(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

荷居人(にいと)

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4章(真面目版)悪役令嬢の知らない想いと記憶~アムール(ロイエ)編~

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もう迷わない。その決断に一週間かかった。時間は無駄にできないというのに苦悩ばかりする自分はどこまでも男らしさのかけらもない。

中庭にレヴェリーを呼べば覚悟をした様子でこちらを見つめる。足は今にでも倒れそうで支えようと手を伸ばしかけるも、彼女はひそかに後ずさった。

気づいてなのか、無意識に、いや反射的にだろうか。下手に手を伸ばして転けさせてもとひそかに伸ばしかけた手は引っ込める。

そして僕が出した決断。

するよう父に言われたけど僕はとは思わない」

「はい、承知いたしました」

まるで用意していたような即答に目を見開く。もしかして僕が逃げていたことをレヴェリーは理解した上で僕を待っていたとでもいうのだろうか?

情けなくも泣きそうになった。僕はレヴェリーの愛を疑うことで逃げた癖に、レヴェリーの嫉妬だと自分のいいように解釈して喜んでいたりしたのだから。

なのにレヴェリーはこんな僕の婚約者でいてくれるという。

「もうこれがなるかと思ってた。んだけど、君を裏切るような………いや、浮気したも同然の僕を許してくれるの

婚約者であることを許してくれる彼女の優しさに欲を出したのが間違いだったのだろうか?

「私、貴方がずっと大嫌いでしたから嫌がらせですわ」

婚約者であることを了承した口で僕を大嫌いだという言葉。許したわけじゃないとそういうことだろうか?いや、でもそれならなんで僕と婚約者でいることを承知してくれた?

「そんなに僕は嫌われていたの?」

思わず震えた声が出る。君に嫌われてもおかしくないと覚悟はしていたというのに。

「さようなら」

レヴェリーが何をしたいのか、何を言いたいのか、この瞬間が一番わからない難問だった。後ろ姿を見せる彼女を逃せば消えてしまいそうでズキズキと痛む胸を無視して追いかけて、去ろうとしたレヴェリーの腕を掴む。

「待って!今更と思うかもしれないけど僕はレヴェリーが好きだ!誰よりも愛している!信じられないかもしれないけど本当なんだ!ねぇ、嫌いならどうして僕と婚約を…………レヴェリー?」

「……………」

覗き込んだレヴェリーは泣きながらに虚ろで、もう既に限界を迎え僕の声は聞こえていなかった。

ぶつぶつと何かの妄想に囚われたように目も僕を映してはいない。耳も恐らくは………。

「レヴェリーは何と聞こえていたの?」

手遅れだった。そう悟った。身体どころかレヴェリーは心さえも蝕まれて壊れてしまっていた。さっきの会話すらレヴェリーには僕の言葉が通じていたかもわからない。

静かに呟いた言葉は降りだした雨によってかき消える。

そうして三日後レヴェリーはみんなに見守られて亡くなった。だけど、最後までレヴェリーの心はひとり。レヴェリーはレヴェリーの中でひとりで逝ってしまった。
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