泣かないで!~王子様は悪役令嬢に笑ってほしい~

荷居人(にいと)

文字の大きさ
32 / 40
1章ー幼少期ー

25

しおりを挟む
「魔女かどうかはまだ確定ではありませんが、本来誘拐で運命の出会いとやらをするらしかったので誘拐で同じく会わせてみました。ひひっ」

「それはエリーナが?」

「ひっひっひっ昨日聞きまして……ならばこちらで誘拐の段取りをしようかと思いましてね」

「なるほどです!」

エリーナのために繋がる誘拐なら仕方ありません。ヒロインさんは変態さんの餌食にしちゃいましたが、果たしてこれは運命の出会いにされちゃわないでしょうか?僕は運命の出会いをするならやっぱりエリーナがいいなぁ。

「そんなことだろうと薄々思ったが私まで何故巻き込んだ」

「ひひっヒロインを知っていただこうと思いまして」

「敵も何も少女だろう?」

「エリーナ嬢から話を聞く前からミューズ家は誘拐の段取りを秘密裏にしてましたからあえて先手を打ちました。この誘拐、ミューズ家の自作自演にしようかと思いましてひひっ」

「先生の父、ラパン伯爵が関わっているが?」

「そこはたまたま見かけた父が女の子リリアーヌ嬢を助けたということで……しかし、キリアス殿下たちまでは助けに至らなかったというシナリオです」

「どう見ても犯罪者の顔だったが………?」

父上が正気か?とばかりに先生の顔を真顔で見る。先生の父親ってあの先生に似た変態さん?先生の父親らしき人で関わっているとなればあの人しか思いつかない。それにそれなら父上の言うように助けたというより誘拐犯と言われた方がしっくりくる人だった。

先生には申し訳ないけど………。というかあれが伯爵で大丈夫なんだろうか?

「おいおい、勝手に話進めんな。俺らを誘拐犯に仕立てて捕まえる気かぁ?」

「ひひっ仕立てるも何も現に誘拐したじゃないですか。王族を」

「う……っだが、依頼したのはあんたなんだろうが」

「ひっひっひっそうですね。心配しなくともミューズ家の依頼で誘拐を本当に働こうとした者たちは捕まえてますから問題ありませんよ」

「だが、俺たちの顔は口元を布で隠してるとはいえ見られている。あんな堂々と誘拐したわけだしな」

「ひひっ問題ありませんよ。口裏を合わすように手配しましたので。私は誘拐した事実がほしくて誘拐してもいい許可をわざわざとったんですよ。元王族とはいえ悪いようにはしません」

全部が全部先生のシナリオ通りということかな?誘拐犯を先生の教え通り調教を頑張るつもりだったのに少し残念だなぁ。でも、エリーナを怖がらせる魔女ヒロインを知れたのはよかったかもしれない。

敵知らずしてエリーナを安心させるのも難しい話だし、ヒロイン……リリアーヌ嬢の家は本当の悪者みたいだから。

「おっかねぇ……」

「で、貴方たちはキリアス殿下の専属騎士に任命もいたしましたひひっ」

「はぁ!?」

「では、私コミュ障なんでこれ以上は厳しいです。騎士たちは殿下を無事送り届けるように。ひひっ」

先生は爆弾を落とすように言ってまるで最初からいませんでしたとばかりに消えてしまった。父上もリーダーの人も固まってしまっている。

「いや、コミュ障なめんな!めっちゃ話せてただろうが!」

しかし、しばらくしてリーダーの人が地団駄を踏むようにして洞窟にはツッコミが響き渡るのだった。その後ちゃんと僕たちは城に送り届けられ、誘拐犯だった人たちも出迎えられそれに戸惑っている間に僕の専属騎士団扱いにされていた。全ては先生の思惑通り。

僕は初めての自分の騎士団を持てて嬉しいしでとってもいい誘拐経験でした!

でも後日、ミューズ家の当主は誘拐犯の黒幕として告訴され、王族を狙う誘拐として処刑。男爵家は当時のミューズ家当主の独断とされ潰れず代替わりで済み、娘であったリリアーヌ嬢はまだ幼いのもあって被害者のひとりとして罰はなかったそうな。

だからまだまだ油断はできない。エリーナの怖い未来の中心は存在しているのだから。
しおりを挟む
感想 159

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

reva
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...