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2章

スライムに祀られました

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目を覚ませばそこは辺り一面からスライムを見下ろす景色でした。

「なにこれ」

その一言に尽きる。

ぷるんぷるんと震えるスライムたちが起きた俺に触手を伸ばし、色々貢ぎ物をくれる。これ、神様が俺用に集める薬草だ。

てっきり神様のところに連れてかれると思ったのに、これは祭壇?なんでそこに俺が?地面に寝かさないようにとスライムがベットにはなってくれているから、座ろうとぷにぷにとした感触が伝わるだけだ。

気のせいかスライムたちに拝まれている気がする。え?本当になにこれ?

「ね、ねぇ、神様知らない?」

取り合えず話しかけてみるけど、話せるスライムは当然いない。うん、神様がスライムとしておかしいんだよね。まず話せる魔物って神様以外知らないし。

スライムは縦にぷよんぷよんと動き始める。全員が全員、同じように。知ってるって言いたいのかな?

「神様どこにいるんだろ?」

触手で何か説明しようとしてくれているみたいなのはわかるけど、ごめん、全くわかんない。

まあ、スライムたちに害がないのは思った通りだし、この状況もやっぱり神様によるものなんだろうと理解した。

こうも考えている間にも、薬草以外の木の実やキノコなど色々捧げられていく。見渡す限りのスライムだから、色々取りに行っているだろうスライムは見当たらない。埋め尽くされ過ぎて見えないのだ。

寝る前に会ったスライムの大群はまだ可愛かったくらいにスライムに埋め尽くされた景色。ここ、本当どこ。何がどうなっている?

キノコを生で食べる気はないので、そのまま食べられる木の実を口に含む。甘くて美味しい。イチゴ味、みかん味、ぶどう味、小さな木の実は色こそ全部赤で、豆粒くらい小さく丸いのは同じなのに、味は違う。

どれも本来住んでた世界で食べてきた果物と同じ味に思う。多少果物と味が違うんじゃ?と聞かれても、料理人をしていたわけでも、特別な舌を持っているわけでもないので、わからない。

食べても食べても減らない木の実。いつまで捧げられるんだ、これ。お腹は満たされるには小さすぎる。まあ美味しいのでいくらでも食べられる分には満足だけど。

しばらくすれば俺を囲んでいたスライムが触手同士繋いで俺を一周するように回り出す。
なんかの儀式でもされている気分だけど、何もない。

踊りで接待みたいな感じだろうか?ぐるぐると俺を囲んで回るスライムたちはぽよんぽよんと跳ねながら動き、楽しそうで、見ている分には癒された。

害はないし、スライムたちも神様が何かしているのを教えてくれようとしたところから、神様に言われて楽しませてくれようとしているのかもしれない。

でも祭壇って、様子から見ても俺、祀られてる?神様、どう命令したらスライムたちに祀られるの?悪い気はしないけど、スライム以外、空しか見えない景色のスライムの量はやりすぎじゃ?

なんかもうスライムの神様にでもなった気分だ……。神様はスライムの神でもおかしくないけど、俺ただの人間ですよ?
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