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「………熱が高いな」
あの日、今だに名前を知らない青年が雨から守ろうとはしてくれたけれど、全く濡れないのは難しく、僕は熱を出した。
青年の家は町並みから離れて森へ入っていった奥だったからこそ遠く、より体も冷えたせいもあるだろう。木がたくさんある森なんて初めて見たから満足感はいっぱいだが。
前世、子供が迷い込んできて写真を撮るのにはまっているんだと、迷ったついでとばかりにブレたりしているのもありながら自慢するように写真を色々と見せてくれた。外の世界はこんな風なのかと感動した覚えがある。
雨は降っていたけど、それでも僕はたくさんの木を見たし、赤ん坊で職業診断とか何もないところから水晶やら、ナイフを出すような辺り、世界が違うとは思ってはいたが、子供が見せてきた街並みの写真とこの世界の街並みは全く違ったように思う。
何にしても本当にあのままだったら既にまたあの世だったかもしれない。あの世に逝けた覚えはなく、僕からすれば死んですぐこの赤ん坊になっていたわけだから。
(腕もあがらないや)
熱のせいか、あの時意思通り動いた腕もあがらず、前世の病院生活を思い出す。首も動かせないだけに重症だ。いや、赤ん坊だと当たり前なんだろうか。
体も重ければ、頭も重い。何か考えないと意識が保てそうにないくらいに。
青年は慣れた手つきで僕の看病をした。あの日帰った後、青年は僕を片手に持ち変えて、もう片方を何も置いていない場所へ伸ばして手のひらを広げれば、ベビーベットが出現した。
そんなことができるなら雨の中傘を出せなかったんだろうかと思うけど、何もないところから出すのに条件があったりするのだろうか?
ちなみにこのベビーベットはふわふわで前世の病院のベットとは比べ物にならない。病院のベットもこれだったなら心地よさから幸せを少しは感じられただろうか。
そんなことを思っていれば、青年が僕をベットの上から覗いている。ただの布らしきものを青年が触れると少し濡れたのがわかる。それが額に乗せられればひんやりと気持ちがよかった。
まるで魔法みたいだ。魔法なのだろうか?この世界でこの不思議な力を何と言うんだろう?
「飲め」
そんなことを疑問視していれば、次は声をかけられ、抱き上げられると哺乳瓶でミルクを飲まされた。何故か額に置かれた布は落ちるどころか動かない。
ここに来て初めての食事かもしれない。熱くも、冷たいこともない飲みやすい温度だ。
(てっきり、この人も人と関わりがないとばかり思っていたけど違うのかな)
そう思うくらいに青年は慣れた手つきで僕をお世話した。まるでどうすればいいかわかっているように。経験なくして慣れることなんてないと思うから。
食事も終わり、またベットへ戻そうとして、青年は止まった。
「………離さないと寝かせられない」
僕の手は青年の服を握ってしまっていたため、青年を困らせてしまったようだ。そんな表情は見受けられなかったが。
赤ん坊に話しかける辺り、困ってはいる気がした。
(まあ、僕は言葉は理解できるんだけど)
しかし、手は離れない。いや、離せない。勝手にあるものをにぎにぎと握ってしまう。それにこの青年の腕の中はとても心地がよかった。ふわふわなベビーベットよりも。
「変なやつだな」
青年はベビーベットへ僕を寝かせるのを諦めたようだ。赤ん坊に変なやつも何もないとは思うが、悪く言われている気はしない。
(あ………眠い)
人の腕の中とはこんなにも安心感があるのか、次第にうとうとと眠たくなり保っていた意識は考えることすら難しい今、保てるはずもなく瞼を閉じた。
(夢じゃありませんように)
昨晩も思った願いを胸に秘めながら。
あの日、今だに名前を知らない青年が雨から守ろうとはしてくれたけれど、全く濡れないのは難しく、僕は熱を出した。
青年の家は町並みから離れて森へ入っていった奥だったからこそ遠く、より体も冷えたせいもあるだろう。木がたくさんある森なんて初めて見たから満足感はいっぱいだが。
前世、子供が迷い込んできて写真を撮るのにはまっているんだと、迷ったついでとばかりにブレたりしているのもありながら自慢するように写真を色々と見せてくれた。外の世界はこんな風なのかと感動した覚えがある。
雨は降っていたけど、それでも僕はたくさんの木を見たし、赤ん坊で職業診断とか何もないところから水晶やら、ナイフを出すような辺り、世界が違うとは思ってはいたが、子供が見せてきた街並みの写真とこの世界の街並みは全く違ったように思う。
何にしても本当にあのままだったら既にまたあの世だったかもしれない。あの世に逝けた覚えはなく、僕からすれば死んですぐこの赤ん坊になっていたわけだから。
(腕もあがらないや)
熱のせいか、あの時意思通り動いた腕もあがらず、前世の病院生活を思い出す。首も動かせないだけに重症だ。いや、赤ん坊だと当たり前なんだろうか。
体も重ければ、頭も重い。何か考えないと意識が保てそうにないくらいに。
青年は慣れた手つきで僕の看病をした。あの日帰った後、青年は僕を片手に持ち変えて、もう片方を何も置いていない場所へ伸ばして手のひらを広げれば、ベビーベットが出現した。
そんなことができるなら雨の中傘を出せなかったんだろうかと思うけど、何もないところから出すのに条件があったりするのだろうか?
ちなみにこのベビーベットはふわふわで前世の病院のベットとは比べ物にならない。病院のベットもこれだったなら心地よさから幸せを少しは感じられただろうか。
そんなことを思っていれば、青年が僕をベットの上から覗いている。ただの布らしきものを青年が触れると少し濡れたのがわかる。それが額に乗せられればひんやりと気持ちがよかった。
まるで魔法みたいだ。魔法なのだろうか?この世界でこの不思議な力を何と言うんだろう?
「飲め」
そんなことを疑問視していれば、次は声をかけられ、抱き上げられると哺乳瓶でミルクを飲まされた。何故か額に置かれた布は落ちるどころか動かない。
ここに来て初めての食事かもしれない。熱くも、冷たいこともない飲みやすい温度だ。
(てっきり、この人も人と関わりがないとばかり思っていたけど違うのかな)
そう思うくらいに青年は慣れた手つきで僕をお世話した。まるでどうすればいいかわかっているように。経験なくして慣れることなんてないと思うから。
食事も終わり、またベットへ戻そうとして、青年は止まった。
「………離さないと寝かせられない」
僕の手は青年の服を握ってしまっていたため、青年を困らせてしまったようだ。そんな表情は見受けられなかったが。
赤ん坊に話しかける辺り、困ってはいる気がした。
(まあ、僕は言葉は理解できるんだけど)
しかし、手は離れない。いや、離せない。勝手にあるものをにぎにぎと握ってしまう。それにこの青年の腕の中はとても心地がよかった。ふわふわなベビーベットよりも。
「変なやつだな」
青年はベビーベットへ僕を寝かせるのを諦めたようだ。赤ん坊に変なやつも何もないとは思うが、悪く言われている気はしない。
(あ………眠い)
人の腕の中とはこんなにも安心感があるのか、次第にうとうとと眠たくなり保っていた意識は考えることすら難しい今、保てるはずもなく瞼を閉じた。
(夢じゃありませんように)
昨晩も思った願いを胸に秘めながら。
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