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「みんなしてそんな目で………私もあの時は混乱していたのよ」
私やゼロだけに限らず、ぼーっとしたミリーナ様の息子以外、息子の婚約者でさえ一歩下がってミリーナ様に疑いの目を向けているのに動じる様子はまるでない。
困った人たちを見るような目でそう言い退けるミリーナ様は狂気が見え隠れしているような………そんな気すらしてくる。
「……ミリーナ様、私はずっと気になってたことがありました」
「エミリー?」
ずっと静かに聞いていたミリーナの息子の婚約者はエミリーと言うらしい。そんなエミリー様は無表情ながらどこか緊張した面持ちで、困った表情を崩さないミリーナ様へと言葉を発した。
そんな娘を心配そうにどうしたのとばかりに名前を呼んだのは彼女の母。しかし、自分の母の言葉に振り返ることなく彼女は気になっていたということを話し出した。
「ミリーナ様はずっと言ってましたよね。もし、浮気に耐えられないならそちらの有責での婚約破棄してもいいと」
「……ええ。浮気する息子に問題があるのは確かだったもの。エミリー嬢に非はないし、当然のことを言ったつもりだったけれど……」
これに関しては特に気になるとは思えないけれど、エミリー様は何を気にかけているのだろう?ただ、ミリーナ様の表情が少し固くなった気がするのは……少し気になるけれど。
「浮気を教えてくれたのも、それが男性であることも、教えてくれたのはミリーナ様でしたよね」
「ええ、相手がゼロだったから、たまたますぐ知れたのよ」
「最初浮気を知らされたとき、息子のことでもあるのに私に対して隠そうとせずに教えてくれたのはそれなりの誠意があって……と思っていました。それでも私は彼を愛していたわけではないですし、家の利益のための政略結婚ということ以外にも、私は男性が元々得意ではなかったので、必要最低限の会話と距離をとってくれる彼はある意味理想だったので構わないと言いましたよね。浮気相手も一人でしたし、結婚後愛人にして子供を生んでくれるならよりいいんじゃなんて話もついてました。結婚まではこっそり会うようにとだけ一応約束をして。白い結婚は理想的だったので助かったぐらいです」
浮気が利害一致する人たちもいたのか………なんて思うものの、エミリー様の場合は特殊な気もする。にしても、浮気は自ら知ったわけではなくまさかミリーナ様が伝えていたなんて………。
まあ、確かに最初からエミリー様がミリーナ様の息子を心配した様子は見られないようには思えたけど。あくまで都合のいい結婚相手として見ていたのがわかる。
にしても、浮気は確かに最低なものだけど、息子に叱ったりはしなかったんだろうか?何も対処せずエミリー様にすぐ伝えたなら確かに不自然だけど。まるで、婚約破棄を誘導するような……。
「そうね。だけど、男性が苦手と聞いていたから愛人が男だと白い結婚にもなりえないかもしれないし、より辛いんじゃと私は思って……」
「私に、浮気相手が男だと伝えたんですよね?」
「え、ええ」
「それでもまあ、最悪養子縁組でも構わないのではと話をつけましたね。互いに抱きたくも、抱かれたくもないでしょうと。彼は浮気相手の性別がなんであろうと関係なく愛していたようですし」
「……イチが?」
ゼロが驚いた様子でエミリー様を見る。イチ……それがずっとぼーっと立っているミリーナ様の息子の名前なのだろう。そう言えば、ゼロは散々犯した後、イチ様が恐れて誰にも言わなかったとか言っていたっけ。
しかし、それならいつゼロはイチ様を殺すチャンスを得たのだろうか?そもそも愛ゆえに警戒されているつもりでも、実際は警戒されていなかったからゼロは隙をつけた……とか?
でもそれならイチ様は、ゼロに犯された後、しばらく会おうとしなかったことも疑問だけど、何か考えがあり会おうとしなかったとして、何故再び出会うようなこととなったのか。
会わなければイチ様は今こんな状態になっていなかっただろうから。
ああ、聞けば聞くほど謎を呼ぶ話だ。まさかイチ様のことまでゼロがどこかで記憶を改竄してたとか?いや、きっかけもなくさすがにそれはないか。
私やゼロだけに限らず、ぼーっとしたミリーナ様の息子以外、息子の婚約者でさえ一歩下がってミリーナ様に疑いの目を向けているのに動じる様子はまるでない。
困った人たちを見るような目でそう言い退けるミリーナ様は狂気が見え隠れしているような………そんな気すらしてくる。
「……ミリーナ様、私はずっと気になってたことがありました」
「エミリー?」
ずっと静かに聞いていたミリーナの息子の婚約者はエミリーと言うらしい。そんなエミリー様は無表情ながらどこか緊張した面持ちで、困った表情を崩さないミリーナ様へと言葉を発した。
そんな娘を心配そうにどうしたのとばかりに名前を呼んだのは彼女の母。しかし、自分の母の言葉に振り返ることなく彼女は気になっていたということを話し出した。
「ミリーナ様はずっと言ってましたよね。もし、浮気に耐えられないならそちらの有責での婚約破棄してもいいと」
「……ええ。浮気する息子に問題があるのは確かだったもの。エミリー嬢に非はないし、当然のことを言ったつもりだったけれど……」
これに関しては特に気になるとは思えないけれど、エミリー様は何を気にかけているのだろう?ただ、ミリーナ様の表情が少し固くなった気がするのは……少し気になるけれど。
「浮気を教えてくれたのも、それが男性であることも、教えてくれたのはミリーナ様でしたよね」
「ええ、相手がゼロだったから、たまたますぐ知れたのよ」
「最初浮気を知らされたとき、息子のことでもあるのに私に対して隠そうとせずに教えてくれたのはそれなりの誠意があって……と思っていました。それでも私は彼を愛していたわけではないですし、家の利益のための政略結婚ということ以外にも、私は男性が元々得意ではなかったので、必要最低限の会話と距離をとってくれる彼はある意味理想だったので構わないと言いましたよね。浮気相手も一人でしたし、結婚後愛人にして子供を生んでくれるならよりいいんじゃなんて話もついてました。結婚まではこっそり会うようにとだけ一応約束をして。白い結婚は理想的だったので助かったぐらいです」
浮気が利害一致する人たちもいたのか………なんて思うものの、エミリー様の場合は特殊な気もする。にしても、浮気は自ら知ったわけではなくまさかミリーナ様が伝えていたなんて………。
まあ、確かに最初からエミリー様がミリーナ様の息子を心配した様子は見られないようには思えたけど。あくまで都合のいい結婚相手として見ていたのがわかる。
にしても、浮気は確かに最低なものだけど、息子に叱ったりはしなかったんだろうか?何も対処せずエミリー様にすぐ伝えたなら確かに不自然だけど。まるで、婚約破棄を誘導するような……。
「そうね。だけど、男性が苦手と聞いていたから愛人が男だと白い結婚にもなりえないかもしれないし、より辛いんじゃと私は思って……」
「私に、浮気相手が男だと伝えたんですよね?」
「え、ええ」
「それでもまあ、最悪養子縁組でも構わないのではと話をつけましたね。互いに抱きたくも、抱かれたくもないでしょうと。彼は浮気相手の性別がなんであろうと関係なく愛していたようですし」
「……イチが?」
ゼロが驚いた様子でエミリー様を見る。イチ……それがずっとぼーっと立っているミリーナ様の息子の名前なのだろう。そう言えば、ゼロは散々犯した後、イチ様が恐れて誰にも言わなかったとか言っていたっけ。
しかし、それならいつゼロはイチ様を殺すチャンスを得たのだろうか?そもそも愛ゆえに警戒されているつもりでも、実際は警戒されていなかったからゼロは隙をつけた……とか?
でもそれならイチ様は、ゼロに犯された後、しばらく会おうとしなかったことも疑問だけど、何か考えがあり会おうとしなかったとして、何故再び出会うようなこととなったのか。
会わなければイチ様は今こんな状態になっていなかっただろうから。
ああ、聞けば聞くほど謎を呼ぶ話だ。まさかイチ様のことまでゼロがどこかで記憶を改竄してたとか?いや、きっかけもなくさすがにそれはないか。
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