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4章(真面目版)悪役令嬢の知らない想いと記憶~アムール(ロイエ)編~

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レヴェリーが婚約者になったあの日から僕とレヴェリーの仲は決して悪くなかったし、互いを想い合えていた。そう思う思いたい

「くすぐったいです………っロイエさま」

恋した子が婚約者になったならば愛でられずにはいられない。どこか消えそうな透明感ある白い肌の頬に手をすべらせれば愛しきものから零れる笑みと小さな吐息。

首を傾げるようにして僕の手を頬と肩ではさみそうなそれは離さないでという遠回しの仕草だろうか?なんて都合よく考える。

頬と共に僕の手の甲に触れる髪はさらりと滑るような心地のいい細い金の髪。日に当たるとより光って見えてまるで女神のようだと思っても恋する相手にそれを伝えるのは僕ではまだ幼すぎてどこか恥ずかしいと思い、何度も似た想いを胸に秘めた。

触れられる、けれど言葉にできない。好きの一言さえ言えないのはなんとも情けないと思うけれど、せめて態度で愛しいという想いを伝えたいと欲求のままレヴェリーに触れた。

「かわいい」

「へっ?」

「あ、うん、その………ごめん」

「いいえいいえ、うれしいですわ………すこし、てれちゃいます、けど」

「………うん、そっか、うん」

想い溢れ、無意識に出る言葉が増える頃にはレヴェリーの言葉に拙さはなくなっていた。だからこそ無意識に溢れ出た言葉は物凄く恥ずかしくて、自分の顔が熱くなるのがわかる。

なんてカッコ悪い………とは思うが、照れながら嬉しそうにするレヴェリーを見ていると言葉に出てよかったとそう思えるのだから僕は結構単純な性格をしているなとなんとも複雑な気分だ。

レヴェリーは最初こそ驚きの声をあげたものの素直に返事を返してくれているのに、僕は言葉になっていない返事でしか返せない。もっと彼女のいろんな表情を見るために言葉を出したいと思うのに、もっと余裕にその返事に答えたいと思うのに、僕は無意識に出る想いを待つことしかできないのだ。

「ふふ、ロイエさまもかわいいです」

「………うれしくない」

笑う彼女は可愛い。でもそれはあんまりだ。好きな人の前ではかっこよくありたいと思っている。幼くとも自分は男なのだから。

それでも今の自分はかっこよくはないと自覚しているだけに拗ねることしかできない自分に悔しく思えばいいのか、レヴェリーの楽しそうな笑顔を見られたのだから喜ぶべきなのか複雑だ。

「もちろん………ふふっかっこいいともおもいます」

「わらわれながらついでみたく言われてもうれしくないから!………レヴェリーの方がぜったいかわいいのに」

「? なにかいいました?」

「べ、べつになにも!」

自分から伝えたいそれを言おうとすれば声が小さくなってしまう。気づいたレヴェリーにそれを伝えられないのだから本当に情けない。

さらに情けないのは笑われながら仕方ないとばかりに言われたかっこいいという言葉にすら内心舞い上がってしまっている自分だ。

惚れたら負けとはよく言ったものだと思う。

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