断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

古堂 素央

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第三章 イベントは危険な香り

ヒロインとバトってみた

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 ハッとして立ち止まった。

 生徒たちの波の向こうに山田の瓶底眼鏡が見えた。
 しかもその腕にはユイナがぶら下がってるし。

「ハナコ様、どうかなさいましたか?」
「いいえ、なんでもないわ」

 急に引き返すのもマズいかな。
 今は移動教室に向かう途中だから、取り巻き令嬢たちに変に思われてしまうかも。

 それに公爵令嬢ハナコ・モッリとして、逃げ隠れするなんてちょっとプライドが許さない。

 未希からは山田をはじめ、生徒会のメンバーには近づくなって言われてるんだけどさ。

「ごきげんよう、シュン様」
「おおハナコ! 体調はもう問題ないか?」
「ええ、おかげ様ですっかり良くなりましたわ」

 美しい所作で山田に礼を取った。
 ハナコの記憶は残ってるから、こういったことはすっと体が動いてくれるんだよね。

「そうか、それはよろこばしいことだ。週末にハナコに会いに行けなくなるのは少々残念だが……」
「まぁ、シュン様ったらご冗談を」

 おほほほほ、とかぶせ気味に山田のセリフをさえぎった。
 毎週見舞いに来てたこと、勝手にみんなにバラしてんじゃねぇよ。

「シュン王子ぃ。そろそろ行かないとぉ次の授業に遅れちゃいますよぉ?」

 猫なで声を出して、ユイナが山田の腕をぐいっと引っ張った。
 周囲に気づかれない程度に、一瞬だけこちらをぎりっと睨んでくる。

(ふうん? そう来るんだ?)

 存在を無視されたことがそんなに気に入らなかったんかな。

 今回ハナコわたしが怪我をしたのは、そもそもユイナあんたを助けようとしたからでしょうが。

 で、実際ユイナはそれで階段を落ちずに済んだわけで。
 いくら魔法でわたしを防御してくれたと言っても、そこはまずユイナから礼があるべきだろう。

(ま、そんなふうに人ができてるなら、あんな騒動起こしたりはしないか)

 余裕たっぷりの態度で、ユイナににっこりと笑顔を向ける。

「あなた、ユイナ・ハセガーと言ったわね。先日はわたくしを助けてくれたそうね? ありがとう、心から礼を言うわ」

 高飛車たかびしゃになってしまったが、これはもうどうしようもない。
 公爵令嬢の立場で、男爵令嬢のユイナに礼の言葉をかけただけでも、周囲に驚かれる案件だ。

「えっ、あ、あの、いえ、ソレはわたしも当然のことをしたまでで……」
「そう、謙虚でなによりね。今後もその優秀な魔力を使って、シュン様のためにも生徒会でおはげみになって」

 ぷぷっ、ユイナの顔が面白いことになってる。
 こっちから礼を言われるとは、夢にも思ってなかったんだろうな。

「ではシュン様、わたくしはこれで失礼いたしますわ。みなさん、行きましょう」

 取り巻き令嬢を引き連れて、さっさと山田から離れて行った。

 こういったとき、山田はしつこく絡んできたりしない。
 あっちも王子の立場をきちんと分かってはいるんだろう。

 そのかわり、ふたりきりのときは遠慮のえの字もないけどねっ。

「まぁ何ですの、あの態度。平民上がりのいやしい身分のくせに」
「それにハナコ様を差し置いて、シュン王子に馴れ馴れしくしたりして。ほんとみっともないわ」
「その上、ハナコ様に助けていただいたのに、礼の一言もないだなんて」

 まずいなこれは。
 このままでは気を利かせた取り巻きが、ユイナに何か嫌がらせをしかねない。

 以前のハナコなら「あんな、どこかでみっともなく転べばいいのに」とか、わざとらしくそんな独り言を呟いただろう。

 でも陰でイビりでもしたら、ユイナの思う壺になりそうだ。
 直接わたしが手を下さなくっても、ハナコの指示でやられたと山田に泣きつくのが目に見えている。

「いいのよ、みなさん。あのがわたくしを救ってくれたのは事実。そんなふうに言うものではないわ」

 ハナコらしくないセリフに、みんな戸惑ってるみたい。
 言葉の裏を読み取ろうとしてるのかな。
 いや、お願いだからそのままの意味で受け取ってっ。

「わたくし本当に心から感謝していてよ? それにあのがシュン様と一緒にいるのは、次が魔法学の授業だからでしょう?」

 この国に魔法があると言っても、それぞれが持つ魔力はピンキリだ。
 山田やユイナみたいに優秀な者は、魔法学の特別なカリキュラムが組まれている。

 未希ことジュリエッタも、今ごろその授業に向かっているはずだ。
 ジュリエッタは特に回復系の魔法に長けていて、怪我した生徒をよく治してあげているみたいだった。

(おかげでひそかにファンクラブが作られてるって話だし……)

 未希ってば、昔からソトヅラだけはいいんだよね。
 あの仮面の下の毒舌を知ってるのは、ごく限られた身内だけだ。

「ハナコ様がそうおっしゃるのなら……」
「さすがはハナコ様、なんて寛大なお心をお持ちなのかしら!」
「なんてことはなくてよ。さ、この話はもうおしまい。遅れてはいけないわ、もう参りましょう」

 っていうことがあってね、と放課後未希に報告したんだけど。

「あんたバカ?」

 第一声がそれ!?

「わざわざユイナとやり合いに行くなんて、自滅しに行くようなモノじゃない」
「だって公爵令嬢としてのプライドが……」
「そんなもん忘れ物したとでも言って引き返せば済む話でしょう?」
「はっ、その手があったか」
「まったく、先が思いやられるわ。ギロチンとプライド、どっちが大事なの?」

 いや、どっちもいらないっす。

「とにかく、わたしもあんたに付きっきりでいられるわけじゃないんだから、ちゃんと考えて行動してよね」
「ハイ、ワカリマシタ」

 うう、未希ちゃんコワイ。

「でもさ、やっぱりユイナに話持ちかけられないかな……」
「でも裏をかけるのは、ハナコにもゲームの記憶があるって向こうが知らないうちだけよ」
「それはそうなんだけどさ、お互い妥協して最善のルートを進めばいいんじゃない? ユイナにとっても悪い話じゃないと思うけど」
「あんた、あの子の性格、覚えてないの?」
「……ソウデシタ」

 長谷川ゆいなはことあるごとに、華子わたしに突っかかってきてたっけ。
 勝手にライバル心を燃やしてるって感じ?
 協定を結んだところで、そんなユイナがいつ裏切ってくるかは分からない。

「ま、そうしようにも現状じゃ難しそうよ。あの子いつ見かけても、誰かしら攻略対象と一緒にいるから」
「未希、ちゃんと探り入れてくれてたんだ!」
「まぁね。あんたが休学中は時間があったから」

 さすがは未希!
 口は悪いけど、なんて親友思いのいい子なの!!

「誰かさんの金魚のフンをしないで済んでたしね」

 ぎゃっ、見事なカウンター……!

 わたしの感動を返してっ。
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