(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

4章悪役令嬢の知らない想いと記憶～ツグナイ(コーカイ)編～

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「やはり、娘をコーカイ様に会わせるわけにはいきません」

信じられない言葉と共に告げられた言葉は望んでいたものとは真逆だった。

「何故………っ」

「愛する子を…………のは私たちだけでいい。コーカイ様はまだお若い。娘を嫌えとは言いません。娘に幸せになってほしいとも思いますから好意があるならば素直に嬉しいです。ですが、だからと言ってコーカイ様の人生を狂わせたいわけではないからこそ、コーカイ様がアイに愛を深め過ぎるのはコーカイ様のためにもするべきではありません」

わざと、だろうか。ぼそりと小さな声で聞こえない部分があった。そこにこそ侯爵がアイに対して隠している何かなのだと思わずにはいられない。

アイを愛しすぎることが人生を狂わせる？そう言っているように聞こえた。だけど、何故？僕はアイを好きだと、愛していることに幸せを感じている。

愛に狂うとでもいうのか？アイはそんな魔性の女じゃない。侯爵よりアイとの時間はないかもしれないけどそれでも彼女を見てきたのだから人を陥れるとかそんなことするはずがないのはわかっている。

アイさえずっと傍にいてくれるなら僕はそれだけで頑張れるし、幸せだというのに。

何を、隠している？

「僕はアイの婚約者です。何故、父上も侯爵様も僕にアイのことを隠すのですか？」

愛してほしいが愛を深めてほしいわけじゃないなんて意味が理解できない。矛盾とかそれ以前の問題だ。

「これ以上は父上にご報告いたしますよ」

話す気はない。そう遠回しに告げられた。

「また、来ます」

父上に報告されればそれこそアイに会うのが難しくなりそうだからこそ引くことにした。学園にアイが来ないわけじゃない。また来たときに聞けばいい、今は我慢だと自分に言い聞かせた。

しかし、そんな言い聞かせも無駄に終わる。

次に出会えたのは侯爵と話して一ヶ月後。教室に入ってきたアイは少し痩せて、いつものころころと変わるアイの感情が抜け落ちたように無の表情だった。

「アイ、最近会えないけど一体何が…………」

それでもと心配で席に座るアイに駆け寄り父も侯爵も話してくれなかった何かを本人であるアイがわからないはずはないと思いきって聞く。

この時の僕はアイなら僕を頼ってくれる、なんでも相談してくれると互いの信頼、信用する関係が築けていると信じて疑わなかった。

僕と同じくらいアイもまた僕に好意があると思っていたから。僕たちに関わる大事な隠し事はしないなんて何の確証もなしに思っていた。

「なんでもありません。ご心配おかけしてすみません」

そんな中返ってきた言葉は何も話す気はないとばかりのアイからの初めての拒絶だったように思う。

「そ、う………」

それが酷くショックに感じて呆然とした。なんとか返事を返して席へ戻る。頭の中ではアイとの思い出の日々が駆け巡り、なんで、どうしてと混乱するばかり。

一体会えない間にアイに何があったのかというショックと共に余計アイが話せないほどの何かがあるならば知らなければならないと決意を固めた。

どう足掻いてもアイには無よりも笑顔になってほしいから。

理由を知らないこの時の自分はアイの言動に傷ついてはいたが、まだ幸せだったとそう今なら思える。