ぼくに近づく前にやられるだろうし、魔力はぼくに蓄積されるから戦いでぼくが倒れることはない。ぼくと互角に闘える人がいても持久戦なら魔力を吸いとられていく敵の方が不利だし」

「人間用は作れなかったんだな、多分。魔力吸収はよくても、蓄積してしまうから人間だと吸収した魔力が自分の限界を越えて蓄積されて膨れ上がった魔力で体内から爆死してしまうんだな多分。ミーシャだから作れた兵器なんだな多分」

「戦後は破壊するから大丈夫。普段は他人から少しずつ吸収する魔力吸収装置か、博士に魔力をもらって動く原動力に問題はないし、残すには危険すぎる代物だから」

「わかったよ。でも、無理はしないように。博士も行くの?残るならさすがに一時的に王命はなしにするよ」

「足手まといにしかならないから行かないんだな、多分」

「しばらく会えないのは寂しいけど、博士装置をありがとう」

「無事に帰ることを優先するんだな、多分」

博士の目下にはクマができている。寝るのも惜しんでぼくのために用意してくれた兵器。心配してくれる人たちのために、勝ちたいけど、無事に帰ることを絶対にしなければとココロに強く決める。

後日結果として勝ちどころか完勝。

リン国の前衛は魔法に強い装備を持つ、力押しばかりのために魔力が少ない者が多く、ぼくが近づくだけでバタバタと倒れ、戦場の空気は一気にこちらのものに。

中衛、後衛は戸惑いながらも前衛より魔力は多かった。特に後衛。それでも前衛がほぼ全滅の中で攻めるのは簡単で、しかも思わぬ助っ人が登場したことで戦況はよりこちらのものになった。

助っ人、それはぼくにどこか似た年のとった女性。魔法に強い装備を敵が着ているはずなのに、関係ないと魔法を撃ち込み、まだまだ現役だと言わんばかりの猛攻。明らかに敵側にしか攻撃していないし、セト兄の記憶であの人こそが、ぼくの最初の元になった血の人物シャルラッテ様であると理解したから味方認識だ。

シャルラッテ様は腕に元国王を抱えてとは思えない早さで戦場を駆け抜ける。元国王は泡を吐いて白目だけど大丈夫なのだろうか?と思ったのはぼくだけではないだろう。ぽかーんとシャルラッテ様を見て固まる兵士たちに一言。

「一気に攻め立てる好機を逃すな!」

はっとしたようにシャルラッテ様とぼくに続いて兵士たちが動き出す。次第に逃げ出す敵と大将は生け捕りにすることで捕虜とし、敵認識するのをやめ、ぼくの殺人マシーン装置は起動を終えた。

兵士たちの犠牲はかなり少なく、ルーマ国もまさか完勝とは思わなかったのだろう。ルーマ国代表の国王も呆然としていた。

ぼくとしても予想外の結果。セト兄すらこの結果は予想していなかったと思う。

「山、山、山ー!」

何故シャルラッテ様がここにいるのかは聞く前に山を求めて消えてしまった。後にセト兄に聞けばシャルラッテ様のことは知らなかったようで隣国にどう入ったのか、不法入国の疑いもあったが、ルーマ国の王は優しい方で、こちらを救ってくれた恩人でもあるからと見逃してくれる形となった。

もしまた見かければ入国証明書を渡す手筈までしてくれるのだから、ルーマ国の平和の象徴はこの王であってこそなのだろう。

セト兄はいる理由こそわからないが、元は王妃、自分の国の兵士の装備やらルーマ国と共にあげる旗を見て、助けに入ってくれたのかもしれないと言っていた。実際ぼくだけならここまでいい結果を得られたかわからない。

素早すぎるシャルラッテ様の力あってこその良すぎる結果なので、不法入国はともかく感謝はするべきなのかもしれない。

ルーマ国とは平和同盟と、互いの利害が一致したセト兄が考えていた同盟を結べ、リン国はこちらに逆らえない立場とした一方的な同盟を結んだ。下手な恨みは買うべきじゃないとセト兄は将来性を見据え、こちらに逆らえない立場とはいえ、悪く扱うつもりはないみたいだ。

もちろん、殺人マシーンと恐れられても仕方ない装置は破壊。しばらく離れていたのもあってぼくは博士にたくさん甘えてみた。

「博士、博士、抱っこして!」

「はいはいなのだ、多分」

望み通りのことをされて満たされるココロ。セト兄は王の代理と戦を頑張ってくれたからとしばらく側近の仕事は休みになった。

戦が終わり帰ってすぐ博士から抱き締められて無事でよかったと物凄く心配されたのはいい思い出としてこれからも何度と思い返すだろう。

人間じゃないことは博士が一番わかっているのに心配されるというのはとても幸せなことだとわかる。それが大好きな人なら尚更。

そこから甘えるということを理解した。セト兄がルー兄に甘えるのは、甘えて答えてもらえる幸せを知っているから。やっぱりぼくは抱くより抱かれたいなと思う。

甘えるのを知りながら何故甘やかそうともしたいのかまでセト兄の気持ちはわからない。でも、結局ぼくはぼくで、セト兄はセト兄。

いつかセト兄とルー兄のような関係になりたいなと距離が縮まりつつある博士を見てぼくは思うのだった。
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