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昔から乙女ゲームが好きだった。でもその世界に行きたいとまで思ったわけではない。……いや、一回ぐらいはあったかもしれない。
でも、空想の中だからこその楽しみってものがあるわけで。なんで私がヒロインに生まれ変わってるのか。何せ私は前世通り名を轟かせた黒歴史のある不良娘だった過去さえある。そんな私がヒロイン?神様、人選間違えてますよー。
まあ、とはいえ、頭を打って前世を思い出したのに、混乱することなく転生したのかと思える私は案外冷静だった。前世の黒歴史の数々によるものだろう。
そんなわけで簡単に説明すると、ここは前世でいう乙女ゲームの世界!で、私はヒロインの公爵家の次女であり、そのヒロインたる私をいじめるやらなんやら仕出かして断罪される悪役令嬢が公爵家長女。つまり今の私の姉である。
転生してそれを理解した私はヒロインになりきるでもなく、姉と仲良くなることを決めた。正直現実の男をヒロインだからと誑かすようなことをする趣味はないから。
全員婚約者いるし?空想だからこそ許されるけど、現実ならこの世界のヒロインただのクズのビッチだから。そんなに落ちぶれるくらいなら私は恋なんてゴミ箱に放り投げますとも。
とは思っても、なにもしなくても惚れられるヒロイン要素があってはたまらない。ならば、悪役令嬢である姉と仲良くして、もしもの場合、私がそんな人様の婚約者を誑かすような人物でないとわかってもらうことが大事。
そういう不純な理由で仲良くなろうとした私だったが、気がつけば私は見事なシスコンヒロインになった。後悔はない。
ちなみにもちろん姉の婚約者を奪う気はない。王子様とか支えるなんて無理だし、まずお姉様を奪う敵として見ちゃうし。
何より、お姉様しか見てない私が、なにもしなくても勝手に私に惚れて………
「もう我慢ならない。君とは婚約破棄だ」
お姉様を悲しませるのだから。しかも卒業パーティーの大勢の前で。
我慢ならないのは私ですが?
「な、何故ですか!私は殿下のために今まで……!」
そうだそうだ!お姉様の日常生活を見守りたくて、王妃教育さえもわがままを言って見せてもらってたけど、あんなの人間がするもんじゃないのに、私のお姉様は完璧に習得してるんだぞ!えっへん!
「何が私のためだ!私に近づいたという理由だけで令嬢方に酷い目に合わせたと聞く!」
聞いただけ?酷い目ってなんですかー?寧ろ酷い目に合わせてやろうか?ああ?
「そんなことしてません!」
天使のお姉様がするわけない。寧ろお姉様の手を汚すような真似、私が許すとでも?
「はっ嘘などお見通しだ。それに比べて君の妹スフランはなんと健気で可愛いことか!私は貴様と婚約破棄してスフランと……」
「え?お断りしますが」
お姉様が嘘とかふざけんな。しかも、私が健気とか頭おかしいんじゃないだろうか。あんた以外私が健気?と首かしげてるけど?あ、お姉様は別ですよ?お姉様にはよく見られるように日々努力してたから。
まあそこはともかく、私は今とてつもなく目の前のバカを殴りたい。
誰から聞いたか知らないが証拠もなしにお姉様に言いがかりをつけやがる時点で万死に値する………!
なのに……
「スフラン照れているのか?ああ、言わなくとも私にはわかっている」
何一つわかっていませんが?
この王子、私の怒りをつっつく天才としか思えない。
「……お姉様、お聞きしたいことが」
「何かしら……?」
しょんぼりと悲しそうにしながら私に返事を返してくれるお姉様のなんと可愛らしいことか。癒し効果抜群です。これを悪役令嬢にした作成者、今すぐ殴って差し上げるから来なさい。
ああ、だめね、落ち着かないと。
「あのバカ………こほん、殿下を殴る許可って誰からいただければ許されます?」
「スフラン……」
「はい!お姉様!」
「落ち着きなさい」
「はい!」
ああ、不思議。お姉様に言われただけで怒りが浄化されて……
「貴様、私の目の前で未来の王妃スフランをいじめるとは何事」
「てめぇの目は節穴かああああ!」
ぱああああんっと気がつけば私は平手打ちをかましていた。
その勢いで床に倒れた王子を見て、しまった……と思ったが
「グーで殴ってはないからセーフですね!」
パーで頬に触れただけとばかりに笑顔で誤魔化した。
「スフラン……」
お姉様の呆れ顔も可愛いです!悲しい顔よりそちらの方が見てて安心します。
「私の手が頬に触れただけで、照れて床に倒れるなんてよっぽど殿下は私が好きなんですね~!気持ち悪いです!おほほ!」
一応、言い方を変えて訂正。しーんと誰も発言しないから沈黙は肯定と受け取っていいよね。うんうん。
でも、空想の中だからこその楽しみってものがあるわけで。なんで私がヒロインに生まれ変わってるのか。何せ私は前世通り名を轟かせた黒歴史のある不良娘だった過去さえある。そんな私がヒロイン?神様、人選間違えてますよー。
まあ、とはいえ、頭を打って前世を思い出したのに、混乱することなく転生したのかと思える私は案外冷静だった。前世の黒歴史の数々によるものだろう。
そんなわけで簡単に説明すると、ここは前世でいう乙女ゲームの世界!で、私はヒロインの公爵家の次女であり、そのヒロインたる私をいじめるやらなんやら仕出かして断罪される悪役令嬢が公爵家長女。つまり今の私の姉である。
転生してそれを理解した私はヒロインになりきるでもなく、姉と仲良くなることを決めた。正直現実の男をヒロインだからと誑かすようなことをする趣味はないから。
全員婚約者いるし?空想だからこそ許されるけど、現実ならこの世界のヒロインただのクズのビッチだから。そんなに落ちぶれるくらいなら私は恋なんてゴミ箱に放り投げますとも。
とは思っても、なにもしなくても惚れられるヒロイン要素があってはたまらない。ならば、悪役令嬢である姉と仲良くして、もしもの場合、私がそんな人様の婚約者を誑かすような人物でないとわかってもらうことが大事。
そういう不純な理由で仲良くなろうとした私だったが、気がつけば私は見事なシスコンヒロインになった。後悔はない。
ちなみにもちろん姉の婚約者を奪う気はない。王子様とか支えるなんて無理だし、まずお姉様を奪う敵として見ちゃうし。
何より、お姉様しか見てない私が、なにもしなくても勝手に私に惚れて………
「もう我慢ならない。君とは婚約破棄だ」
お姉様を悲しませるのだから。しかも卒業パーティーの大勢の前で。
我慢ならないのは私ですが?
「な、何故ですか!私は殿下のために今まで……!」
そうだそうだ!お姉様の日常生活を見守りたくて、王妃教育さえもわがままを言って見せてもらってたけど、あんなの人間がするもんじゃないのに、私のお姉様は完璧に習得してるんだぞ!えっへん!
「何が私のためだ!私に近づいたという理由だけで令嬢方に酷い目に合わせたと聞く!」
聞いただけ?酷い目ってなんですかー?寧ろ酷い目に合わせてやろうか?ああ?
「そんなことしてません!」
天使のお姉様がするわけない。寧ろお姉様の手を汚すような真似、私が許すとでも?
「はっ嘘などお見通しだ。それに比べて君の妹スフランはなんと健気で可愛いことか!私は貴様と婚約破棄してスフランと……」
「え?お断りしますが」
お姉様が嘘とかふざけんな。しかも、私が健気とか頭おかしいんじゃないだろうか。あんた以外私が健気?と首かしげてるけど?あ、お姉様は別ですよ?お姉様にはよく見られるように日々努力してたから。
まあそこはともかく、私は今とてつもなく目の前のバカを殴りたい。
誰から聞いたか知らないが証拠もなしにお姉様に言いがかりをつけやがる時点で万死に値する………!
なのに……
「スフラン照れているのか?ああ、言わなくとも私にはわかっている」
何一つわかっていませんが?
この王子、私の怒りをつっつく天才としか思えない。
「……お姉様、お聞きしたいことが」
「何かしら……?」
しょんぼりと悲しそうにしながら私に返事を返してくれるお姉様のなんと可愛らしいことか。癒し効果抜群です。これを悪役令嬢にした作成者、今すぐ殴って差し上げるから来なさい。
ああ、だめね、落ち着かないと。
「あのバカ………こほん、殿下を殴る許可って誰からいただければ許されます?」
「スフラン……」
「はい!お姉様!」
「落ち着きなさい」
「はい!」
ああ、不思議。お姉様に言われただけで怒りが浄化されて……
「貴様、私の目の前で未来の王妃スフランをいじめるとは何事」
「てめぇの目は節穴かああああ!」
ぱああああんっと気がつけば私は平手打ちをかましていた。
その勢いで床に倒れた王子を見て、しまった……と思ったが
「グーで殴ってはないからセーフですね!」
パーで頬に触れただけとばかりに笑顔で誤魔化した。
「スフラン……」
お姉様の呆れ顔も可愛いです!悲しい顔よりそちらの方が見てて安心します。
「私の手が頬に触れただけで、照れて床に倒れるなんてよっぽど殿下は私が好きなんですね~!気持ち悪いです!おほほ!」
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