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4章(真面目版)悪役令嬢の知らない想いと記憶~アムール(ロイエ)編~

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あの日なんだかんだと言い訳して逃げることを選んでしまった僕。その逃げは明らかにレヴェリーへの裏切り、レヴェリーとは別の女性と関係を持つことだった。そしてその最悪に巻き込んだのはティア・パレン子爵令嬢だ。

「あ、隣いいかな?」

「え?あ、はい」

最初の出会った時のティアは、学園の中庭でひとりベンチに座って本を読んでいた。周囲がいないからこそ声をかけるのに躊躇う必要もなく、声をかけられたティアははっとしたように隣を空けてくれる。

正直相手は誰でもよかった。でも多数と関係を持つなんてことは下手をすると噂が飛び交い、公爵家の名に傷がついて色んな人の迷惑になると思うとさすがにできなくて………というよりもそこまでする気にはさすがになれなかったというのが本音。それに子爵令嬢ひとりくらいならばいかようにもできるという最低な理由だ。

誰もいない場所で身分の低いものを僕は自分のために選んだ。何よりティアは平民から子爵の養女として貴族になったとして有名だからこそ都合もいいと言えた。

「ここは落ち着くね」

「は、はい。私、ここの眺めが好きで………」

恐らくティアは初めて会った時から僕を知っていた。何せ僕は公爵の子息であってそれなりに注目の的なのは自覚していたから。さすがに王族には敵わないだろうけど。

「うん、僕も好きだな」

きっとレヴェリーも………なんて考えてしまう辺りレヴェリー以外に想いを寄せるのは難しいだろうかなんて思う。だけど、そうでもしないと僕は………。

レヴェリーが僕を頼ってくれたなら。

そんな言い訳を、実際されて覚悟ができるかもわからないというのに僕はレヴェリーのせいにしてしまっている。

「あの、何かあったのですか………?」

「ああ、ごめんね。顔に出てしまったかな?これじゃあ父に叱られてしまうね。上に立つものは人に悟られるようではだめだと普段から言われているのに」

ふと普段見せない表情や声を父が侯爵に向けていたのを思い出す。うん、あれは違う。親しいものの前だけならいいという例だよね。どうしよう、レヴェリー嬢のこともそうだけどやっぱり複雑だ。

「たまにはいいんじゃないでしょうか!」

「え?」

「身分があろうと同じ人です!人は完璧じゃありません。だから、その、公爵家の生まれだからと一人で抱え込む必要はないと思うんです!」

ティアの急な叫びに父についての考えは消える。緊張で震えた様子で必死に告げるそれには素直に好感が持てた。

レヴェリーに友人はいない様子だが、ティアならきっといい友人になれただろうと。父みたいになっては困るけれど。

どちらにしろ僕は友人にと紹介すらできない。レヴェリーがそれを望んでいるかもわからないから。

レヴェリー、レヴェリー、レヴェリー、レヴェリー………こんなに考えてしまうくらいに好きなのに、僕は何故レヴェリーから、自分の想いから逃げているんだろう?

そう思ってもその日からティアと同じ時間に会う約束をやめられず密会は続くこととなった。誰かに止めてもらえるよう知られる勇気もなく、レヴェリーに対する想いを減らしたいがために。
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