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第四章 その王子、瓶底眼鏡につき
初めての悪役令嬢
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あっという間にイベント当日。
で、いま雪山のロッジに到着したところ。
(にしてもさっむ)
ラウンジの暖炉の前に陣取って、凍える指先を温めた。
「ハナコ様、お寒いですか?」
「姉上は昔から寒いの苦手だもんね。はい、コレ渡しとく」
健太が差し出してきたのは魔石カイロだ。魔力で一定時間あったかくなる便利アイテム。
と言っても、わたしの弱い魔力じゃ温めることはできないんだけど。
「冷めたら言って。また魔力込めるから」
「ケンタ様、そのときはわたくしもお願いしてよろしいですか?」
「もちろんだよ、ジュリエッタ嬢」
魔力には火とか水とか属性がいろいろあって、人によって得意分野があるんだ。未希は癒し系の光属性が強いけど、火を扱うのは苦手みたい。
「お? なんだハナコ、寒がりなのか? だったら俺のも使えよ」
「そう言うことならば俺の分も渡しておこう」
「あら、ありがとう。ふたりとも助かりますわ」
マサトとダンジュウロウまで魔石を差し出してくる。ポケットサイズだから、遠慮なく受け取っとこっと。
「む、魔石カイロか。あいにくわたしは携帯していない。代わりにこの手で温めてやろう」
「いえ、シュン様、もう十分温まりましたから……」
って言ってるだろうが、手を取って撫でさするなっ。
ってか、いつの間にか生徒会メンバーに囲まれてるし。
(ユイナはいないか……)
自分、ちょっとほっとしてる。それがなんだか悔しんだけど。
ユイナが王子ルートに入った今、これから好感度上げイベントが目白押しで起こるらしい。
中でも今回メインとなるのが遭難イベントだ。
いなくなったヒロインを王子が探しに行って、吹雪で閉じ込められたふたりが一晩を共にするって筋書き。
で、わたしにはユイナを誘い出すっていう大事な役割があるわけなんだけど。
これって悪役令嬢がヒロインを陥れる策略だから、やりたくないって言うのが本当のところ。
でもそうも言ってらんない。ユイナと山田の距離を近づけるための重要イベントだし。
悪役令嬢の初仕事ってことで、ここはワキしめてやり切らなくちゃ。
「な、ハナコ、魔石冷めたら真っ先に俺に言うんだぞ?」
「いえマサト先輩、俺の姉ですから自分がやります」
「いや、それなら俺が適任だろう。火の魔力は得意中の得意だからな」
考え込んでたら、周りでバトル発生してるし。
健太はともかくとして、マサトとダンジュウロウの好感度が上がりっぱなしなのがナゾすぎる。
あ、なんだか未希の視線が冷ややかなんですけど。
まさかこれもヒロインイベントだったりして?
「すまないハナコ……わたしにはハナコの魔石カイロをあたためてやることができないんだ……」
声を震わせる山田は、まるで絶望のフチに立ってるかのよう。魔石ひとつで大げさなやつ。
ってか、魔力最強と謳われる山田にも苦手分野はあるんだな。魔力ヨワヨワな立場としては、ちょっと親しみ湧いちゃうかも。
なんて思ってたら、マサトと健太がやけに納得してうんうん頷いてる。
ていうか、君たちが共感すべきとこ、耳かき一杯分もないからね?
「シュン王子の魔力じゃ魔石がショートしちゃうもんな」
「下手すると粉々に砕けますしね」
「うむ、今後の課題は魔力の調整技術だな」
って、理由はソレなんかいっ。
「魔石が渡せない代わりに、せめて部屋をもう少し暖めておこう」
言いながら山田が暖炉に手をかざす。
(ってか、ファイヤぁ―――――っ!)
いきなり炎が噴き出して、目の前を火の粉が飛び散った。
ま、前髪、焦げるかと思ったじゃんっ。
「ハナコのために、このくらいのことしかできない自分が口惜しいな」
「おほほ、さすがシュン様。やっぱりわたくしなど、近寄るのも恐れ多いお方ですわ」
「何を言う。ハナコならばもっともっと、もっっっっっと、近寄っていいに決まっているだろう」
だから、っ、が多いんだってばっ。
いや、今は耐えるんだ華子。この雪山イベントが終わるころには、山田はユイナにメロメロになってるハズ。
ってか、そのユイナはどこ行ったんだ?
「シュン王子、次の予定が差し迫っています。そろそろ準備に取りかかりませんと」
ダンジュウロウが手帳を広げてスケジュールを確認してる。そうやってると副会長って言うより、優秀な秘書って感じだな。
「うむ、次はスキーの時間だったか?」
「おっしゃる通りです。みんなも着替えたらゲレンデに集合してくれ」
お、とうとう始まったな、雪山イベント。
当然、ゲレンデでもイベントが待っているわけで。
『きゃ~、王子、転んじゃう~っ!』
『ふっ、しょうがないやつだな。わたしが手取り足取り教えてやろう』
的な、定番の密着イベントだ。
「きゃーっ、ソコおどきになって! わたくし転びますわっ」
な、なんでわたしがすっ転んでるんだ!?
ていうか、前世ではスキーもスノボも得意だったのに。ハナコの運動神経、なさすぎでしょ。
「いたた、ですわ……」
見事に雪の壁に突っ込んで、やっとの思いで体を起こした。
む、スキー板ついてると、うまく立ち上がれないぞ。何気にハナコ、体もカタすぎなんじゃ。
遠くから誰かがスノボで近づいてきた。颯爽と助け起こされて、腕にぎゅっと抱きしめられる。
(やだ、長身イケメン!?)
華子、恋の予感!
白い歯をきらりと光らせて、そのイケメンが黒いゴーグルを押し上げた。
「大丈夫か、ハナコ。安心するといい。このわたしが支えてやるからふたりきりで練習しよう」
ってか、山田かよっ。
わたしの大事なトキメキを返してっ。
くそぉう、お前なんか瓶底眼鏡の形のまま、一生雪焼けが残ってしまえっ。
で、いま雪山のロッジに到着したところ。
(にしてもさっむ)
ラウンジの暖炉の前に陣取って、凍える指先を温めた。
「ハナコ様、お寒いですか?」
「姉上は昔から寒いの苦手だもんね。はい、コレ渡しとく」
健太が差し出してきたのは魔石カイロだ。魔力で一定時間あったかくなる便利アイテム。
と言っても、わたしの弱い魔力じゃ温めることはできないんだけど。
「冷めたら言って。また魔力込めるから」
「ケンタ様、そのときはわたくしもお願いしてよろしいですか?」
「もちろんだよ、ジュリエッタ嬢」
魔力には火とか水とか属性がいろいろあって、人によって得意分野があるんだ。未希は癒し系の光属性が強いけど、火を扱うのは苦手みたい。
「お? なんだハナコ、寒がりなのか? だったら俺のも使えよ」
「そう言うことならば俺の分も渡しておこう」
「あら、ありがとう。ふたりとも助かりますわ」
マサトとダンジュウロウまで魔石を差し出してくる。ポケットサイズだから、遠慮なく受け取っとこっと。
「む、魔石カイロか。あいにくわたしは携帯していない。代わりにこの手で温めてやろう」
「いえ、シュン様、もう十分温まりましたから……」
って言ってるだろうが、手を取って撫でさするなっ。
ってか、いつの間にか生徒会メンバーに囲まれてるし。
(ユイナはいないか……)
自分、ちょっとほっとしてる。それがなんだか悔しんだけど。
ユイナが王子ルートに入った今、これから好感度上げイベントが目白押しで起こるらしい。
中でも今回メインとなるのが遭難イベントだ。
いなくなったヒロインを王子が探しに行って、吹雪で閉じ込められたふたりが一晩を共にするって筋書き。
で、わたしにはユイナを誘い出すっていう大事な役割があるわけなんだけど。
これって悪役令嬢がヒロインを陥れる策略だから、やりたくないって言うのが本当のところ。
でもそうも言ってらんない。ユイナと山田の距離を近づけるための重要イベントだし。
悪役令嬢の初仕事ってことで、ここはワキしめてやり切らなくちゃ。
「な、ハナコ、魔石冷めたら真っ先に俺に言うんだぞ?」
「いえマサト先輩、俺の姉ですから自分がやります」
「いや、それなら俺が適任だろう。火の魔力は得意中の得意だからな」
考え込んでたら、周りでバトル発生してるし。
健太はともかくとして、マサトとダンジュウロウの好感度が上がりっぱなしなのがナゾすぎる。
あ、なんだか未希の視線が冷ややかなんですけど。
まさかこれもヒロインイベントだったりして?
「すまないハナコ……わたしにはハナコの魔石カイロをあたためてやることができないんだ……」
声を震わせる山田は、まるで絶望のフチに立ってるかのよう。魔石ひとつで大げさなやつ。
ってか、魔力最強と謳われる山田にも苦手分野はあるんだな。魔力ヨワヨワな立場としては、ちょっと親しみ湧いちゃうかも。
なんて思ってたら、マサトと健太がやけに納得してうんうん頷いてる。
ていうか、君たちが共感すべきとこ、耳かき一杯分もないからね?
「シュン王子の魔力じゃ魔石がショートしちゃうもんな」
「下手すると粉々に砕けますしね」
「うむ、今後の課題は魔力の調整技術だな」
って、理由はソレなんかいっ。
「魔石が渡せない代わりに、せめて部屋をもう少し暖めておこう」
言いながら山田が暖炉に手をかざす。
(ってか、ファイヤぁ―――――っ!)
いきなり炎が噴き出して、目の前を火の粉が飛び散った。
ま、前髪、焦げるかと思ったじゃんっ。
「ハナコのために、このくらいのことしかできない自分が口惜しいな」
「おほほ、さすがシュン様。やっぱりわたくしなど、近寄るのも恐れ多いお方ですわ」
「何を言う。ハナコならばもっともっと、もっっっっっと、近寄っていいに決まっているだろう」
だから、っ、が多いんだってばっ。
いや、今は耐えるんだ華子。この雪山イベントが終わるころには、山田はユイナにメロメロになってるハズ。
ってか、そのユイナはどこ行ったんだ?
「シュン王子、次の予定が差し迫っています。そろそろ準備に取りかかりませんと」
ダンジュウロウが手帳を広げてスケジュールを確認してる。そうやってると副会長って言うより、優秀な秘書って感じだな。
「うむ、次はスキーの時間だったか?」
「おっしゃる通りです。みんなも着替えたらゲレンデに集合してくれ」
お、とうとう始まったな、雪山イベント。
当然、ゲレンデでもイベントが待っているわけで。
『きゃ~、王子、転んじゃう~っ!』
『ふっ、しょうがないやつだな。わたしが手取り足取り教えてやろう』
的な、定番の密着イベントだ。
「きゃーっ、ソコおどきになって! わたくし転びますわっ」
な、なんでわたしがすっ転んでるんだ!?
ていうか、前世ではスキーもスノボも得意だったのに。ハナコの運動神経、なさすぎでしょ。
「いたた、ですわ……」
見事に雪の壁に突っ込んで、やっとの思いで体を起こした。
む、スキー板ついてると、うまく立ち上がれないぞ。何気にハナコ、体もカタすぎなんじゃ。
遠くから誰かがスノボで近づいてきた。颯爽と助け起こされて、腕にぎゅっと抱きしめられる。
(やだ、長身イケメン!?)
華子、恋の予感!
白い歯をきらりと光らせて、そのイケメンが黒いゴーグルを押し上げた。
「大丈夫か、ハナコ。安心するといい。このわたしが支えてやるからふたりきりで練習しよう」
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