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そしてエミが魔力を発現してから数日、ある日からエミはだんだんと身長が縮み始めます。誰もがそれに気づかぬはずがないほどに縮み始めるエミに大丈夫なのかと誰もが聞きましたが答えは決まって
「大丈夫です!」
変わらぬ笑みと共に返されるだけ。魔女は大事にされる存在であれどその生態はいくら調べようとわかりません。だからこそ不可解な現象に誰もが不安を抱かずにはいられませんでした。
しかし、ある日そんな不安を抱く日々に驚く出来事がありました。ひとりのメイドから始まり、庭師が、執事が廊下を、庭を歩くルイ陛下の姿を見たのです。部屋に籠り窓から外を眺めるだけだったルイ陛下が。
目は虚ろで明るさこそ取り戻してはいませんが、部屋の外から出た事実だけで誰もが涙ぐむほどに喜びました。エミもまたみんなと喜び、祝いではルイ陛下は食べこそはしないものの食事の場にいるその事実が嬉しくて仕方ありません。
そしてそれから一ヶ月ほどでしょうか、ルイ陛下の歩く姿に見慣れて来た頃ルイ陛下が自ら食事をなさりました。しかもそれだけではありません。
「おい……し」
掠れながらも言葉を発したのです。もうだめかと思われたルイ陛下のその姿、光景に誰もが閉ざされた未来を開き始めました。エミもまた身長を縮めながらにこにことそれを祝福します。
そしてさらに一年後、ある朝ルイ陛下が笑顔を見せてみんなに挨拶をしました。
「おはよう!」
城内を歩き、食事を食べ、言葉を発しても変わらぬ表情にようやく心を取り戻したかのような笑顔と元気な声は昔の心が壊れる前のルイ陛下そのままです。祝いだ祝いだと誰もが幸せに包まれる中、そこにエミはいません。
「貴方に私の心をあげるね」
「え?」
ふと風に乗って聞こえたかのような言葉にルイ陛下が振り向きますが、そこには誰も居ませんでした。
「陛下どうかされましたか……?やはりまだご気分が……」
その様子に付き添っていた執事が心配そうな声をあげます。
「いや、気のせいみたいだ」
「陛下、やはりご気分が悪いのでは?」
「大丈夫だと……」
「お気づきでないので?涙が出ておられますよ?」
「な……え?」
ルイ陛下は指摘されて初めて気がつきました。自分が泣いている事実に。心はこんなにも温かく幸せに包まれた気分だと言うのに涙が出て止まらないことにルイ陛下はわけがわからなくなりました。
嬉し涙ではない、不思議と何かを悲しんでいる自分がいるのに何が悲しいのかわからないのです。
「おや……私も……っ何故でしょうねぇ」
「お前もか……っ」
「陛下……何故でしょう?私たちも涙が止まりません……」
指摘した執事が、その場にいた護衛が、掃除をしていた侍女が………誰もが涙を止められなくなりました。しかし、パニックにならないのはどこかで何故泣いているか理解しているからでしょうか。理由はわからないというのに、誰もが誰かを想って泣いていると認識しているのです。
「あなたは誰だ?」
その答えを知る人はもはやこの世界にはいなくなってしまったのでした。
~END~
あとがき
よくわからない感じに終わり申し訳ありません。一応終わりですがエミが亡くなった理由や何故みんながエミを忘れてしまったのかについての話がまだ続きますのでお願いします。
「大丈夫です!」
変わらぬ笑みと共に返されるだけ。魔女は大事にされる存在であれどその生態はいくら調べようとわかりません。だからこそ不可解な現象に誰もが不安を抱かずにはいられませんでした。
しかし、ある日そんな不安を抱く日々に驚く出来事がありました。ひとりのメイドから始まり、庭師が、執事が廊下を、庭を歩くルイ陛下の姿を見たのです。部屋に籠り窓から外を眺めるだけだったルイ陛下が。
目は虚ろで明るさこそ取り戻してはいませんが、部屋の外から出た事実だけで誰もが涙ぐむほどに喜びました。エミもまたみんなと喜び、祝いではルイ陛下は食べこそはしないものの食事の場にいるその事実が嬉しくて仕方ありません。
そしてそれから一ヶ月ほどでしょうか、ルイ陛下の歩く姿に見慣れて来た頃ルイ陛下が自ら食事をなさりました。しかもそれだけではありません。
「おい……し」
掠れながらも言葉を発したのです。もうだめかと思われたルイ陛下のその姿、光景に誰もが閉ざされた未来を開き始めました。エミもまた身長を縮めながらにこにことそれを祝福します。
そしてさらに一年後、ある朝ルイ陛下が笑顔を見せてみんなに挨拶をしました。
「おはよう!」
城内を歩き、食事を食べ、言葉を発しても変わらぬ表情にようやく心を取り戻したかのような笑顔と元気な声は昔の心が壊れる前のルイ陛下そのままです。祝いだ祝いだと誰もが幸せに包まれる中、そこにエミはいません。
「貴方に私の心をあげるね」
「え?」
ふと風に乗って聞こえたかのような言葉にルイ陛下が振り向きますが、そこには誰も居ませんでした。
「陛下どうかされましたか……?やはりまだご気分が……」
その様子に付き添っていた執事が心配そうな声をあげます。
「いや、気のせいみたいだ」
「陛下、やはりご気分が悪いのでは?」
「大丈夫だと……」
「お気づきでないので?涙が出ておられますよ?」
「な……え?」
ルイ陛下は指摘されて初めて気がつきました。自分が泣いている事実に。心はこんなにも温かく幸せに包まれた気分だと言うのに涙が出て止まらないことにルイ陛下はわけがわからなくなりました。
嬉し涙ではない、不思議と何かを悲しんでいる自分がいるのに何が悲しいのかわからないのです。
「おや……私も……っ何故でしょうねぇ」
「お前もか……っ」
「陛下……何故でしょう?私たちも涙が止まりません……」
指摘した執事が、その場にいた護衛が、掃除をしていた侍女が………誰もが涙を止められなくなりました。しかし、パニックにならないのはどこかで何故泣いているか理解しているからでしょうか。理由はわからないというのに、誰もが誰かを想って泣いていると認識しているのです。
「あなたは誰だ?」
その答えを知る人はもはやこの世界にはいなくなってしまったのでした。
~END~
あとがき
よくわからない感じに終わり申し訳ありません。一応終わりですがエミが亡くなった理由や何故みんながエミを忘れてしまったのかについての話がまだ続きますのでお願いします。
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