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何もかもが信じられない話ばかりだった。元々公爵様が僕を知っていたことも、助けてくれた本人であっていたということ。そしてあの怖かった記憶を植え付けたきっかけの人こそがバーン伯爵だということも。
僕は感謝する人を間違っていたばかりかその元凶とも言える人にお礼を言って初恋の人だと思い悩んでいたなんて……なんと滑稽なことだろう。あの時バーン伯爵は何を思って僕の言葉を聞いてそれに返答していたのか。なんとも言えない気持ちが押し寄せる。
だけど、それ以上に人嫌いになりたくてなったわけじゃない公爵様の過去に、寄り添いたいという気持ちが打ち勝つ。
「忘れていたなんて言い訳にもならない。守りたいと思いながらも結局傷つけてきた……なのに私はそれでもシャロンを手放せそうにない。きっと離れようとしても何が何でも傍にいようとしてしまう。全て思い出した今、よりシャロンへの想いが溢れておかしくなりそうなんだ」
「旦那様……」
しかし、公爵様は過去で何より後悔することは僕のことらしい。強く僕を抱きしめる公爵様から心身共に僕を離すまいという意志が感じられる。それが互いを想い合う気持ちが繋がっていると感じられて、辛い過去の話を互いにしたというのに、暗い気持ちなど吹き飛んでいくようだった。
僕も公爵様も似たもの同士なのかもしれない。初恋を忘れられず、捨てられない想いを抱き続けるその様が。
「言い訳にもならないが、大事なあまりに忘れることがシャロンのためだと無意識に思いつつも、それ以上に溢れる気持ちが、頭の痛みを無視して自然と影で守ろうと動いていた。だが、大事ならば知られてはいけないと思い出せない何かをずっとどこかで感じていて、シャロンに会った時は自分から離さなければと頭痛と共に恐怖すら覚えて、誰よりも冷たくしながらも、傍にいたい気持ちがだんだん抑えきれなくてなっていっていたんだ。だからこそシャロンとの食事の時間だけは忙しい中でもとる努力をしていた。近づいてはだめだと、だが、この時間だけはとどこかで言い訳をしながら」
「……離婚について止めようとしてきた頃には思い出しかけていたの?」
「いや、ただ途中からシャロンと食事をしていてもシャロンから離れろという頭痛がなくなっていて……抑えていた想いが少しずつ顔を出し始めていたのだろう。その時にはもう遅く、離婚が成立してしまったが……絶対にもう一度結婚をする。何が何でも、だ」
僕といる時はずっと頭痛と闘っていたんだろうか?そう思うとそうまでして僕との時間をとってくれていたことがすごく特別なことのように思えるのだから不思議だ。記憶は忘れても想いは常にそこにあったのだと、信じてしまう自分は浅はかかもしれない。だけど、いいじゃないか。僕は結局公爵様を想わずにはいられないのだから。
「楽しみにしてます」
ああ、まるで沼に沈むような気持ちだ。公爵様は僕を手放してやれないとは言ったけれど、それは僕だって同じなのだとは思わないのだろう。僕を忘れて想いに蓋をしてきた分、もっともっと僕に溺れてほしいなんて思うのは我儘だろうか?
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「楽しみにしてます」
ああ、まるで沼に沈むような気持ちだ。公爵様は僕を手放してやれないとは言ったけれど、それは僕だって同じなのだとは思わないのだろう。僕を忘れて想いに蓋をしてきた分、もっともっと僕に溺れてほしいなんて思うのは我儘だろうか?
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