(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

4章(真面目版)悪役令嬢の知らない想いと記憶～アムール(ロイエ)編～

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レヴェリーが亡くなった。頭では理解しているつもりなのに逃げてきた心が理解しようとしない。関係がないはずのティアすらもレヴェリーを見守った。

誰もティアに来るなとは言うはずもなければ、言えるはずもない。言ってしまえば誰一人レヴェリーの傍にいる資格などないのだから。

「ロイエ様、私ロイエ様が婚約を解消する話をレヴェリー様にいたしました」

「え？」

冷たくなったレヴェリーの傍で最初にポツリと呟いたのはティアだった。レヴェリーの父も母も、僕も僕の父すらもみんながティアを見る。

「レヴェリー様笑ってた。ロイエ様との婚約の解消は嫌な癖にって責めて、笑ってたんです。ロイエ様の相手が私でよかったって………笑ってた！自分は死ぬしかないからって自分の未来を諦めて笑ってたんです………っ私はそんなこと言わせたいわけじゃなかったのに！」

ティアは下唇を噛み締めて言う。涙だけは流すものかと。

未来………生を諦めて笑う。僕が、そうさせてしまった？いや、僕たちがそうさせた。

ふと思い出すのは校舎裏でひっそりと見ていた弱々しい笑顔のレヴェリー。ティアの言葉であの笑顔が生を諦めた笑いと理解し、その笑みを見てようやく覚悟を決めた自分が改めて情けなく感じた。その時点で僕は遅すぎたのだと。

レヴェリーは僕との未来を見ていなかった。レヴェリーの中で僕は、ティアと結ばれる未来が最善だと考えられていた。自分のことよりも他人のことを考えるレヴェリーらしい考えかもしれない。

………だけど、そんな考えをさせたのは僕のせいだ。レヴェリーは最後の三日間、ようやく自分を守るために全て僕たちを拒絶した。

『死にたくない………死にたくない………っくる、しいよ………っ』

まだ拒絶前、ティアには生を諦めた笑みを浮かべながらレヴェリーの本当の想いは生を諦めたくない気持ち。

誰に頼ることもなく、ただ自分ひとりだと思い込んで本音を漏らすレヴェリーを見ていられず抱き締めたり名前を何度も呼び掛けたりもしたがレヴェリーが僕たちを見ることも、声に反応することもなかった。

何もかも遅すぎた、僕たちは。伝えたいときに伝えられなかった想いはレヴェリーを傷つけてきた代償だろうか。

一番苦しいのはレヴェリー

一番辛いのもレヴェリー

一番死を受け入れたくなかったのもレヴェリー

なのに僕は支えることもできず逃げてしまった。最悪な方法で。優しいレヴェリーはきっと僕を幸せにするために僕に嫌われようとした。ティアの言葉からそう想像した。

僕がティアを好きなのだと思い、レヴェリーのことを忘れてティアと未来を築けるようにレヴェリーはきっとティアをいじめたりして自分の悪い噂を広げて僕との婚約が解消されるのを待っていた。それが本当に最善の未来だと信じて。

無駄なのに。

もう信じてもらうのは無理な話だけど、いくら逃げようとしてもティアに好意を抱けてもレヴェリーへの愛以上にはならない。

どんなに最低と言われることをしたレヴェリーでも、それくらいで嫌えるというなら僕はレヴェリーの予告された死を怖がって逃げるなんてことを続けなかった。愛していたからこそレヴェリーの死を認めたくなくて逃げてきたというのに。

嫌えてしまえばどんなに楽だったか。でもそれ以上にレヴェリーを好きになったことに後悔はない。

後悔すべきは気持ちを伝えられなかったこと。レヴェリーをひとりで死なせてしまったこと。

逃げなければ、レヴェリーの死にも、レヴェリー自身にも向き合っていればレヴェリーは壊れることなくひとりで死ぬなんてことはなかっただろう。

いくら死ぬ最後まで僕たちがいたとしてもアイの中ではひとりで死んだのと変わらない。レヴェリーは僕たちの存在をいないものとして三日間ずっとひとりで苦しんで死を迎えたのだから。