婚約破棄されたくないので泣いてしがみつきます!

荷居人(にいと)

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7~オウジ視点~

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パーティーで突如始まった婚約破棄現場。いい余興だとあえて楽しんでいたのも束の間。私は理想のを見つけた。

男性を吹き飛ばすほどの拳を持ち、手錠や足枷、重りすらものともしない令嬢を。彼女なら私の主人に相応しいと思うほどに。

私は昔から従える側で物足りない立場。本当なら誰かに痛みつけられたい、従わせてほしいと常々思っていたほどに。これが世に言う変態的な性癖であり普通でないのは理解していた。していたが、私の妻になる相手ならと夢見ていたのも事実。

もうひとりの女性の調教にも惹かれたが、正直私にも女性の好みというものがある。それが今婚約破棄を申し立てられている彼女、メロ・リーナ嬢だった。

ああ、彼がいらないなら私がもらおうと私はその誰もが入らない婚約破棄現場に参加者として入る。

全てはメロ・リーナ嬢を我が未来の妻として迎えるために。

「まあそういうわけでタース・ケテー侯爵子息と婚約破棄をして(私と婚約して)はどうかな?リーナ嬢」

さすがに急すぎる申し出に戸惑うだろうかとは思ったが、彼女はそんな素振りも見せず私相手に強く出た。

「いいえ!私は殿下に言われようと(婚約破棄を)受け入れるわけにはいきませんわ!」

と。ただ流されるだけの令嬢とはやはり違う。私は益々彼女を自分の傍に置きたいと考える。

「ほう……私では(リーナ嬢の結婚相手に)認められないと?」

だからこそあえて余裕を見せて挑発的に尋ねる。これでも私は王子。その威厳にも屈さないかを見定めるために。

「いえ、認める認めない以前の問題です。私にはタース様しか(婚約してくれる人が)いないのです!」

そうしてすぐ真っ直ぐに答える彼女は私の希望に近い言葉を発する。正に彼女なら私のご主人様……いや、理想的な妻に相応しいと。その瞬間感じた。

自分の意思を伝えられる令嬢のなんと素晴らしいことか。簡単に私の身分によって堕ちるようなら私は寧ろ落胆していただろう。

「なるほど、そんなに想っているんだね。しかし、私も(君を)諦められないほどに惚れてしまったんだ」

今の会話で余計にとは言わないが、事実は事実。

「同じく私も諦めるわけにはいかないんです!」

そうすれば返ってくる言葉にぞくぞくとする。ああ、あの力強い瞳のまま私を殴ってくれないだろうかとすら思いながら。

「メロ、王子殿下もこう言っているんだからいい加減受け入れろ!」

そんな至福な時間は余計な口出しで遮られたわけだが。申し出はありがたいが、何故彼女の下僕が口を出すのか……私は信じられない気持ちで思わず彼を蔑んだ。

………と同時に、ああ、私はこんな躾のなってない下僕に負けているのかとそれはそれでにやけそうになった。
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