(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

荷居人(にいと)

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4章(真面目版)悪役令嬢の知らない想いと記憶~アムール(ロイエ)編~

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「ロイエ、この子がお前の婚約者となるレヴェリー・ホープ嬢だ」

「レヴェリー・ホープです………」

そう父に紹介された婚約者は初対面ではない。ときどきホープ侯爵に連れられて来ていた少女だった。もしかしたらという気持ちはあって、僕はその日舞い上がって浮かれた。

何せレヴェリー・ホープは僕の初恋だったのだから。

最初の出会いは父とホープ侯爵が会話を始めた頃に屋敷内で自由にしているように言われて公爵家にある庭へ行った時だった。出迎えた時にはいなかった少女がひとり、庭師が中々咲かすのは難しいと自慢気にしていた花を見つめていた。

同じくらいの年で、綺麗なドレスに身を包んでいたため不審者ではないだろうし、迷い込んだ平民でもなさそうだと声をかけたのが始まり。

「こんにちは」

「! あ………こんにちは」

挨拶で声をかければびくっと大袈裟に驚いて胸を抑えたその子を間近で見た第一印象は容姿こそ金髪でつり目なためにきつそうな印象はあるけど、僕に怯える様子を見せる少女はまるでまだ力のない子猫が必死に身を守ろうとして慣れない威嚇をするみたいで可愛いと素直に思った。

「こんなところでどうしたの?」

「これ、みてたの、です」

丁寧な言葉に慣れないとばかりに拙い言葉。益々可愛いなと少しばかりにやけそうになる口を手で隠す。

「めずらしい花だってにわしがいってたよ」

「はな、これははな、というですか?」

まるでどこか違った国から来た子と話しているかのように途切れる言葉は聞き取りづらいよりも一生懸命話そうとしているように見えてやっぱり可愛く映って仕方ない。

でも気になることがひとつ、少女が花を知らない様子に首を傾げた。花なんてどこにでもあるのだから………。珍しい花ではなくて少女にとってはが珍しいのだろうか?

「花をしらないの?」

「………っごめんなさい」

「あ、ちがう!おこってないよ!」

この時の僕は無神経だったかもしれない。直球で疑問を投げつけてしまえば、カッと少女の頬は赤くなって目の端からは涙が溢れそうになったため、慌てた。

少女を泣かせたくない、嫌われたくない。

そう思うほどにその最初の出会いだけで僕は少女に惹かれていたのがわかる。

恋をしたのはやはりあの日だろう。初めての出会いから何度か庭で会う日が増えていき、少女からレヴェリー・ホープと聞いてホープ侯爵の娘だったのかと知ってからホープ侯爵が来る日は待ち遠しくなっていた。

そして8度目の逢瀬、季節によって枯れて種を植え直して消えた花をその日レヴェリーは泣きながら見ていて僕は慌てた。

「どうしたの?どこかいたいの?」

「ちがう、おはなさん、いないのです」

花がなくなっていることにこれほど泣く女の子を僕は知らない。なんだかそんなレヴェリーがとても眩しく綺麗なものに見えた。

だけど泣いているレヴェリーをずっと見ていたいわけではないため、何故花がなくなったのか疑問を投げたとき庭師から教えられたことをそのまま話した。

「その花はね、あたらしいいのちをうむためにおやすみちゅうなんだってさ」

「しんじゃったの、です?」

「生まれかわろうとしてるんだよ」

「うまれ、かわる?」

「きっともっときれいなすがたになって愛されるためにお花はがんばってるんだね」

「おはなさん、がんばってる、です?」

「うん」

「がんばってうまれかわったら、あいされるの?」

この時レヴェリーは何を想ってそう言ったのだろう?僕は何も考えずに返した。

「そうかもね。どりょくはむくわれるってちちうえからきいたから」

「ならわたしがんばる!………です!」

とってつけたようなですも可愛かったけれど、それよりも希望を見つけたようなきらきらと光る瞳と初めて見るレヴェリーの笑顔に僕は胸を締め付けられるような感覚を覚えた。

この笑顔をずっと見続けたい

そんな恋の自覚に囚われて、僕はレヴェリーに残酷なことを告げていたのだと気づくことはできなかった。
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