私の夫はストーカー~私は恋も愛も知りません~

荷居人(にいと)

文字の大きさ
2 / 51
1章

夫婦生活初日の朝食1

しおりを挟む
結婚式を終え、同棲にて所謂初夜を迎えたけれど、やったのは一緒に寝ただけ。おやすみなさいと呟いてすぐに寝た。

動じないにしても急なことに変わりはなく、結婚式を終え、ようやく一息がつけたのだ。早く寝ても仕方ないわよね?時雨さんはそれを理解してくれていたようで、寝たいままに寝かせてくれた。

そして、朝、目が覚めればパシャリと機会音が響く。スマホのカメラが私を覗き込んでいた。さすがにこんな朝は初めてで少しばかり驚いた自分がいる。

「ドアップの寝顔・・・!また美世さんのコレクションが増えました」

「そうですか・・・」

私のコレクションとは?と思うけど聞かない方がいいような気がするので、聞かない。夫婦にだって秘め事はあるものだ。

「あ、美世さんの着替えはそこのクローゼにあります。他にも衣装部屋もあるので、気に入らなければ捨てるなり、衣装部屋のものと入れ替えるなり、好きにしてください。ですが、どの服も着る場合は写真撮らせてくださいね」

「はあ・・・」

時雨さんは写真が好きなのだろうか。なんて思いながらベットから出れば時雨さんも私と同じでスマホを持ちながら床に足をついて立ちあがる。夫の前だし気にすることないかと部屋の端にあるクローゼットを開けて手頃な服に着替えた。パシャリと鳴るカメラ音は無視して。

おしゃれな服なんて用意されていたら動きづらそうだし、着にくそうと思っていたけれど、それさえ見越された服ばかり。時雨さんが私の私生活を知るからこそできているのかしら?

なんせジャージまであるとは思わなかった。ジャージは動きやすいし、楽、私が学校の休日によく着ていた服。そちらにしたかったけど、さすがに夫婦生活初日はもう少しマシな服にするべきだと考えた。

それでもシンプルに少し大きめのフードのついた軽く厚みのある長袖の服とジーパン。暑すぎることも、寒すぎることもない今の季節にはちょうどいいかもしれない。

「さて、朝食はどうしますか?」

「毎日は面倒ですが、今日くらいは私が作ります」

「ありがとうございます。面倒なときは私が作りますよ」

「いい旦那様ね」

「君のためならなんでもするよ」

最後砕けた言い方にしっくり来る。夫婦なら話し方も丁寧さも何もない気安い話し方をするべきだろうか。それならまずは会話が大事ね。

私のクローゼットのベットを挟んだ反対側の端のクローゼットには、時雨さんの服があったのだろう。少し服を眺め、目を離していた隙に寝巻きから着替えられているのだから行動が早いものだ。

どんな会話をすべきか考えながらも朝食を用意するため、ある物を見る。卵にベーコン、食パンを見て、私が朝、よく作るものまで理解されているなと思わずにはいられない。食パンなんて私がいつも買っている食パンだ。卵も見た目じゃわからないけどそうだろう。ベーコンすらそうなのだから。

徹底されているなと思いながらも、ベーコンを敷いてその上に目玉焼きを作り、トーストした食パンに乗せるだけの簡単な朝食を用意してお皿に乗せ、飲み物はこれまた用意された私が朝食に毎日飲んでいる野菜ジュース。

ちなみに、用意している間時雨さんは静かだと思えば、スマホはこちらに向けられており、カメラ音がないところを見て動画を録られていると考えたが、まあ邪魔されるわけでもないので好きにさせた。それに手伝ってもらうほどでもないから。

用意が終わり席に着けば、時雨さんも動画を録り止めたのか、スマホを下げて席に着く。

「ああ、念願の美世さんの初手作り料理です!」

再びスマホが上げられ、パシャリパシャリと響くカメラ音、しかし撮るのは私ではなく、朝食。行儀などは気にしないし、料理と言ってもいいかわからないけれど、喜ばれて悪い気はしない。

「目玉焼きは好きなのかけてください」

友人の瑠璃曰く、目玉焼きに何をかけるかというのは時に戦争になると聞いているけど、私は気にしない。ちなみに胡椒派だ。

「美世さんと一緒がいいです。」

「どうぞ」

「ありがとうございます。」

「・・・では、いただきます」

「いただきます」

気が済んだのかスマホを置いて、私から胡椒を受け取り、同じくらいに振りかける時雨さん。時雨さんが胡椒を置いたのを見て食べる前の挨拶に、時雨さんも続いて言う。

一口、二口と食べ、野菜ジュースを飲む。親ではなく、夫と食べる食事ではあるけど、いつもと変わらない朝食を食べられるのはいい。

時雨さんはなんというかセレブが食べそうなおしゃれな朝食をマナーよく食べそうなイメージもあり、マナーなど知らない私からすれば気にせず食べられる環境は大事だ。

それすら時雨さんはわかっているのかもしれない。そう思うと時雨さんを即決した私は間違いなかったのではないだろうか。随分私寄りに考えてくれる夫なのだから。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

処理中です...