初めての友達は神様でした!~神様はなんでもありのチートです~

荷居人(にいと)

文字の大きさ
25 / 30
5章

知られざる存在

しおりを挟む
真っ暗な中、俺を責めるような言葉がたくさん聞こえた。だが、温かいものを感じてそれに飲み込まれずにいる。俺はそれを逃がさないように離さない。

「人間、全の神、目覚めなさい」

知らない声が聞こえた。それに引き寄せられるようにだんだんと責める言葉も消え、目を覚ませば、洞窟とは違い、真っ白な空間で俺は浮いている。逃がさないようにしていたそれは、神様で神様は目の前の者に怪訝な表情を見せている。

「君は・・・誰だ?ここは神界・・・神としたら僕が知らないはずは・・・」

「神様!」

全の神が知らない神よりも、神様が助かったんだと思わず抱き締めていた力を強くする。神様はそれに気づいて俺の頭を撫でながら申し訳なさそうな表情をした。

「ユージン・・・ありがとう。でも君を危ない目に合わせた」

「ううん!神様が無事ならそれでいい!」

「ユージン・・・」

「無事とは限りません」

神様が悲しそうな表情をして、それを知るように目覚める際聞いた声が聞こえ、そちらに視線が行く。それは人と同じ形はせず、ただ虹色に光る玉のようなものが浮いているだけ。

「どういう、こと?」

「ユージンの欲により魂が汚されないよう無意識に身体に蓄積させ、見た目にこそ現れませんが既にボロボロです。全の神は神の力の源が欲に包まれ、弱まりつつあります。今はユージンが引き受けたからこそ理性もあれば、欲を受け止められていますが時間の問題です。」

「そんな・・・」

「やはり・・・身体がボロボロならユージンは死んでしまうんだね。でも魂が無事なら転生はできる。よかった・・・」

「転生?転生したら俺は神様を忘れるんだろ?そんなの・・・そんなの嫌だ!」

「こればかりはどうしようもないんだ・・・」

我が儘なのはわかっている。けど、神様を忘れるくらいなら転生なんてしたくない。

「全の神、私はあなたも人間にし、転生させようと考えています。」

「え?」

「神が人間に?世界へ人間として降りるわけじゃなく、人間になれるというの?」

「はい。弱りきった神の力の源を魂に変換させ、ユージンの魂と一緒に輪廻へ投げ込みます。」

「だけど、神が本当の意味で人間になるなんて僕は聞いたことがない。何より、君みたいな神、僕は知らない」

「知らないのも当然でしょう。神が生まる前から存在した私は輪廻・・・神でもなく人間でもない。ただの輪廻の意識なのですから」

「輪廻・・・ね。僕が人間になるとしても欲は消えない。汚れた魂になるだけで結局転生前に消滅するだけじゃないのか」

「いいえ。本来欲は神が受け持ち続ける者ではないので、溜める形になりました。神はその力により、転生する者に力を与えることで、ユージンが記憶をもったまま転生するなどの芸当はできても、転生させるための輪廻の仕組みを知らないと思います。」

「・・・君は輪廻の意識だからわかると?」

「はい。輪廻は魂の洗い場。だから記憶は消されて、転生いたします。ですが何も洗うのは記憶だけでなく、本人の持つ魂の汚れも洗い流します。ですから、全の神がどんなに欲で汚れた魂を持って輪廻に行こうと輪廻では洗い流され浄化されます」

「なら、僕は無駄なことを・・・していたのか」

「違います。やり方を間違えているのです。悪い欲を放置すればそれこそ人は争うばかりの世界となりましょう。時に争いは必要悪です。ですが、それをある程度制御するために神は悪の欲を受け持つ役割は確かに必要あります。あくまでその者が死ぬ瞬間まで受け持つ、それだけです。死んだ魂が輪廻に入る前に返し、輪廻で洗い流す。それが本来正しい欲の回りであり、全の神の正しいやり方です。」

「そんなやり方が・・・」

「神は輪廻の仕組みを知らないのですから、世界を守るためには仕方ないことです。あなたは頑張りすぎた。私が伝えられるとよかったんですが、たくさんの神、人間、動物が生まれ、輪廻のやるべきことが増えたために、伝えなければと思った時には意識を切り離し、伝えに行く余裕がなかったのです。手遅れになり申し訳ございません。」

「いや、いいよ。元々は後のことを考えることなく、僕たち神が増やした責任もある」

「輪廻、悪い欲を転生前の魂に渡して消化していく方法はだめなの?」

「悪い欲は産み出した本人の記憶ある魂に渡さなければ記憶を混濁させ、何を浄化されているかわからず、自ら魂を消滅させてしまいます。ユージンが魂に悪い欲を溜め込んでいれば転生どころか消滅の道しかありませんでした。全の神は既に理解して悪い欲を取り入れていますし、魂に変換したとしても神としての力が全てなくなるわけではないので、強固な魂となり、浄化はされても消滅することはありません。」

「ユージン、僕はユージンと同じ人間になれるなら喜ばしいことだ。神に未練はないよ」

「神様・・・」

「決まりのようですね。私も輪廻が乱れる前にまた輪廻に意識を戻さねばなりません。ですが、まだ時間はあります。今後このようなことにならぬよう、全の神がいなくなることで新たな統率者、輪廻の仕組みを他の神に伝える必要があります。それとユージンはまだ身体がボロボロでも少しなら持ちますし、全の神もユージンに受け持ってもらった分、同じくらいにあの世界へ一度私の力で戻ることはできます。あなたたちのもうひとりの友達が悲しんでいますから、最後に挨拶くらいはしてもよいと思うのですよ。帰りも私の力でまたこちらに呼び寄せます」

「アーカだ・・・。神様、アーカも神様助けたいって必死だったんだよ」

「そうか。ならお礼も言わないとね。心配かけてごめんねって」

「二度も友を失うのは辛いでしょうが、どうか、二人の言葉で、その者に立ち上がる力になることを祈ります。貴方たちの会いたい人物を言ってください。確実に会うために」

輪廻の言葉で虹色の何かに包まれる。

「「アーカ」」

その瞬間、また意識が遠退いた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...