悪役令嬢は100回目の自由な人生で死を望む

荷居人(にいと)

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2章戻る記憶と繰り返す自殺未遂

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『今日も私は生きているのね』

そう呟くのは私。今私が思うことではあるけど、気のせいか自分でありながら別の人が呟いているようなそんな感じがする。

『シーニ様、生きるのがお辛いですか?』

私の傍にいる使用人………だろうか?顔がぼやけて誰かはわからないけど女性の声が私に問う。

『そうね、嘘だらけで自分が出せない世界は息苦しいわ』

『わ、私はシーニ様に嘘はつきません!』

『貴女がつかなくても私が吐くわ』

『私はそれでも構いません!』

『バカね………貴女は』

『私にはシーニ様しかいないので………』

『………貴女みたいに優しい子を人は何故見ようとしないのかしらね。本当人は愚か。私もそう』

『シーニ様は愚かなんかじゃ………!』

『愚かよ。私は………』

私はなんだったかしら?口が動いているのにやはり私であって私じゃないものが話しているのだろう。自分が何を言っているかわからない。

そこでまるで塗りつぶされるかのように真っ暗な世界となった。

そして次に目を覚ました時には私の寝室に父と使用人がいた。現実に戻ったのだ。あれは夢でしかないというのに鮮明に覚えていて何故かあの先のことが忘れられない。

何か忘れているようなそんな気がしてならないのだ。

「シーニ!よかった………っ」

だけど、今はそれを考えている場合でもない。私のせいで涙を流す父が目の前にいるのだから。母はネムーの傍にいるのだろう。

父も私など放っておいてネムーの傍にいればよいのにとは思うけれど、私は両親が優しいことを知っているし、私が心配されるような価値はないと言っても父は私を心配し、涙を止めないのだろう。

罪ない子に生まれたならどれだけよかっただろうか。繰り返した人生の記憶がなければ…………いや、それはきっと同じことしか私は繰り返さないだろう。

「お父様、ネムーはまだ目を覚ましませんか」

「覚ましてはいないよ。ネムーを心配する前にシーニは自分のことを………」

「私なんてどうでもよいのです」

そんな本音を呟けばパシンと父が私の頬を叩く。

「旦那様!」

使用人が目を見開いて慌てるのがわかる。あの温厚な父が私を叩くなんて誰も思わなかっただろう。これでも私も驚いているけど安心もしている。

父は私に優しいばかりでないことに。

「どうでもよいわけがない!私たちの大事な娘だ!そればかりはいくらシーニが自分のこととはいえ許さない。頼むから、命を大事にしてほしい。死にたい理由は聞かないから生きることをやめようとしないでくれ」

「お父様………」

ただ二人の間に生まれただけの私をここまで慈しんでくれていることを素直に喜べない私は親不幸ものでしかないだろう。それでも心はぽかぽかと温かい気がした。

私が感じてはいけない温かいもの。これを欲してしまえばきっと私は甘えてしまう。

我儘ばかりのろくでもない自分に戻ってしまう。だからこそその芽生えた気持ちは無視しなければならない。この気持ちは私以外が持つべきもの。

こんな気持ちを我慢し続けるのは私には無理だ。父や母、ネムーに願われても私の死にたい気持ちが変わることはない。

変えるわけにはいかないのだ。

「私たちでは生きる理由にならないのかい?」

父は私の考えを読むようにそう言った。父は私の罪を知らない。だから私は父が私なんかに生きてほしいと願えるのだと思い込むことで

できれば永遠に知られたくはない。知った上で生きることを望まれたら私はきっと父に甘えてしまう。本当は私は…………と。

「お父様すみません、私はお父様が何を言いたいのかわからない愚か者です」

「シーニ………」

だが、願うわけにはいかない。私は…………と思うことすら許されない罪であるのだから。

だからこそ父を突き放す言葉しか私は返せない。先程以上に私自身の価値を下げる言い方をして。最初から価値などないわけではあるけど。

悲しげに歪む父の表情に胸が痛む。だけど表情には出さないし、私が父を悲しませたくないなんて傲慢だと思ったりもする。

悲しませているのは私であり、繰り返す人生で両親が嫌いであったわけじゃないが二人のことは我が儘をなんでも聞いてくれる存在であり、それ以上として見てはいなかった気がするから。

だって今思えば私は処刑されるあの日、両親のことを思い浮かべた記憶がない。

たくさん愛されて我が儘を聞いてもらって最後まで迷惑をかけたというのに私は二人よりもイチーズ殿下とクルッテのことばかりで謝罪どころか愚かな私を育ててくれた感謝の一言すら告げていないのだ。

心の中でさえ。

繰り返していく人生でも私は心の中でもう繰り返したくないと謝罪を繰り返したがそれは両親ではなく、クルッテでもイチーズ殿下にでもなく自分の心を守ろうと必死になっていただけではないかと私は思う。

助かるはずがないと湖で沈んでも死ねなかったせいだろうか、そんなことばかり考える自分がいる。

どこまでも自分本位で勝手で救いようがない。考えれば考えるほど沼に嵌まるように私の思考は気がつけば父の声すら届かなくなっていた。
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