(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

荷居人(にいと)

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4章悪役令嬢の知らない想いと記憶~ツグナイ(コーカイ)編~

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涙を見せたあの日からヒロインとの距離はどんどん縮まっていった。アイの前では素直に言えなかった言葉もヒロインの前では簡単に言える。

「コー………」

「コーカイ様!」

「ヒロイン!」

誰かの声が聞こえた気がしたが、ヒロインの声によってそちらに意識を向ける。手を広げればヒロインが当たり前のように僕に抱きつき、互いに笑って一肌を感じる。まるで恋人の逢瀬のようだ。

何故これがアイではないのだろうか?ではなく、これがアイならばと思うと自然に出る笑顔。僕は一日一日最低な自分なっていくのがわかる。それでもやめることができない。

そんな自分のことでいっぱいな僕はアイの存在に全く気がつかなかった。

この日、消えた声を気のせいだと流してしまったことを僕は一生後悔することとなる。

アイの精一杯の助けてと嘆くような悲鳴を僕は知らない。

そして、翌日。アイがヒロインを急にいじめ始めた。決してアイはそんな人をいじめるような人物じゃない。それにそんな体力があるのだろうか?

何かの間違いと言うにはヒロインが暗い表情になっていくのがわかる。いじめが本当なら何故ヒロインなのか?元平民を理由にと噂で聞いたが、そんなはずはない。

花が枯れることすら悲しむアイがそんな理由でいじめるはずが………。

そう思うとふと思い付くひとつの原因。

「まさか………バレた?」

ヒロインとの関係を見られたのかもしれないとそう思った。その時感じたのは焦りでも恐怖でもなくひそかな歪んだ喜び。

アイが嫉妬してくれたのでは?と。

アイがわからないからこそ自分の都合のいいように捉えてしまった。結局僕は、アイに愛されている自信が余命の話以来なくなってきていたからこその歪んだ喜びだった。

そしてこのままなら嫉妬故に怒りのあまりアイは自分の本音を出してくれるのでは?そんな最低な案が浮かんだ。

ただ話していても以前の僕たちのようには戻れないなら本音を引き出してもう一度短くともあの日のような関係をやり直したい。

戻れたならきっと僕はアイに先立たれてはやっていけないからアイについていこうとそう思う。

「アイ、僕と生きたいと言って。死にたくないと願って」

最低な我が儘だ。

何故このとき自分から歩み寄ろうとしなかったのか、結局はアイに置いていかれるのもアイについていく覚悟もできなかったからこその言い訳。

その言い訳を続けるためにヒロインがアイにいじめられる度安心する僕はどこの誰よりもクズだろう。そしてそんな僕は今日もまた白々しくヒロインに愛の言葉を送る。
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