(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

4章(真面目版)悪役令嬢の知らない想いと記憶～アムール(ロイエ)編～

15～ティア視点～

「何を言ってるんだろう」

レヴェリー様に確かめた気持ちでもないというのに勝手なことばかり言ってしまった。あの人たちはあの人たちなりにレヴェリー様を想っていたのはわかるから。

ただそれがレヴェリー様に伝わっていないのはレヴェリー様にその愛を伝えてこなかったのに他ならない。自らの娘から逃げてきた親が今更………そう感じた。

私だってレヴェリー様が本当に望んでいるわけでもないのにロイエ様のことで協力してしまったどうしようもない自分がいることを理解している。

レヴェリー様は誰にも本当の気持ちを打ち明けなかった。ひとりになったと思い込むほどに壊れてようやく本音を言えたのだ。死にたくない、それと私だけが聞いた本音………。

『お母様も、お父様もみんな大嫌い………。私なんて生まれなきゃよかったんだ………』

たまたま私がレヴェリー様の手を握っていて近くにいたから呟いた声を拾えただけのこと。死にたくないと叫ぶのに、この言葉だけは小さくて生まれたことを間違いだというレヴェリー様を思わず抱き締めた。

『ティア？レヴェリーはなんて………』

何か言ったのはレヴェリーの傍にいたみんなにもわかったのだろう。急にレヴェリー様を抱き締めた私に疑問を抱いたようだ。

『わからない。ただとても辛そうな声だったから』

抱き締めたところでレヴェリー様は反応しない。それは私も拒絶されているということ。生まれてこなければよかったという言葉を言ったレヴェリー様は何を想ってそう言ったのか私にはわかってあげられない。

だからこそレヴェリー様の大嫌いと呟かれた親たちに、ロイエ様に、そして私に腹が立って仕方なかった。

誰ひとりレヴェリー様に生きていてほしいと好きだと愛していると想いの意味が違ったとしてもそれを誰ひとり伝えてはこなかった証拠だと思うから。

伝えていれば、逃げなければレヴェリー様は全てを拒絶するほどに壊れてしまわなかった。ひとりで死んでいくなんて悲しいことを思いながら死ぬこともなかった。

そう思わせた親たちが、ロイエ様が、自分が許せなくて半ば八つ当たるように言いたいことを言った。ロイエ様がレヴェリー様の余命を知っていたと聞いて我慢できなくなってしまった。

私も同じくらいレヴェリー様に酷いことをしたというのに。

何故あの言葉だけが小さく呟かれたのかはわからない。大嫌いだと、生まれなければよかったと思うほどの人生をレヴェリー様は歩んできたのだろう。

本当は深く愛されているレヴェリー様なのに、それが伝わっていないばかりにレヴェリー様は全てを嫌い、生まれてきてよかったどころか生まれなければと思わせてしまった私たちの何と罪なことか。

あれだけそんな権利もなくロイエ様たちを責め立てた私だというのにあの呟きだけは結局私は誰にも言うことはなかった。