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第三章 イベントは危険な香り
ダンジュウロウと図書館と
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人もまばらな廊下を進む。目指しているのは放課後の図書館だ。
以前のハナコならまず近寄らない場所なので、取り巻き令嬢は連れずに毎回こっそり来てる。
前はね、放課後に誰かしら捕まえて好き放題やってたんだ。
用事を言いつけたり、おしゃべりに付き合わせたり。それこそ他人の都合なんてお構いなしって感じでさ。
未希に言われたんだけど、ハナコのお守りは持ち回りでローテ組んでたんだって。
気を遣ってよいしょして、取り巻きのみんなも毎日たいへんだったろうなぁ。
そんな接待強いるだなんて、我ながらブラック企業かよ。
今は日本海溝より深く反省してる。これからはスクールライフ謳歌して!
(さぁて、今日はどんな本に巡り合えるかな)
図書館は学園の外れにあるから、そこそこ歩かなきゃいけないのが難点だけど。
紙のにおいとか、ちょっと乾燥気味なとことか、動かないしんとした空気感とか。
あの独特の雰囲気が昔から好きなんだよね。人が少ないので落ち着けるしさ。
(げげっ、山田)
ちょうど図書館から出てくる姿が見えて、気分が一気にダダ下がりした。しかも攻略対象をひとり引き連れてるし。
あれは副会長のダンジュウロウ・ササーキだな。
ユイナがいないのだけは不幸中の幸いかもだけど。
とりあえず柱の影にでも隠れてやり過ごすか。
てか、いま山田の眼鏡がキラっと光ったような?
ぎゃっ、なんかロックオンされたっぽい!
「ハナコ!」
なんで一目散に駆け寄って来るかな。
仮にもあんた、一国の王子でしょ?
「こんな外れにひとりで来たのか?」
「みなさんそれぞれ用事がありますもの」
興味のない場所に付き合わせたらかわいそうじゃん。これからはみんなにも放課後をエンジョイしてもらわなきゃ。
「すぐ帰りますから問題ありませんわ」
「駄目だ。ハナコひとりでは危険すぎる」
「どうしてですの? 学園内のセキュリティは万全でございましょう?」
いたるところに結界防御魔法が張り巡らされているし、そもそも図書館にはあんま人いないし。
「王子、そろそろ行きませんと」
「ううむ、だがハナコひとり置いていくのは……」
おお、ダンジュウロウ君、ナイスアシスト。
もう一押し、山田を連れてさっさと行ってくれたまえ。
「わたくしなら大丈夫ですわ。何度もひとりで来ておりますし、今まで特に何事もありませんでしたから」
「何度もひとりで? たまたまならまだしも……。よし、今後ここに来るときは必ずわたしが同伴しよう」
「そんな、お忙しいシュン様のお時間をいただくなんて……」
ぐあっ、余計な口滑らせたっ。
「ハナコのためならいくらでも時間を作る。何も心配するな」
「そのようなわけには……」
ちょっと、ダンジュウロウ君なんとかしてよ。副会長は生徒会長の補佐役でしょ?
そんな感じに目線だけで助けを求めたら、なんか邪魔者を見る目つきを返されたんですけど。
やだ、あからさまに大きなため息ついちゃったりなんかして。
ダンジュウロウ、感じわるっ。
「仕方がありませんね。今日のところはハナコ嬢の付き添いは俺が引き受けましょう」
なによその言い方。犬の世話頼まれたみたいにさ。
お前なんか桃太郎のお供で十分じゃ。
「王子は早くお戻りください」
「む、そうか。くれぐれもハナコを頼んだぞ」
数歩進んでは山田が振り返るので、仕方ないからそのたびに手を振り返した。
まるでだるまさんが転んだの逆バージョン。
「では行こうか、ハナコ嬢」
「お付き合いくださらなくても結構よ。シュン様にはよくしてもらったと伝えておきますから」
「いや、王子との約束だ」
そういや、ダンジュウロウって優等生キャラだったっけ。追い払えないならさっさと用事を済ませるしかないか。
攻略対象と一緒だったなんて知れたら、また未希にどやされるんだろうなぁ。
はぁ、クワバラクワバラ。
どうか大きな雷が落ちませんように。
図書館に入って、お気に入りの一角を目指す。すぐによさげな本が見つかるといいんだけど。
本棚を物色している間、ダンジュウロウはそばを離れずずっと近くにいた。
わたしが移動すると、ダンジュウロウもついてくる。ほんとに生真面目な性格なんだな。
ダンジュウロウってわたしと同じ公爵家の人間なんだけど、愛人の子供で家では肩身の狭い思いをしているみたい。
兄とは差別されて育ってきて、どんなに頑張っても無視されたりとかいろいろ苦労してきたって話。
んで反骨心で勉強頑張って首席で入学するはずが、王子の山田にあっさり敗北。
山田が生まれつきの天才なら、ダンジュウロウは努力の天才って感じでね。
王子のことは尊敬してるんだけど、万年二位の越えられない壁に苦悩していたり。
あ、これ未希情報のゲーム設定ね。
そんなコンプレックスありまくりの心の隙間を、ヒロインが埋めていくっていうのがダンジュウロウルートなんだけど。
このルートの悪役はダンジュウロウ兄らしい。
てなわけで、わたしはお呼びじゃないんだ。だから今も余裕でいられるってわけ。
(あっ、あの本いいかも)
気になるタイトルを見つけ手を伸ばす。
でも上の方にあってもうひと息届かなかった。
移動はしごがついてるんだけど、長く並ぶ本棚のはるか向こうに鎮座してる。あれをここまで持ってくるだけでも、重労働って感じだ。
魔力使えば動かせるけど、なにせわたしはティッシュ一枚が限界だからねっ。
(仕方ない、頑張って背伸びするか)
うぬっ、指先には引っかかるのに、ぴっちり詰まってるから上手く引き出せないぞ。
うぬぬぬぬってやってたら、後ろからひょいと本が引き出された。
「これか?」
「ダンジュウロウ様、ありがとうございます」
お、気が利くね。
さっそく中身を確認っと。あ、これ当たりかも。挿絵もあらすじもわたし好み。
学園の図書館とは言え、ありとあらゆるジャンルの本が置いてあるんだ。
で、今選んだのはいわゆるロマンス小説ってやつ。いつも週末用に数冊選んで、休日にゆっくり読むのが最近の過ごし方。
「ハナコ嬢でもそんな可愛らしいものを読むんだな」
ん? いま鼻で笑ったな。やっぱ感じわるっ。
「わたくしが何を読もうとダンジュウロウ様には関係ありませんわ」
「いや、すまない。少し意外だったもので」
意外ってどういう意味よ。まぁ、以前のハナコは本なんて興味なかったからね。
「そう言うダンジュウロウ様は、普段どのようなものをお読みになりますの?」
何気に話を振ってみる。ちょうど違うジャンルも開拓してみたいって思ってたところ。
「本か……最近では魔法学か経済学がほとんどだな」
「実用書ばかりですのね」
「空想に耽っていても、現実は何も変わらないからな」
「まぁ、努力家でいらっしゃいますこと」
「努力家か……」
あれ、なんか遠い目してるし。嫌味のつもりで言ったんだけど。
ああそっか、ダンジュウロウはもう十分努力してるんだっけ。
どんなに頑張っても家族に認めてもらえなくて。
全力を尽くしても天才には勝てなくて。
そっか、そっか、そうだよね。
君も苦労人なんだね。心中お察しするよ。
でも、さ。
「他人の評価なんて、気にするだけ時間の無駄ですわ」
それに振り回されると、どんどん苦しくなってくんだよね。
もちろんわたしだって褒められればうれしくはなるけど。
「越えるべきは昨日の自分だけ。そうシンプルに考えていた方が、人生楽に生きられるというものですわ」
「越えるべきは昨日の自分……」
「ええ。それに人間、同じことで悩んでいるように見えても、ちゃんと階段を上っているんですって」
いつか誰かがそんなこと言ってたのを聞いたっけ。
「その階段は螺旋状になっていて、上から見ると同じ位置にいるように思えても、横から見るときちんと上へと上がっているそうですわ」
はっ、何わたし語ってんの!? 急になんの脈略もないこと言っちゃってるしっ。
「おほほほっ、それに空想の世界に浸るのも良いものですわよ。読んでいる間は楽しい時間を過ごせるんですもの。小説ってほんとにスバラシイですわぁ」
い、今のでごまかされてくれたよね?
わたし、君の内情とかまったく知らないから安心して!
結局、手にした一冊だけ借りて図書館を出た。
もうここでいいって言ったのに、ダンジュウロウってば迎えの馬車に乗り込むまで付き合ってくれたんだよね。
ほんと、真面目なヤツだ。
でもなんだか生温かい目で見送られたのが、ちょっとだけ気になったんだけど……。
「って言うことがあってね、未希はどう思う?」
「……あんた、やっぱりバカでしょう?」
「なしてっ!?」
刺すような冷たい視線に、涙目で抗議した。
「だってダンジュウロウルートの悪役はダンジュウロウ兄なんでしょ? そりゃ攻略対象に迂闊に近寄ったのはマズかったかもだけど……」
「そういうこと言ってんじゃないわ。なんであんたがフラグ立ててんのって言ってるの」
「フラグ? 一体なんの?」
「ダンジュウロウとのよ。その図書館イベント、本来ならヒロイン相手に起きるヤツだから」
「何それっ、そんなイベントあるなんて聞いてない!」
未希から聞いたイベントは、頑張ってすべて頭に入れてあるし。
「そりゃそうよ、言ってないもの。ヒロインのイベントなんてね、攻略対象ごとに何ルートもあんのよ? そんなのいちいちリストアップするなんて、面倒くさくてできるわけないじゃない」
うう、ごもっとも。
未希にはハナコ断罪関連の重要イベントのみ教えてもらったんだっけ。
「まったく。それでなくてもゲーム内容から外れたことがいっぱい起きてるってのに。これ以上状況ややこしくしないでくれる?」
「アイ、スミマセンデシタ」
確かにゲームに忠実な方が、断罪ルートを回避しやすいよね。華子、反省。
「とにかく華子は攻略対象と接触禁止。いいわね?」
「うん……」
わたしもそうしたいのは山々なんだけどさ。
「でも向こうから勝手にやって来ると言うかなんというか……」
「言い訳しない!」
「ハイっ、未希パイセンっ」
トホホ、本気で気をつけないと、次は未希に断罪されそうだよ。
しかし数日後、わたしはまた別の対象と次々にフラグを立てることになる。
そんなこと、この時点では知りようもなかったけどねっ。
以前のハナコならまず近寄らない場所なので、取り巻き令嬢は連れずに毎回こっそり来てる。
前はね、放課後に誰かしら捕まえて好き放題やってたんだ。
用事を言いつけたり、おしゃべりに付き合わせたり。それこそ他人の都合なんてお構いなしって感じでさ。
未希に言われたんだけど、ハナコのお守りは持ち回りでローテ組んでたんだって。
気を遣ってよいしょして、取り巻きのみんなも毎日たいへんだったろうなぁ。
そんな接待強いるだなんて、我ながらブラック企業かよ。
今は日本海溝より深く反省してる。これからはスクールライフ謳歌して!
(さぁて、今日はどんな本に巡り合えるかな)
図書館は学園の外れにあるから、そこそこ歩かなきゃいけないのが難点だけど。
紙のにおいとか、ちょっと乾燥気味なとことか、動かないしんとした空気感とか。
あの独特の雰囲気が昔から好きなんだよね。人が少ないので落ち着けるしさ。
(げげっ、山田)
ちょうど図書館から出てくる姿が見えて、気分が一気にダダ下がりした。しかも攻略対象をひとり引き連れてるし。
あれは副会長のダンジュウロウ・ササーキだな。
ユイナがいないのだけは不幸中の幸いかもだけど。
とりあえず柱の影にでも隠れてやり過ごすか。
てか、いま山田の眼鏡がキラっと光ったような?
ぎゃっ、なんかロックオンされたっぽい!
「ハナコ!」
なんで一目散に駆け寄って来るかな。
仮にもあんた、一国の王子でしょ?
「こんな外れにひとりで来たのか?」
「みなさんそれぞれ用事がありますもの」
興味のない場所に付き合わせたらかわいそうじゃん。これからはみんなにも放課後をエンジョイしてもらわなきゃ。
「すぐ帰りますから問題ありませんわ」
「駄目だ。ハナコひとりでは危険すぎる」
「どうしてですの? 学園内のセキュリティは万全でございましょう?」
いたるところに結界防御魔法が張り巡らされているし、そもそも図書館にはあんま人いないし。
「王子、そろそろ行きませんと」
「ううむ、だがハナコひとり置いていくのは……」
おお、ダンジュウロウ君、ナイスアシスト。
もう一押し、山田を連れてさっさと行ってくれたまえ。
「わたくしなら大丈夫ですわ。何度もひとりで来ておりますし、今まで特に何事もありませんでしたから」
「何度もひとりで? たまたまならまだしも……。よし、今後ここに来るときは必ずわたしが同伴しよう」
「そんな、お忙しいシュン様のお時間をいただくなんて……」
ぐあっ、余計な口滑らせたっ。
「ハナコのためならいくらでも時間を作る。何も心配するな」
「そのようなわけには……」
ちょっと、ダンジュウロウ君なんとかしてよ。副会長は生徒会長の補佐役でしょ?
そんな感じに目線だけで助けを求めたら、なんか邪魔者を見る目つきを返されたんですけど。
やだ、あからさまに大きなため息ついちゃったりなんかして。
ダンジュウロウ、感じわるっ。
「仕方がありませんね。今日のところはハナコ嬢の付き添いは俺が引き受けましょう」
なによその言い方。犬の世話頼まれたみたいにさ。
お前なんか桃太郎のお供で十分じゃ。
「王子は早くお戻りください」
「む、そうか。くれぐれもハナコを頼んだぞ」
数歩進んでは山田が振り返るので、仕方ないからそのたびに手を振り返した。
まるでだるまさんが転んだの逆バージョン。
「では行こうか、ハナコ嬢」
「お付き合いくださらなくても結構よ。シュン様にはよくしてもらったと伝えておきますから」
「いや、王子との約束だ」
そういや、ダンジュウロウって優等生キャラだったっけ。追い払えないならさっさと用事を済ませるしかないか。
攻略対象と一緒だったなんて知れたら、また未希にどやされるんだろうなぁ。
はぁ、クワバラクワバラ。
どうか大きな雷が落ちませんように。
図書館に入って、お気に入りの一角を目指す。すぐによさげな本が見つかるといいんだけど。
本棚を物色している間、ダンジュウロウはそばを離れずずっと近くにいた。
わたしが移動すると、ダンジュウロウもついてくる。ほんとに生真面目な性格なんだな。
ダンジュウロウってわたしと同じ公爵家の人間なんだけど、愛人の子供で家では肩身の狭い思いをしているみたい。
兄とは差別されて育ってきて、どんなに頑張っても無視されたりとかいろいろ苦労してきたって話。
んで反骨心で勉強頑張って首席で入学するはずが、王子の山田にあっさり敗北。
山田が生まれつきの天才なら、ダンジュウロウは努力の天才って感じでね。
王子のことは尊敬してるんだけど、万年二位の越えられない壁に苦悩していたり。
あ、これ未希情報のゲーム設定ね。
そんなコンプレックスありまくりの心の隙間を、ヒロインが埋めていくっていうのがダンジュウロウルートなんだけど。
このルートの悪役はダンジュウロウ兄らしい。
てなわけで、わたしはお呼びじゃないんだ。だから今も余裕でいられるってわけ。
(あっ、あの本いいかも)
気になるタイトルを見つけ手を伸ばす。
でも上の方にあってもうひと息届かなかった。
移動はしごがついてるんだけど、長く並ぶ本棚のはるか向こうに鎮座してる。あれをここまで持ってくるだけでも、重労働って感じだ。
魔力使えば動かせるけど、なにせわたしはティッシュ一枚が限界だからねっ。
(仕方ない、頑張って背伸びするか)
うぬっ、指先には引っかかるのに、ぴっちり詰まってるから上手く引き出せないぞ。
うぬぬぬぬってやってたら、後ろからひょいと本が引き出された。
「これか?」
「ダンジュウロウ様、ありがとうございます」
お、気が利くね。
さっそく中身を確認っと。あ、これ当たりかも。挿絵もあらすじもわたし好み。
学園の図書館とは言え、ありとあらゆるジャンルの本が置いてあるんだ。
で、今選んだのはいわゆるロマンス小説ってやつ。いつも週末用に数冊選んで、休日にゆっくり読むのが最近の過ごし方。
「ハナコ嬢でもそんな可愛らしいものを読むんだな」
ん? いま鼻で笑ったな。やっぱ感じわるっ。
「わたくしが何を読もうとダンジュウロウ様には関係ありませんわ」
「いや、すまない。少し意外だったもので」
意外ってどういう意味よ。まぁ、以前のハナコは本なんて興味なかったからね。
「そう言うダンジュウロウ様は、普段どのようなものをお読みになりますの?」
何気に話を振ってみる。ちょうど違うジャンルも開拓してみたいって思ってたところ。
「本か……最近では魔法学か経済学がほとんどだな」
「実用書ばかりですのね」
「空想に耽っていても、現実は何も変わらないからな」
「まぁ、努力家でいらっしゃいますこと」
「努力家か……」
あれ、なんか遠い目してるし。嫌味のつもりで言ったんだけど。
ああそっか、ダンジュウロウはもう十分努力してるんだっけ。
どんなに頑張っても家族に認めてもらえなくて。
全力を尽くしても天才には勝てなくて。
そっか、そっか、そうだよね。
君も苦労人なんだね。心中お察しするよ。
でも、さ。
「他人の評価なんて、気にするだけ時間の無駄ですわ」
それに振り回されると、どんどん苦しくなってくんだよね。
もちろんわたしだって褒められればうれしくはなるけど。
「越えるべきは昨日の自分だけ。そうシンプルに考えていた方が、人生楽に生きられるというものですわ」
「越えるべきは昨日の自分……」
「ええ。それに人間、同じことで悩んでいるように見えても、ちゃんと階段を上っているんですって」
いつか誰かがそんなこと言ってたのを聞いたっけ。
「その階段は螺旋状になっていて、上から見ると同じ位置にいるように思えても、横から見るときちんと上へと上がっているそうですわ」
はっ、何わたし語ってんの!? 急になんの脈略もないこと言っちゃってるしっ。
「おほほほっ、それに空想の世界に浸るのも良いものですわよ。読んでいる間は楽しい時間を過ごせるんですもの。小説ってほんとにスバラシイですわぁ」
い、今のでごまかされてくれたよね?
わたし、君の内情とかまったく知らないから安心して!
結局、手にした一冊だけ借りて図書館を出た。
もうここでいいって言ったのに、ダンジュウロウってば迎えの馬車に乗り込むまで付き合ってくれたんだよね。
ほんと、真面目なヤツだ。
でもなんだか生温かい目で見送られたのが、ちょっとだけ気になったんだけど……。
「って言うことがあってね、未希はどう思う?」
「……あんた、やっぱりバカでしょう?」
「なしてっ!?」
刺すような冷たい視線に、涙目で抗議した。
「だってダンジュウロウルートの悪役はダンジュウロウ兄なんでしょ? そりゃ攻略対象に迂闊に近寄ったのはマズかったかもだけど……」
「そういうこと言ってんじゃないわ。なんであんたがフラグ立ててんのって言ってるの」
「フラグ? 一体なんの?」
「ダンジュウロウとのよ。その図書館イベント、本来ならヒロイン相手に起きるヤツだから」
「何それっ、そんなイベントあるなんて聞いてない!」
未希から聞いたイベントは、頑張ってすべて頭に入れてあるし。
「そりゃそうよ、言ってないもの。ヒロインのイベントなんてね、攻略対象ごとに何ルートもあんのよ? そんなのいちいちリストアップするなんて、面倒くさくてできるわけないじゃない」
うう、ごもっとも。
未希にはハナコ断罪関連の重要イベントのみ教えてもらったんだっけ。
「まったく。それでなくてもゲーム内容から外れたことがいっぱい起きてるってのに。これ以上状況ややこしくしないでくれる?」
「アイ、スミマセンデシタ」
確かにゲームに忠実な方が、断罪ルートを回避しやすいよね。華子、反省。
「とにかく華子は攻略対象と接触禁止。いいわね?」
「うん……」
わたしもそうしたいのは山々なんだけどさ。
「でも向こうから勝手にやって来ると言うかなんというか……」
「言い訳しない!」
「ハイっ、未希パイセンっ」
トホホ、本気で気をつけないと、次は未希に断罪されそうだよ。
しかし数日後、わたしはまた別の対象と次々にフラグを立てることになる。
そんなこと、この時点では知りようもなかったけどねっ。
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