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エンド後ストーリー~共通編~【完結、分岐エンドに続く】
救われない真実~医師視点~
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笑顔がよく似合う少女がいました。少女が笑えばみんなが笑うその様子は、誰が見ても幸せそのもの。
そんな少女には家族がいました。不器用で真面目だけど家族想いな父親と、臆病な一面はあるもののしっかり者の兄、そして病気持ちでありながらも家族の中心となり優しい母親。
そんな家族に囲まれて少女はとても幸せでした。ずっとずっとそんな幸せが続くのだと少女は信じていました。
けれど、現実は残酷で少女の母親は日に日に治せぬ病で弱っていき、少女の母親を慕う誰もが心配する日々。そこには娘である少女ももちろん含まれています。
弱っていく母親に、少女は消えないでと叫びました。たくさん、たくさん、誰よりも。
まだ幼く人の死を目の当たりにしたことがない少女にとって、命の灯火を失おうとしている母親が消えていくように感じたのでしょう。消えないでと何度も叫ぶ姿を母親の医師も、少女の家族も見ていることしかできませんでした。
手の尽くしようがなかった。その病はそれほどに難しい病気で少女の願いを叶えてあげられる人はいなかったのです。
そんな少女に対して母親は励まして、希望を与えたかったのでしょう。
『私はマリアがいてとても幸せだったわ……』
死ぬ直前そう少女に言ったのです。貴女がいるだけでみんなが幸せになる。だからそのまま健やかに………そう願いを込められたのだと誰もがそう思いました。
それは時々少女のいない時に、まるで娘自慢するように母親が話していたことだったからです。しかし、少女には正しく伝わりませんでした。
母親が亡くなった日、少女は言いました。
『わたしもおかあさまいてしあわせだったよ。わたし、みんなをしあわせにする。なくのはきょうだけ、みんながないてばかりにならないようにおかあさまのかわりに、わたしがいっぱいみんなをしあわせにする……っするからね』
これが子供の言うことだろうか。少女も母親が亡くなって悲しいだろうに、母親が亡くなって悲しむ父親と兄を見て母親の棺の前でそう誓ったのです。子供とは思えない真剣な表情で。
ただ子供らしく自分のために生きればいい、人の幸せまで無理に背負う必要はないなんて誰も言えませんでした。
そうして数ヵ月の間、少女は家族を励ますために笑顔で、みんなが笑うようにと色んなことをしていたようです。しかし、そんな頑張る少女にさらなる残酷なことが。
ある日少女が倒れました。少女の父親は顔を真っ青にして主治医を呼び、私は診察をしました。
その診察の結果……亡くなった母親と同じ治らない命を奪う病が、少女に発症していたのです。早期にわかったために延命治療は少女の母親よりも長く伸ばすことはできても、若くして亡くなるのはどうしようもないその病。
医師もその時点でまだ病を治す手立ては何一つ見つけられませんでした。
幼い少女には黙っておくべきか、風邪と誤魔化し薬を与えていれば延命治療事態は可能です。きっと少女の父親にとっても胸が痛い話とはなるけれど、話すのは父親だけでいいだろうと判断したときでした。
『だれにもいわないで』
幼い少女がそう言ったのは。
何も病について口に出していないのに、少女は何かを悟ったようでした。まるで私の考えを見透かしたかのような。
しかし、わかるはずがないと、話すのは少女の父親と相談してからの方がと考えた私は
『何を言っているんだい?ただの風邪だよ』
そう誤魔化そうとしました。母親が亡くなったばかりでいくら周りを幸せにするために笑顔でいたと聞いてはいても、精神面が心配だったからです。これ以上の不安を煽るべきではありませんでした。
なのに、少女は医師である私を信じようとはしません。
『おかあさまとおなじびょーきなのわかるよ』
まるで確信するかの物言いでした。少女はときどき勘が鋭いのだと母親の診察をしているときに聞いたりはしていたものの、こんなところでその勘を働かせるなんて……と少女に安心を与えられない自分が酷く情けなかったです。
何故そう思うのかと聞いたところで、もはや少女に嘘は通じないと思った私は診断したことをそのまま話しました。
『でもまだ時間はあります。治療法が見つかる可能性もゼロじゃありません』
それでも希望を失わないでほしいと願い、私はそう告げました。
『でもぜったいじゃないよね。だから、だれにもいわないで。わたしがしんだらみんなをかなしませちゃう。みんながわたしをきらいになったらかなしくならないかな?おかあさまきえちゃって、みんなないてる。わたしはしんだあとみんなにわらっててほしいよ』
未来あるべき子供が自分の死んだ後の事を考えるべきじゃない。そう言いたいのに言葉がでませんでした。
私は少女の母親を助けられなかった。絶対に助けるなんて無責任なことなど、例え相手が子供でも言えるはずがなかったのです。
真剣な表情で言う少女に言えるはずもありませんでした。
そんな少女には家族がいました。不器用で真面目だけど家族想いな父親と、臆病な一面はあるもののしっかり者の兄、そして病気持ちでありながらも家族の中心となり優しい母親。
そんな家族に囲まれて少女はとても幸せでした。ずっとずっとそんな幸せが続くのだと少女は信じていました。
けれど、現実は残酷で少女の母親は日に日に治せぬ病で弱っていき、少女の母親を慕う誰もが心配する日々。そこには娘である少女ももちろん含まれています。
弱っていく母親に、少女は消えないでと叫びました。たくさん、たくさん、誰よりも。
まだ幼く人の死を目の当たりにしたことがない少女にとって、命の灯火を失おうとしている母親が消えていくように感じたのでしょう。消えないでと何度も叫ぶ姿を母親の医師も、少女の家族も見ていることしかできませんでした。
手の尽くしようがなかった。その病はそれほどに難しい病気で少女の願いを叶えてあげられる人はいなかったのです。
そんな少女に対して母親は励まして、希望を与えたかったのでしょう。
『私はマリアがいてとても幸せだったわ……』
死ぬ直前そう少女に言ったのです。貴女がいるだけでみんなが幸せになる。だからそのまま健やかに………そう願いを込められたのだと誰もがそう思いました。
それは時々少女のいない時に、まるで娘自慢するように母親が話していたことだったからです。しかし、少女には正しく伝わりませんでした。
母親が亡くなった日、少女は言いました。
『わたしもおかあさまいてしあわせだったよ。わたし、みんなをしあわせにする。なくのはきょうだけ、みんながないてばかりにならないようにおかあさまのかわりに、わたしがいっぱいみんなをしあわせにする……っするからね』
これが子供の言うことだろうか。少女も母親が亡くなって悲しいだろうに、母親が亡くなって悲しむ父親と兄を見て母親の棺の前でそう誓ったのです。子供とは思えない真剣な表情で。
ただ子供らしく自分のために生きればいい、人の幸せまで無理に背負う必要はないなんて誰も言えませんでした。
そうして数ヵ月の間、少女は家族を励ますために笑顔で、みんなが笑うようにと色んなことをしていたようです。しかし、そんな頑張る少女にさらなる残酷なことが。
ある日少女が倒れました。少女の父親は顔を真っ青にして主治医を呼び、私は診察をしました。
その診察の結果……亡くなった母親と同じ治らない命を奪う病が、少女に発症していたのです。早期にわかったために延命治療は少女の母親よりも長く伸ばすことはできても、若くして亡くなるのはどうしようもないその病。
医師もその時点でまだ病を治す手立ては何一つ見つけられませんでした。
幼い少女には黙っておくべきか、風邪と誤魔化し薬を与えていれば延命治療事態は可能です。きっと少女の父親にとっても胸が痛い話とはなるけれど、話すのは父親だけでいいだろうと判断したときでした。
『だれにもいわないで』
幼い少女がそう言ったのは。
何も病について口に出していないのに、少女は何かを悟ったようでした。まるで私の考えを見透かしたかのような。
しかし、わかるはずがないと、話すのは少女の父親と相談してからの方がと考えた私は
『何を言っているんだい?ただの風邪だよ』
そう誤魔化そうとしました。母親が亡くなったばかりでいくら周りを幸せにするために笑顔でいたと聞いてはいても、精神面が心配だったからです。これ以上の不安を煽るべきではありませんでした。
なのに、少女は医師である私を信じようとはしません。
『おかあさまとおなじびょーきなのわかるよ』
まるで確信するかの物言いでした。少女はときどき勘が鋭いのだと母親の診察をしているときに聞いたりはしていたものの、こんなところでその勘を働かせるなんて……と少女に安心を与えられない自分が酷く情けなかったです。
何故そう思うのかと聞いたところで、もはや少女に嘘は通じないと思った私は診断したことをそのまま話しました。
『でもまだ時間はあります。治療法が見つかる可能性もゼロじゃありません』
それでも希望を失わないでほしいと願い、私はそう告げました。
『でもぜったいじゃないよね。だから、だれにもいわないで。わたしがしんだらみんなをかなしませちゃう。みんながわたしをきらいになったらかなしくならないかな?おかあさまきえちゃって、みんなないてる。わたしはしんだあとみんなにわらっててほしいよ』
未来あるべき子供が自分の死んだ後の事を考えるべきじゃない。そう言いたいのに言葉がでませんでした。
私は少女の母親を助けられなかった。絶対に助けるなんて無責任なことなど、例え相手が子供でも言えるはずがなかったのです。
真剣な表情で言う少女に言えるはずもありませんでした。
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