(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

荷居人(にいと)

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4章(真面目版)悪役令嬢の知らない想いと記憶~アムール(ロイエ)編~

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いじめを止めようとしながらなくならないそれに最低ながらにほっとする毎日。そんなある日父に言われた。

「ロイエ、秘密裏にレヴェリー嬢との婚約を解消しなさい」

ずっとレヴェリーとは婚約関係のままだと思っていただけに突然のそれに頭が一瞬真っ白になった。だが同時に、なぜか物凄く安堵した自分がいた。

自分はレヴェリーに相応しくない。

いつしかそんな想いがどこかにあったのだと思う。そして何よりレヴェリーとの婚約が僕には重く感じてしまっていたのだろう。解放される気分だったのかもしれない。

それから父の話はあまり頭に入らないまま頭の中はレヴェリーとの婚約解消が渦巻いていた。レヴェリーの父に想いを寄せる父が何故そう言ったのかはわからない。この話をした時レヴェリーはどういった表情をするのだろう?

最近のレヴェリーの噂はティアに嫉妬してという理由でいじめていると流れている。最初こそ僕がそう感じて歪んだ喜びさえあったそれが今は噂としてある。この噂が本当ならレヴェリーは僕に好意を抱いていることに他ならない。

だけど噂は噂。レヴェリーから聞いたわけじゃない。

これはもしかして最後のチャンスなのだろうか?レヴェリーとちゃんと話せる最後の…………。

気がつけばどこか不安になって思わずティアに話していた。父に言われたことを。ティアは目を見開いて胸を抑えて悲痛の表情となる。本人が気づいているかはわからない。

何故そんな顔を?ティアのその表情は僕にとって予想外だった。まるでその表情は僕を責めるようなそんな気分に陥った。

『ロイエ様………レヴェリー様は………すみません、やっぱりいいです。少し気分が悪いので保健室に行ってきます』

止める間もなくティアが去る。そして残る疑問。ティアは何故レヴェリーを名で呼んでいるのだろうかと。

僕の知らない何かがある?そう考えて見えなくなったティアを追いかけるために保健室に向かったがティアは来ていなかった。

一体どこに?何故だか探さずにはいられなかった。探していればレヴェリーもまたいないことに気づいてより探さなければと見つけた先は校舎裏。

ティアの泣き声の先には弱々しく口端から血を流しながら笑うレヴェリーの姿。とてもじゃないが声はかけられなくて固まった。

知っていた。ティアはレヴェリーのこと余命を恐らく知っている。どう見てもあの二人がいじめる側といじめられる側には見えなかった。

そして何よりこのとき初めて僕は弱ったレヴェリーを見て衝撃を受けた。知らぬ間にレヴェリーにはこんなにも限界が来ていたのだと。僕の前では決して見せなかった弱い部分。

それを見て震えが止まらない。

レヴェリーを失う

その意味が重く重くのし掛かる。婚約の解消ではない。この世からレヴェリーを失うのだと全身で理解して、レヴェリーに余命があることが怖くなって逃げたはずの僕だが、本当の意味で理解できていなかったんだと思った瞬間だった。

レヴェリーの余命、これは何かの間違いで嘘だとそう思うことで僕は情けなくも自分を保っていたに過ぎない。本当を理解するのを恐れて逃げた。想いの矛先を変えようとしてまで。

だが、久々に見たレヴェリーの笑みは弱りきった血の気のない笑顔を見てそう思うには難しすぎた。生きているのが不思議なくらいのその姿に。

僕は何をしている?

気づいていたはずだ、レヴェリーが無理をしていたこと。

『いい加減にしてくれないか、レヴェリー』

『何のことでしょう?』

会う度、話す度に痩せていく姿。そして密かに震える手。冷たく話すその声は僕に身体のことがバレないよう必死に強がっていたのを婚約する前からレヴェリーを見てきた僕はわかっているはずだった。

気づきたくない

ほら、普通に話せる
(会話を早く切らせようと我慢して震えているように感じているのは気のせいだ)

気づきたくない

ほら、今日も登校してる
(来る度に顔色がよくない気がする、そう気がするだけ)

気づきたくない

ほら、ご飯だって食べてる
(後でいつも手洗い場へ行っているのは食べたものを戻してしまうから?苦しそうに咳き込む声は君のでは決してない、そう思う思いたい)

気づきたくない

ほら、元気じゃないか
(日に日に痩せてふらついている時もあるけどきっと今はたちの悪い風邪を引いているのかもしれない)

自分を騙して騙してティアをレヴェリーから守るふりをしながら見続けていただけ。だけどもう、僕は自分を騙せそうにない。
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