18 / 19
2章戻る記憶と繰り返す自殺未遂
3
しおりを挟む
『今日も私は生きているのね』
そう呟くのは私。今私が思うことではあるけど、気のせいか自分でありながら別の人が呟いているようなそんな感じがする。
『シーニ様、生きるのがお辛いですか?』
私の傍にいる使用人………だろうか?顔がぼやけて誰かはわからないけど女性の声が私に問う。
『そうね、嘘だらけで自分が出せない世界は息苦しいわ』
『わ、私はシーニ様に嘘はつきません!』
『貴女がつかなくても私が吐くわ』
『私はそれでも構いません!』
『バカね………貴女は』
『私にはシーニ様しかいないので………』
『………貴女みたいに優しい子を人は何故見ようとしないのかしらね。本当人は愚か。私もそう』
『シーニ様は愚かなんかじゃ………!』
『愚かよ。私は………』
私はなんだったかしら?口が動いているのにやはり私であって私じゃないものが話しているのだろう。自分が何を言っているかわからない。
そこでまるで塗りつぶされるかのように真っ暗な世界となった。
そして次に目を覚ました時には私の寝室に父と使用人がいた。現実に戻ったのだ。あれは夢でしかないというのに鮮明に覚えていて何故かあの先のことが忘れられない。
何か忘れているようなそんな気がしてならないのだ。
「シーニ!よかった………っ」
だけど、今はそれを考えている場合でもない。私のせいで涙を流す父が目の前にいるのだから。母はネムーの傍にいるのだろう。
父も私など放っておいてネムーの傍にいればよいのにとは思うけれど、私は両親が優しいことを知っているし、私が心配されるような価値はないと言っても父は私を心配し、涙を止めないのだろう。
罪ない子に生まれたならどれだけよかっただろうか。繰り返した人生の記憶がなければ…………いや、それはきっと同じことしか私は繰り返さないだろう。
「お父様、ネムーはまだ目を覚ましませんか」
「覚ましてはいないよ。ネムーを心配する前にシーニは自分のことを………」
「私なんてどうでもよいのです」
そんな本音を呟けばパシンと父が私の頬を叩く。
「旦那様!」
使用人が目を見開いて慌てるのがわかる。あの温厚な父が私を叩くなんて誰も思わなかっただろう。これでも私も驚いているけど安心もしている。
父は私に優しいばかりでないことに。
「どうでもよいわけがない!私たちの大事な娘だ!そればかりはいくらシーニが自分のこととはいえ許さない。頼むから、命を大事にしてほしい。死にたい理由は聞かないから生きることをやめようとしないでくれ」
「お父様………」
ただ二人の間に生まれただけの私をここまで慈しんでくれていることを素直に喜べない私は親不幸ものでしかないだろう。それでも心はぽかぽかと温かい気がした。
私が感じてはいけない温かいもの。これを欲してしまえばきっと私は甘えてしまう。
我儘ばかりのろくでもない自分に戻ってしまう。だからこそその芽生えた気持ちは無視しなければならない。この気持ちは私以外が持つべきもの。
こんな気持ちを我慢し続けるのは私には無理だ。父や母、ネムーに願われても私の死にたい気持ちが変わることはない。
変えるわけにはいかないのだ。
「私たちでは生きる理由にならないのかい?」
父は私の考えを読むようにそう言った。父は私の罪を知らない。だから私は父が私なんかに生きてほしいと願えるのだと思い込むことでまだ死のうと思える。
できれば永遠に知られたくはない。知った上で生きることを望まれたら私はきっと父に甘えてしまう。本当は私は…………と。
「お父様すみません、私はお父様が何を言いたいのかわからない愚か者です」
「シーニ………」
だが、願うわけにはいかない。私は…………と思うことすら許されない罪であるのだから。
だからこそ父を突き放す言葉しか私は返せない。先程以上に私自身の価値を下げる言い方をして。最初から価値などないわけではあるけど。
悲しげに歪む父の表情に胸が痛む。だけど表情には出さないし、私が父を悲しませたくないなんて傲慢だと思ったりもする。
悲しませているのは私であり、繰り返す人生で両親が嫌いであったわけじゃないが二人のことは我が儘をなんでも聞いてくれる存在であり、それ以上として見てはいなかった気がするから。
だって今思えば私は処刑されるあの日、両親のことを思い浮かべた記憶がない。
たくさん愛されて我が儘を聞いてもらって最後まで迷惑をかけたというのに私は二人よりもイチーズ殿下とクルッテのことばかりで謝罪どころか愚かな私を育ててくれた感謝の一言すら告げていないのだ。
心の中でさえ。
繰り返していく人生でも私は心の中でもう繰り返したくないと謝罪を繰り返したがそれは両親ではなく、クルッテでもイチーズ殿下にでもなく自分の心を守ろうと必死になっていただけではないかと私は思う。
助かるはずがないと湖で沈んでも死ねなかったせいだろうか、そんなことばかり考える自分がいる。
どこまでも自分本位で勝手で救いようがない。考えれば考えるほど沼に嵌まるように私の思考は気がつけば父の声すら届かなくなっていた。
そう呟くのは私。今私が思うことではあるけど、気のせいか自分でありながら別の人が呟いているようなそんな感じがする。
『シーニ様、生きるのがお辛いですか?』
私の傍にいる使用人………だろうか?顔がぼやけて誰かはわからないけど女性の声が私に問う。
『そうね、嘘だらけで自分が出せない世界は息苦しいわ』
『わ、私はシーニ様に嘘はつきません!』
『貴女がつかなくても私が吐くわ』
『私はそれでも構いません!』
『バカね………貴女は』
『私にはシーニ様しかいないので………』
『………貴女みたいに優しい子を人は何故見ようとしないのかしらね。本当人は愚か。私もそう』
『シーニ様は愚かなんかじゃ………!』
『愚かよ。私は………』
私はなんだったかしら?口が動いているのにやはり私であって私じゃないものが話しているのだろう。自分が何を言っているかわからない。
そこでまるで塗りつぶされるかのように真っ暗な世界となった。
そして次に目を覚ました時には私の寝室に父と使用人がいた。現実に戻ったのだ。あれは夢でしかないというのに鮮明に覚えていて何故かあの先のことが忘れられない。
何か忘れているようなそんな気がしてならないのだ。
「シーニ!よかった………っ」
だけど、今はそれを考えている場合でもない。私のせいで涙を流す父が目の前にいるのだから。母はネムーの傍にいるのだろう。
父も私など放っておいてネムーの傍にいればよいのにとは思うけれど、私は両親が優しいことを知っているし、私が心配されるような価値はないと言っても父は私を心配し、涙を止めないのだろう。
罪ない子に生まれたならどれだけよかっただろうか。繰り返した人生の記憶がなければ…………いや、それはきっと同じことしか私は繰り返さないだろう。
「お父様、ネムーはまだ目を覚ましませんか」
「覚ましてはいないよ。ネムーを心配する前にシーニは自分のことを………」
「私なんてどうでもよいのです」
そんな本音を呟けばパシンと父が私の頬を叩く。
「旦那様!」
使用人が目を見開いて慌てるのがわかる。あの温厚な父が私を叩くなんて誰も思わなかっただろう。これでも私も驚いているけど安心もしている。
父は私に優しいばかりでないことに。
「どうでもよいわけがない!私たちの大事な娘だ!そればかりはいくらシーニが自分のこととはいえ許さない。頼むから、命を大事にしてほしい。死にたい理由は聞かないから生きることをやめようとしないでくれ」
「お父様………」
ただ二人の間に生まれただけの私をここまで慈しんでくれていることを素直に喜べない私は親不幸ものでしかないだろう。それでも心はぽかぽかと温かい気がした。
私が感じてはいけない温かいもの。これを欲してしまえばきっと私は甘えてしまう。
我儘ばかりのろくでもない自分に戻ってしまう。だからこそその芽生えた気持ちは無視しなければならない。この気持ちは私以外が持つべきもの。
こんな気持ちを我慢し続けるのは私には無理だ。父や母、ネムーに願われても私の死にたい気持ちが変わることはない。
変えるわけにはいかないのだ。
「私たちでは生きる理由にならないのかい?」
父は私の考えを読むようにそう言った。父は私の罪を知らない。だから私は父が私なんかに生きてほしいと願えるのだと思い込むことでまだ死のうと思える。
できれば永遠に知られたくはない。知った上で生きることを望まれたら私はきっと父に甘えてしまう。本当は私は…………と。
「お父様すみません、私はお父様が何を言いたいのかわからない愚か者です」
「シーニ………」
だが、願うわけにはいかない。私は…………と思うことすら許されない罪であるのだから。
だからこそ父を突き放す言葉しか私は返せない。先程以上に私自身の価値を下げる言い方をして。最初から価値などないわけではあるけど。
悲しげに歪む父の表情に胸が痛む。だけど表情には出さないし、私が父を悲しませたくないなんて傲慢だと思ったりもする。
悲しませているのは私であり、繰り返す人生で両親が嫌いであったわけじゃないが二人のことは我が儘をなんでも聞いてくれる存在であり、それ以上として見てはいなかった気がするから。
だって今思えば私は処刑されるあの日、両親のことを思い浮かべた記憶がない。
たくさん愛されて我が儘を聞いてもらって最後まで迷惑をかけたというのに私は二人よりもイチーズ殿下とクルッテのことばかりで謝罪どころか愚かな私を育ててくれた感謝の一言すら告げていないのだ。
心の中でさえ。
繰り返していく人生でも私は心の中でもう繰り返したくないと謝罪を繰り返したがそれは両親ではなく、クルッテでもイチーズ殿下にでもなく自分の心を守ろうと必死になっていただけではないかと私は思う。
助かるはずがないと湖で沈んでも死ねなかったせいだろうか、そんなことばかり考える自分がいる。
どこまでも自分本位で勝手で救いようがない。考えれば考えるほど沼に嵌まるように私の思考は気がつけば父の声すら届かなくなっていた。
21
あなたにおすすめの小説
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
悪役令嬢に転生したので推しの悪役王子を救おうと思います!
かな
恋愛
大好きな乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生!?
しかもこのままだと最推しが死んじゃうんですけど!?
そんなの絶対ダメ!!
そう思って推しの死亡ルートを回避しようと奮闘していると、何故か溺愛が始まって……。
「私に構っている暇があったら、(自分の命の為に)ヒロインを攻略して下さい!」
距離を取ろうとしたのに、推しから甘やかされて……?
推しを救うために頑張ってたら、溺愛ルートに突入しました!?
他サイト様にも掲載中です
執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた
桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、
婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が
部屋に閉じこもってしまう話からです。
自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。
※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。
悪役令嬢を追い込んだ王太子殿下こそが黒幕だったと知った私は、ざまぁすることにいたしました!
奏音 美都
恋愛
私、フローラは、王太子殿下からご婚約のお申し込みをいただきました。憧れていた王太子殿下からの求愛はとても嬉しかったのですが、気がかりは婚約者であるダリア様のことでした。そこで私は、ダリア様と婚約破棄してからでしたら、ご婚約をお受けいたしますと王太子殿下にお答えしたのでした。
その1ヶ月後、ダリア様とお父上のクノーリ宰相殿が法廷で糾弾され、断罪されることなど知らずに……
婚約破棄された令嬢ですが、今さら愛されたって遅いですわ。~冷徹宰相殿下の溺愛が止まりません~
nacat
恋愛
王立学院の卒業式で、婚約者の王太子に「悪女」と断罪された公爵令嬢リリアナ。
全ての罪を着せられ、婚約を破棄された彼女は、冷徹と名高い宰相殿下のもとへ嫁ぐことになった。
「政略結婚ですから、愛など必要ございませんわ」そう言い放ったリリアナ。
だが宰相殿下は、彼女を宝物のように扱い、誰よりも深く愛し始める――。
やがて明らかになる“陰謀”と、“真実の愛”。
すべてを失った令嬢が、愛と誇りをもって世界を見返す、痛快ざまぁ&溺愛ロマンス!
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる