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本編(完結)
受け継がれた記憶への理解
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「素晴らしいでしょう?私はなんて愚かなことをしたのかと思いましたもの」
意味がわからない。この聖書とやらに姉ピンクが改心した理由が。描かれている本人だからだろうか?何にしても、出会いからしてわからない人だしどうでもいいかと捨て置こう。疲れるだけなのが目に見えている。
「ねぇ、聞きたいんだけど君ピンクのリーダーだったんだよね?」
「え?はい」
何を思ったのか兄が俺を後ろに下がらせて姉ピンクに問いかける。もしかして何か警戒する点でもあったのだろうか?
「君が最近とはいえ、リーダーを降りたことでクウリに声をかけるバカが減ったようには思えない。何があれを増やす原因になってるのかな?」
まるで何かの確信をつくような言葉に姉ピンクの顔つきが変わった気がした。いつしかの睨むような……そんな顔に。さっきまでの改心さはどこへ?
「本当余計なことばかり気に掛けるのですね。悪役は」
「悪役、か……。私は何も悪さをした覚えはないけどね?」
なんか、急に雰囲気が……?それにあの姉ピンク今、兄に向かって確かに悪役と。まさか……まさかなのか?いや、ヒロインの姉で俺を狙う時点で気づけばよかった……っ!何呑気にしていたんだろう、俺は。
これはどのピンクよりも警戒すべき相手だと言うのに俺は……っ!なんですぐに警戒を解いてしまった?
「あら、あらあらあらあら!そんなに見つめられたら照れるじゃありませんか、クウリ様」
もう二度と気を緩ますものかと睨んだつもりが相手を喜ばす結果になり余計に悔しい思いが募る。
「クウリを見ないでもらえるかな、君に見られたら汚れてしまうだろう?」
そんな俺を兄が背中で隠そうとすればカッと目を見開く姉ピンク。
「クウリ様に触れないでください!私はやる気のないヒロインの代わりになるべく生まれた第二のヒロインなのです!なのに、クウリ様は手に入らないし、他の攻略対象は明らかにゲームとキャラが変わってるのが多くて使えないし、あいつには邪魔されるし……!なんならゲームと話が全く違うじゃないの!今だってヒロインに相応しいのは私なのにこうもヒロインになろうとするピンクがうじゃうじゃと……!聖書とか言って悪役とクウリ様がラブラブするだけの本なんか出回っているし!そんな聖書作るなら普通ヒロインの私とクウリ様でしょ!男同士で兄弟でとかばっかみたい!なんでみんな私の邪魔ばっかりするのよ!」
すごい形相で捲し立てる姉ピンクの顔はより老けたばばあみたいな顔になっている。全身ピンクなだけに醜さが際立って同じピンクの人たちでさえ引いていた。しかし、最後の言葉に信者を見れば引く様子から戦闘モードとばかりの怒りの表情に。
この瞬間姉ピンクは俺と兄以外にも多くを敵に回してしまったのがわかる。意味のわからない宗教団体という敵を。
それと気になる点として自分以外のピンク女が許せないのに何故ピンクのリーダーを務めていたのか?不思議で仕方ない。そこから導き出されるのは敵は敵でもピンク量産の原因ではないのだろう。怪しいのは捲し立てながら出たあいつと言う言葉。
何にしてもピンクを増やした原因は人にあるということ。この姉ピンクと同じように俺と兄を引き裂こうとする誰かが。
「レウクウ信者になったと嘘をつき、お二人を侮辱するとは……!皆さん、すぐにその老けピンクを確保しなさい!既に聖書を見せようが無駄でしょう。全てはお二方のためにです!」
「「はい、大司教様!」」
「やめ……っ離しなさいよ!偽ヒロインども!変態信者がーっ!」
姉ピンク以外のピンクたちのリーダーは既にルンルンにあるのだろう。躊躇いなく、寧ろ怒りの表情で姉ピンクを動けないように縄で、姉ピンクが痛がろうが容赦なく縛る。縄はどこから出てきたのかはわからないが常に持ち歩いているのかもしれない。
にしても、俺はピンクが大量にいようと兄と二人でいられる日々に浮かれすぎていたのだろうか。こんなんじゃ兄と一緒にいられなくなる未来になる可能性だってある。
まだ兄に愛を伝えることすら兄に許されてないというのに俺は油断しすぎていたのか?なんだか、記憶を失う前の自分に戻りかけていた気さえする。いや、実際戻りかけていた。姉ピンクのことは覚えていながら警戒心が確かに緩んでいたのだから。それでも警戒心が戻って気を持ち直せば、兄への深い愛が失われてないのが不思議なくらいに兄の執着が揺らいでいたようにすら思う。
「クウリ、心配しなくてもいいよ」
「兄さん、だめです。これではだめなんです」
「クウリ?」
きっと夢で見たクウリが言っていたのはこのことなのかもしれない。クウリの記憶が訴えてくる。強制力に流されるなと。多分今ここでまた兄との仲のよさを見せつけるだけで現状維持に満足していては、気がついた頃に他に目移りして兄を悪役にさせてしまうのかもしれない。
本来のクウリは何度も人生を繰り返して兄を悪役にし続けてしまったことを後悔していた。逆らおうとしても強制的にそうなっていたと四年間で受け継いだクウリの記憶による気持ちが今なら理解できる。気がつかないうちに兄以外に惹かれて兄を手放してしまうなんて冗談じゃない。
それこそ姉ピンクに油断しすぎていた俺のように無意識に。意識が戻った時には兄は犯罪者になっていてろくに会えないなんて辛いに決まっている。
俺もここで無意識とはいえ失敗すれば以前のクウリと同じように兄を悪役にさせ引き裂かれる人生を何度も繰り返すはめになるのかもしれない。次からはそれこそ体の自由のきかない強制的な何かで。そんなの耐えられるはずもない。
そのためにも思考を緩めないように意識しなければ、兄と生涯一緒にいられる未来を得るために。簡単に敵を信じようとせず問題を後回しにしようともせず、黒幕を探してヒロインになろうとするピンクを片付けなければ。
呑気にしていてはまた知らぬ間に戻ろうとしてしまう。恐らく本来のゲーム通りの動きに。兄に執着する自分を知る前の俺に戻されて、選ばれたピンクのヒロインと過ごす未来に気がつけばされていてもおかしくない。兄に抱く気持ちすら消されて、思い出したときには後の祭り。そんなの嫌だ。嫌に決まっている。
そんなこと誰にも自分にだってさせるものかと俺は改めて自分に、兄に心の中で誓うのだった。
意味がわからない。この聖書とやらに姉ピンクが改心した理由が。描かれている本人だからだろうか?何にしても、出会いからしてわからない人だしどうでもいいかと捨て置こう。疲れるだけなのが目に見えている。
「ねぇ、聞きたいんだけど君ピンクのリーダーだったんだよね?」
「え?はい」
何を思ったのか兄が俺を後ろに下がらせて姉ピンクに問いかける。もしかして何か警戒する点でもあったのだろうか?
「君が最近とはいえ、リーダーを降りたことでクウリに声をかけるバカが減ったようには思えない。何があれを増やす原因になってるのかな?」
まるで何かの確信をつくような言葉に姉ピンクの顔つきが変わった気がした。いつしかの睨むような……そんな顔に。さっきまでの改心さはどこへ?
「本当余計なことばかり気に掛けるのですね。悪役は」
「悪役、か……。私は何も悪さをした覚えはないけどね?」
なんか、急に雰囲気が……?それにあの姉ピンク今、兄に向かって確かに悪役と。まさか……まさかなのか?いや、ヒロインの姉で俺を狙う時点で気づけばよかった……っ!何呑気にしていたんだろう、俺は。
これはどのピンクよりも警戒すべき相手だと言うのに俺は……っ!なんですぐに警戒を解いてしまった?
「あら、あらあらあらあら!そんなに見つめられたら照れるじゃありませんか、クウリ様」
もう二度と気を緩ますものかと睨んだつもりが相手を喜ばす結果になり余計に悔しい思いが募る。
「クウリを見ないでもらえるかな、君に見られたら汚れてしまうだろう?」
そんな俺を兄が背中で隠そうとすればカッと目を見開く姉ピンク。
「クウリ様に触れないでください!私はやる気のないヒロインの代わりになるべく生まれた第二のヒロインなのです!なのに、クウリ様は手に入らないし、他の攻略対象は明らかにゲームとキャラが変わってるのが多くて使えないし、あいつには邪魔されるし……!なんならゲームと話が全く違うじゃないの!今だってヒロインに相応しいのは私なのにこうもヒロインになろうとするピンクがうじゃうじゃと……!聖書とか言って悪役とクウリ様がラブラブするだけの本なんか出回っているし!そんな聖書作るなら普通ヒロインの私とクウリ様でしょ!男同士で兄弟でとかばっかみたい!なんでみんな私の邪魔ばっかりするのよ!」
すごい形相で捲し立てる姉ピンクの顔はより老けたばばあみたいな顔になっている。全身ピンクなだけに醜さが際立って同じピンクの人たちでさえ引いていた。しかし、最後の言葉に信者を見れば引く様子から戦闘モードとばかりの怒りの表情に。
この瞬間姉ピンクは俺と兄以外にも多くを敵に回してしまったのがわかる。意味のわからない宗教団体という敵を。
それと気になる点として自分以外のピンク女が許せないのに何故ピンクのリーダーを務めていたのか?不思議で仕方ない。そこから導き出されるのは敵は敵でもピンク量産の原因ではないのだろう。怪しいのは捲し立てながら出たあいつと言う言葉。
何にしてもピンクを増やした原因は人にあるということ。この姉ピンクと同じように俺と兄を引き裂こうとする誰かが。
「レウクウ信者になったと嘘をつき、お二人を侮辱するとは……!皆さん、すぐにその老けピンクを確保しなさい!既に聖書を見せようが無駄でしょう。全てはお二方のためにです!」
「「はい、大司教様!」」
「やめ……っ離しなさいよ!偽ヒロインども!変態信者がーっ!」
姉ピンク以外のピンクたちのリーダーは既にルンルンにあるのだろう。躊躇いなく、寧ろ怒りの表情で姉ピンクを動けないように縄で、姉ピンクが痛がろうが容赦なく縛る。縄はどこから出てきたのかはわからないが常に持ち歩いているのかもしれない。
にしても、俺はピンクが大量にいようと兄と二人でいられる日々に浮かれすぎていたのだろうか。こんなんじゃ兄と一緒にいられなくなる未来になる可能性だってある。
まだ兄に愛を伝えることすら兄に許されてないというのに俺は油断しすぎていたのか?なんだか、記憶を失う前の自分に戻りかけていた気さえする。いや、実際戻りかけていた。姉ピンクのことは覚えていながら警戒心が確かに緩んでいたのだから。それでも警戒心が戻って気を持ち直せば、兄への深い愛が失われてないのが不思議なくらいに兄の執着が揺らいでいたようにすら思う。
「クウリ、心配しなくてもいいよ」
「兄さん、だめです。これではだめなんです」
「クウリ?」
きっと夢で見たクウリが言っていたのはこのことなのかもしれない。クウリの記憶が訴えてくる。強制力に流されるなと。多分今ここでまた兄との仲のよさを見せつけるだけで現状維持に満足していては、気がついた頃に他に目移りして兄を悪役にさせてしまうのかもしれない。
本来のクウリは何度も人生を繰り返して兄を悪役にし続けてしまったことを後悔していた。逆らおうとしても強制的にそうなっていたと四年間で受け継いだクウリの記憶による気持ちが今なら理解できる。気がつかないうちに兄以外に惹かれて兄を手放してしまうなんて冗談じゃない。
それこそ姉ピンクに油断しすぎていた俺のように無意識に。意識が戻った時には兄は犯罪者になっていてろくに会えないなんて辛いに決まっている。
俺もここで無意識とはいえ失敗すれば以前のクウリと同じように兄を悪役にさせ引き裂かれる人生を何度も繰り返すはめになるのかもしれない。次からはそれこそ体の自由のきかない強制的な何かで。そんなの耐えられるはずもない。
そのためにも思考を緩めないように意識しなければ、兄と生涯一緒にいられる未来を得るために。簡単に敵を信じようとせず問題を後回しにしようともせず、黒幕を探してヒロインになろうとするピンクを片付けなければ。
呑気にしていてはまた知らぬ間に戻ろうとしてしまう。恐らく本来のゲーム通りの動きに。兄に執着する自分を知る前の俺に戻されて、選ばれたピンクのヒロインと過ごす未来に気がつけばされていてもおかしくない。兄に抱く気持ちすら消されて、思い出したときには後の祭り。そんなの嫌だ。嫌に決まっている。
そんなこと誰にも自分にだってさせるものかと俺は改めて自分に、兄に心の中で誓うのだった。
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