(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

荷居人(にいと)

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4章悪役令嬢の知らない想いと記憶~ツグナイ(コーカイ)編~

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「コーカイ様………」

会う度に親密になっていく僕たち。それでも恐らくヒロインへの好意はアイとは違う。そう思いながらも逃げる一心で気のせいだとヒロインを愛しく想う目で見る。

「僕なんかが婚約者であることは嫌だったのかな」

父親たちによって決められた婚約。今思えば父がアイの父と繋がりを持ちたかったための婚約だったのだろう。何故それをアイの父が了承したのかはわからないが、逆らえなかったというには前の様子からそんな感じはなかった。

だが、アイは?僕は当時嬉しかったし、内心喜びでいっぱいだった。だけどアイは本当のところこの婚約をどう思っていたんだろうか?

「そんなっ!コーカイ様はとてもお素敵です」

僕を励ますようにヒロインは言う。最初の緊張する様子は今ではなく、僕を褒め称える。

僕の嘘を間に受けて。

「でもやっぱり会えないのは僕以外の人に………」

最低な嘘。そうしているのは僕だ。アイが他の人に会う余裕なんてないだろう。学園にすらろくに来れないのだから。ああ、最後アイと話したのはいつだっけ?

あれからアイが学園へ来れる日は何度か話しているが僕もアイもあの日のように笑ったり泣いたりした日々とは違う。アイは自分の表情に気づいているのだろうか?気づいていて僕に話しかけてきているのだろうか。

アイがわからなくなるほどに僕はおかしくなりそうだ。

「コーカイ様………私はコーカイ様が好きですっ!婚約者がいる貴方に告げるような想いではありませんが、伝えたくなるほどに貴方は魅力的です!だからそんなに自分を責めないでください………っ」

「ヒロイン………」

ついに告げられた想い。涙を目に溜めながら真摯に伝えるヒロインがアイならばと思う僕はどこまでも最低だ。

ヒロインが羨ましい。自分の想いをはっきり伝えられるヒロインが。

「想いに答えてほしいわけじゃないんです!ただ、貴方は決して悪くありません。だから………笑ってください」

君は僕を知らないからそう言える。知らせないのも嘘をつくのも僕なのだけど。

それよりも最後の笑ってという言葉に僕の心が揺れ動くのを感じた。そうか、僕は笑えていないのかと。アイだけじゃなく他人のヒロインにですら笑えていないのだと。

「それなりに笑っていたつもりだったんだけど………」

「笑っていたですか?それは笑えていないと断言しているようなものです。つもりだと断言できないほどに貴方様の心が助けてと泣いている証拠です」

「…………っ」

心が泣いている?そうなのだろうか?助けてと言っている?助けてほしいのはアイだろう?なのに僕が何から助けてほしいというんだ………?

「え、あ、コーカイ様?」

情けなくもその日ヒロインの前だというのに涙が止まらなかった。
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