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1章ー幼少期ー
21~エリーナ視点~
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「ひひっなら、キリアス殿下とそのヒロインリリアーヌとやらを誘拐させちゃいましょうか」
「……っ!?」
これはキリアス様の誘拐事件が起きる一週間前の話。私の屋敷には私の夢について聞きに来たキリアス様の先生が来ていた。聞かれたのはヒロインについてとキリアス様が最初に出会っただろうヒロインとの経緯。
夢の中で二人は同じ誘拐犯に拐われて助けが来るまで共に過ごしたと話すキリアス殿下が夢に出てきていた。何だか話さないといけない圧に負けて、頑なに話さなかったヒロインの名前すらも伝えて話せばその話を実現させようとする意見に私は驚きを隠せない。あのことがあったから二人は私には入れない強い絆が結ばれたというのに。何度とあれは運命だったに違いないと婚約破棄現場でそう話すキリアス殿下の夢を見続けたからこそその提案が怖くて仕方ない。
「ひっひっひっ心配なさらずとも意図的に安全な誘拐なら夢のようにはならないでしょう。それが例えば予知夢であり、その出会いが起点なら、出会いを運命とは思えないもので始めて終わらせればいいのです!」
「………っひく」
訳がわからなかった。この人は何を言ってるんだろうと。キリアス殿下を大事にしているように思えたけど簡単に誘拐させるなんて言う辺り違ったのかと思えてくる。誘拐させて悪いことでも起きたらどうするつもりだろうと。
「ひひっちょうどそろそろ私の父が限界だったのでよかったです。あれを抑えるのは私でも中々に面倒なので。ただでさえキリアス殿下以外と関わりたくないのに……ひっひっひっせっかくなんで動かしてより発散させるべきですね。キリアス殿下には人のよさそうな傭兵に誘拐を依頼するとして、リリアーヌとやらには父の餌食にいたしますか」
ぶつぶつと言い始めるキリアス様の先生の言葉に何かが引っ掛かり首を傾げる。
「う……っ」
「ひっひっひっ私の父に誘拐を頼むのかと?ええ、まあ、私はあまり家族と関わらないのですが、父は自分より年下であればあるほど興奮する変態でして、普段は伯爵の当主としての仕事に没頭することで抑えられてますが、いざ理性が爆発すると………まあこれについては聞かない方がよいでしょうひひっ」
なんだろう。とても寒気がする。伯爵の当主である人に誘拐を頼むこの先生もこの先生だけど、その父親も一体………。今まで夢の中で怖かっただけのヒロインの存在に、初めて憐れんだ気持ちを抱いた瞬間だった。
知らされた誘拐決行日に私はただリリアーヌさんだけが色んな意味で心配になる。だって、たぶん、キリアス殿下は結局変態の餌食になる前にあの先生に助けられそうだから。
まだなにもしていないリリアーヌさんに少しばかり罪悪感を抱きながらあの先生が去る前の言葉が私の頭の中を駆け巡る。
『ひひっいざ父が止められないときはヒロイン……リリアーヌとやらを餌食に私はキリアス殿下をお守りしますので心配はいりませんよ』
ごめんなさい、まだ何も知らないリリアーヌさん。
「……っ!?」
これはキリアス様の誘拐事件が起きる一週間前の話。私の屋敷には私の夢について聞きに来たキリアス様の先生が来ていた。聞かれたのはヒロインについてとキリアス様が最初に出会っただろうヒロインとの経緯。
夢の中で二人は同じ誘拐犯に拐われて助けが来るまで共に過ごしたと話すキリアス殿下が夢に出てきていた。何だか話さないといけない圧に負けて、頑なに話さなかったヒロインの名前すらも伝えて話せばその話を実現させようとする意見に私は驚きを隠せない。あのことがあったから二人は私には入れない強い絆が結ばれたというのに。何度とあれは運命だったに違いないと婚約破棄現場でそう話すキリアス殿下の夢を見続けたからこそその提案が怖くて仕方ない。
「ひっひっひっ心配なさらずとも意図的に安全な誘拐なら夢のようにはならないでしょう。それが例えば予知夢であり、その出会いが起点なら、出会いを運命とは思えないもので始めて終わらせればいいのです!」
「………っひく」
訳がわからなかった。この人は何を言ってるんだろうと。キリアス殿下を大事にしているように思えたけど簡単に誘拐させるなんて言う辺り違ったのかと思えてくる。誘拐させて悪いことでも起きたらどうするつもりだろうと。
「ひひっちょうどそろそろ私の父が限界だったのでよかったです。あれを抑えるのは私でも中々に面倒なので。ただでさえキリアス殿下以外と関わりたくないのに……ひっひっひっせっかくなんで動かしてより発散させるべきですね。キリアス殿下には人のよさそうな傭兵に誘拐を依頼するとして、リリアーヌとやらには父の餌食にいたしますか」
ぶつぶつと言い始めるキリアス様の先生の言葉に何かが引っ掛かり首を傾げる。
「う……っ」
「ひっひっひっ私の父に誘拐を頼むのかと?ええ、まあ、私はあまり家族と関わらないのですが、父は自分より年下であればあるほど興奮する変態でして、普段は伯爵の当主としての仕事に没頭することで抑えられてますが、いざ理性が爆発すると………まあこれについては聞かない方がよいでしょうひひっ」
なんだろう。とても寒気がする。伯爵の当主である人に誘拐を頼むこの先生もこの先生だけど、その父親も一体………。今まで夢の中で怖かっただけのヒロインの存在に、初めて憐れんだ気持ちを抱いた瞬間だった。
知らされた誘拐決行日に私はただリリアーヌさんだけが色んな意味で心配になる。だって、たぶん、キリアス殿下は結局変態の餌食になる前にあの先生に助けられそうだから。
まだなにもしていないリリアーヌさんに少しばかり罪悪感を抱きながらあの先生が去る前の言葉が私の頭の中を駆け巡る。
『ひひっいざ父が止められないときはヒロイン……リリアーヌとやらを餌食に私はキリアス殿下をお守りしますので心配はいりませんよ』
ごめんなさい、まだ何も知らないリリアーヌさん。
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