泣かないで!~王子様は悪役令嬢に笑ってほしい~

荷居人(にいと)

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1章ー幼少期ー

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そして目が覚めたエリーナと約束した日の翌朝。朝一番に父上に呼び出された。

「ちちうえ、おはようございます!」

「おはよう。今日も元気で何よりだ」

「はい!きょうもエリーナとあえるひですから!」

「それなんだが……な」

僕は楽しみで仕方ないとばかりに笑って言えば、父上が言いにくそうに言葉を詰まらせる。こういうときは大抵僕にとって嫌なことか、残念なこと、悲しいことの知らせだ。母上が余命1カ月と言われたときもそうだった。それから2年、母上はベットの上で今も生きている。医師が奇跡だと言っていた。でもいつ死んでもおかしくはないから母上との時間は大切にしたい。

……っと、話は逸れたけどそういうことで僕は嫌な予感を感じて笑みをなくす。状況からしてエリーナのことに違いないから。

「エリーナになにかあったんですか……?」

昨日の今日で一体……僕は不安から泣きそうになりながらそれをぐっと我慢して自ら尋ねる。

「昨日、水分をあまりとらず泣き続けたせいか軽度の脱水症状になったようで今日は安静にすることにしたそうだ」

「だっすい……」

そういえば僕は泣き止むのを待つことはしたけど飲み物を飲むように進めたりはしなかった。こ、これじゃあ僕はエリーナの婚約者失格の烙印が押されちゃう。

「ま、まあ、私も注意するのを言い忘れていたし、ジルバス公爵もようやくの娘の婚約者との対面場に二人がうまくいくかと緊張して、忘れていたのだろうよ。私もそうだったからな」

「僕も、うかれていました……。エリーナがかわいくて、これが僕のこんやくしゃなんだって。でもエリーナふあんそうで僕あんしんさせたくて」

そればっかり考えてエリーナの水分不足について考えが及ばなかった。エリーナの心を守るのも大事だけど、身体だって同じように守らなければならないのに。

「お、おお、十分その心意気立派だぞキリアス。あまり自分を責めるでない。人は失敗するものだ」

「せんせいがいってました。ひとはゆるされるしっぱいとゆるされないしっぱいがあると。僕のはゆるされないしっぱいです!」

だって僕が気遣えなかったせいで今もエリーナが苦しんでるかと思うと心が痛い。これが許される失敗だと思いたくない。それはエリーナを守りたい気持ちを否定するような行為だと思うから。

「う、うむ。責任感があるのはいいことだ。だが……」

父上が僕を心配してくれる気持ちはわかる。エリーナを心配するあまり、自分を責めて僕が落ち込まないように必死なのだろう。父上は優しいから。

「ちちうえ!僕だっておとこです!こんやくしゃのせきにんくらいとれるおとなになりたいんです!というわけでまずはエリーナのおみまいにいってきます!」

「お、おい!?その気持ちは立派だが、大人も何もお前はまだ5歳、十分子供だぞ!?」

何やら父上が叫んでいたが、早くエリーナの様子を確認したくて仕方ない僕はエリーナのことで頭がいっぱいで聞こえてはいなかった。
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