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4章悪役令嬢の知らない想いと記憶~ツグナイ(コーカイ)編~

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「ヒロイン、悪いのは君じゃない。僕だ」

「! そんな、コーカイ様は何も」

「知っていたんだ。アイのこと」

そうはっきり告白するとヒロインだけでなく親たちも動揺を見せる。何故、いつからというばかりに。この人たちは最後まで隠し通すつもりだったのだろうか。最後僕が立ち会ったことをどう思っていたのだろう。

最後の最後で僕をアイに会わせてくれたのは今更知らぬままに死なせることに何か感じることがあったのか、壊れたアイを見て何か考えが変わったのかわからない。

でも最初から知っていれば僕はアイを裏切ることがなかったかと言えばそうじゃない。実際逃げたのは事実。親たちには僕の弱さが見抜かれていたのかもしれない。

一番最初に動揺した様子から立ち直ったのはヒロインですぐ涙にうるむ目で僕を睨み付け、ぱしんとヒロインの手が僕の頬を叩いた。

「アイ様がどれだけ苦しんでいたかおわかりですか!?」

「わからないよ、アイは僕に弱味を見せようとはしなかったから」

ヒロインの前ではアイは弱味を見せたのだろうか。苦しんでいたときなど僕は最後の三日間しか見ていない。

「甘えないでください!アイ様が見せようとしなかったから?ならば思わず弱味を見せてしまうくらい傍に寄り添って支えてあげればよかったでしょう?弱味を見せない………それは強がっているだけでアイ様は心配をかけたくないという思いやりに他なりません。強がっているほどに、強がらないといけないくらい辛いと何故わからないのですか?私が言えたことではないのはわかっています。だけどコーカイ様貴方は最低です!」

「……………」

黙ることしかできないのは正にヒロインが言う通りであるから。

「ヒロイン嬢といったか。コーカイがいつから知っていたのかは知らないが私たちがコーカイに隠してきたことに一番の責任がある。悪いのは大人である私たちだ」

父がヒロインを咎めることなく、ただ僕を庇うために口を出せばヒロインが見たこともない冷たい目を見せる。

「それでもコーカイ様が知っていたことは事実です。私は先程自分を責めましたが、コーカイ様がアイ様のことを知っていたことを聞いて動揺と共に頭が冷えたようです。アイ様は死ぬ間際までここにいる誰ひとりその瞳に映すことはありませんでした。それは全てを拒絶するほどに自分を想ってくれる人がいないと思っていたからでは?今思えばアイ様が自分を大切にしようとなさらないのは自分の価値を低く見ていたからだと思います。貴方たちはアイ様にどう接していたのですか?」

身分差に怖がることなく僕から視線を逸らして親たちを睨みつけるヒロインは確信しているかのように言う。たじろぐ大人たち。

僕の知らないところでヒロインはアイの苦しむ姿を見ていたのかもしれない。自分を責めたヒロインは他が逃げることなど許さないとばかりに親たちの答えを待つ姿は誰よりも勇ましかった。



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ヒロインの方がヒーロー感漂う不思議………。

by作者
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