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第50話 魔王城
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寝返りをひとつ打つと、世界が波打つようにゆらゆら揺れた。
薄目を開けると、真っ黒い壁紙が目に飛び込んでくる。
「ここはどこ……?」
気づけばアメリはやけに大きなベッドに寝かされていた。それこそベッドがほぼ部屋を占拠していると言っていいバカでかさだ。
その上、寝具も壁も天井も、インテリアがすべて黒で統一されている。
奇妙な室内に首を傾げつつ、寝ぼけ眼で体を起こした。
「ん? わたし、なんでこんな格好してるの?」
身に覚えのない服を着せられている。やたらとフリルがついた、お姫様が着るようなそんな豪華な純白のドレスだ。
訳も分からず、アメリは改めて部屋の中を見渡した。
まず大きな鏡が目を引いた。あとは反対側の壁に下がる重たそうな黒のベルベッドのカーテンがあるだけで、ドアらしきものは見あたらない。
「あのうしろにあるのかな……」
立ち上がるも、不安定さに膝を付く。先ほど揺れているように感じたのは、ベッドのスプリングだったようだ。
仕方なく、黒いシルクのシーツの上をアメリは四つん這いで進んでいった。
端までたどり着き、ベッドの上から厚手の布をめくってみる。そこにはガラス戸があり、外は小さなバルコニーになっていた。
部屋の明かりが届かない向こうは真っ暗闇だ。
目が慣れてくると、薄曇りの空に細い月が浮かんでいるのが分かった。雲が流れては垣間見え、心もとない月は再びその姿を隠してしまう。
「あれ? この窓、どうやって開けるんだろ?」
押せども引けども、ピクリとも動かない。
窓枠に鍵もついておらず、アメリはひとり首をひねった。
「バルコニーがあるんだから開いたって良さそうなのに……」
「その窓は外からしか開かないよ?」
「きゃあっ」
ビクッと体を震わせる。
誰もいないと思っていた分、アメリの驚きもひとしおだ。
「……ヴィルジールさん」
振り向くとベッドの真ん中に、ヴィルジールがあぐらかいて座っていた。そこら辺にあった黒いクッションを器用にも角の間に乗せている。
といっても魔王仕様のヴィルジールだ。
赤い瞳に見つめられて、思わずアメリはベルベットのカーテンにしがみついた。
「そんな怖がらないでよ。取って食べたりしないからさ」
「……ここはどこなんですか?」
「魔王城さ。で、アメリは囚われのお姫様ってわけ」
それでこんな格好なのか。
ドレスに視線を落としていると、ヴィルジールがくすりと小さく笑いを漏らした。
「ソレね、ロランが好きそうなヤツ選んどいたから」
「え?」
「ほら、ロランってば王城で聖剣の乙女の衣装、めちゃくちゃ嫌がってたじゃない?」
「はぁ」
「ロランはね、ホントはそういう清楚系が好きなんだ。大丈夫、間違いないよ。旅も長かったし、ロランの嗜好は把握済みさ」
自信ありげに言われるも、力説ポイントがずれている気がする。
未だに信じたくない気持ちを抱え、アメリはおずおずと問いかけた。
「本当にヴィルジールさんが魔王なんですね?」
「そうだよ。これ見ても信じられない?」
ヴィルジールの爪がみょーんと伸びる。
尖った爪をカチカチ鳴らされて、青ざめたアメリは益々カーテンにしがみついた。
「信じます、信じます! だから今すぐソレしまってくださいっ」
「そう言ってもらえると助かるよ~。爪が長いとあちこち引っかかっちゃって面倒なんだ」
シュンと爪をしまうと、ヴィルジールがニッコリと手招きをしてくる。
「そんな端っこにいないで、もうちょっとこっち来なよ。聞きたいこといっぱいあるでしょ?」
見た目は近寄りがたい魔王様だが、中身はまんまヴィルジールだ。
少しだけ警戒を解いて、アメリはベッドの上を慎重に這って移動した。かさばるドレスがなんとも動きにくくてしょうがない。
「あ、その服、重い? だったらこっちにしようか」
「ひえっ」
ヴィルジールのひと声で、アメリのドレスがひゅっと一瞬で様変わりした。
今度はスリット深めの真っ黒いイブニングドレスだ。
「ななな何を……」
「あれ? 不満? もしかして裸にして着替えさせたと思ってた?」
「そ、そうじゃなくて、さっきの方がよかったカナ? とか思って……」
部屋の中はどこもかしこも真っ黒だ。
そんな環境で服まで黒いとなると、どうにも気分が滅入ってきてしまう。
「そう? こっちの方が僕の好みなんだけど。ま、アメリはロランの乙女だからね」
気づくと服が純白のドレスに戻っていた。ほっとしてひだの多いスカートを整え、アメリはなんとか座りよく落ち着いた。
それにしても近くで見るヴィルジールは美形すぎて迫力満点だ。
無意識にアメリは近くにあったクッションを胸に強く抱きしめた。
薄目を開けると、真っ黒い壁紙が目に飛び込んでくる。
「ここはどこ……?」
気づけばアメリはやけに大きなベッドに寝かされていた。それこそベッドがほぼ部屋を占拠していると言っていいバカでかさだ。
その上、寝具も壁も天井も、インテリアがすべて黒で統一されている。
奇妙な室内に首を傾げつつ、寝ぼけ眼で体を起こした。
「ん? わたし、なんでこんな格好してるの?」
身に覚えのない服を着せられている。やたらとフリルがついた、お姫様が着るようなそんな豪華な純白のドレスだ。
訳も分からず、アメリは改めて部屋の中を見渡した。
まず大きな鏡が目を引いた。あとは反対側の壁に下がる重たそうな黒のベルベッドのカーテンがあるだけで、ドアらしきものは見あたらない。
「あのうしろにあるのかな……」
立ち上がるも、不安定さに膝を付く。先ほど揺れているように感じたのは、ベッドのスプリングだったようだ。
仕方なく、黒いシルクのシーツの上をアメリは四つん這いで進んでいった。
端までたどり着き、ベッドの上から厚手の布をめくってみる。そこにはガラス戸があり、外は小さなバルコニーになっていた。
部屋の明かりが届かない向こうは真っ暗闇だ。
目が慣れてくると、薄曇りの空に細い月が浮かんでいるのが分かった。雲が流れては垣間見え、心もとない月は再びその姿を隠してしまう。
「あれ? この窓、どうやって開けるんだろ?」
押せども引けども、ピクリとも動かない。
窓枠に鍵もついておらず、アメリはひとり首をひねった。
「バルコニーがあるんだから開いたって良さそうなのに……」
「その窓は外からしか開かないよ?」
「きゃあっ」
ビクッと体を震わせる。
誰もいないと思っていた分、アメリの驚きもひとしおだ。
「……ヴィルジールさん」
振り向くとベッドの真ん中に、ヴィルジールがあぐらかいて座っていた。そこら辺にあった黒いクッションを器用にも角の間に乗せている。
といっても魔王仕様のヴィルジールだ。
赤い瞳に見つめられて、思わずアメリはベルベットのカーテンにしがみついた。
「そんな怖がらないでよ。取って食べたりしないからさ」
「……ここはどこなんですか?」
「魔王城さ。で、アメリは囚われのお姫様ってわけ」
それでこんな格好なのか。
ドレスに視線を落としていると、ヴィルジールがくすりと小さく笑いを漏らした。
「ソレね、ロランが好きそうなヤツ選んどいたから」
「え?」
「ほら、ロランってば王城で聖剣の乙女の衣装、めちゃくちゃ嫌がってたじゃない?」
「はぁ」
「ロランはね、ホントはそういう清楚系が好きなんだ。大丈夫、間違いないよ。旅も長かったし、ロランの嗜好は把握済みさ」
自信ありげに言われるも、力説ポイントがずれている気がする。
未だに信じたくない気持ちを抱え、アメリはおずおずと問いかけた。
「本当にヴィルジールさんが魔王なんですね?」
「そうだよ。これ見ても信じられない?」
ヴィルジールの爪がみょーんと伸びる。
尖った爪をカチカチ鳴らされて、青ざめたアメリは益々カーテンにしがみついた。
「信じます、信じます! だから今すぐソレしまってくださいっ」
「そう言ってもらえると助かるよ~。爪が長いとあちこち引っかかっちゃって面倒なんだ」
シュンと爪をしまうと、ヴィルジールがニッコリと手招きをしてくる。
「そんな端っこにいないで、もうちょっとこっち来なよ。聞きたいこといっぱいあるでしょ?」
見た目は近寄りがたい魔王様だが、中身はまんまヴィルジールだ。
少しだけ警戒を解いて、アメリはベッドの上を慎重に這って移動した。かさばるドレスがなんとも動きにくくてしょうがない。
「あ、その服、重い? だったらこっちにしようか」
「ひえっ」
ヴィルジールのひと声で、アメリのドレスがひゅっと一瞬で様変わりした。
今度はスリット深めの真っ黒いイブニングドレスだ。
「ななな何を……」
「あれ? 不満? もしかして裸にして着替えさせたと思ってた?」
「そ、そうじゃなくて、さっきの方がよかったカナ? とか思って……」
部屋の中はどこもかしこも真っ黒だ。
そんな環境で服まで黒いとなると、どうにも気分が滅入ってきてしまう。
「そう? こっちの方が僕の好みなんだけど。ま、アメリはロランの乙女だからね」
気づくと服が純白のドレスに戻っていた。ほっとしてひだの多いスカートを整え、アメリはなんとか座りよく落ち着いた。
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無意識にアメリは近くにあったクッションを胸に強く抱きしめた。
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