【R18】恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

古堂 素央

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第59話 嫉妬*

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「いやらしいと言えば……さっきの舌の動きはどこで覚えたんだ?」
「した?」
「俺のモノを咥えただろう?」
「それは、わたしもいい歳だし……その、いろいろとそんな話を耳にしたりだとか……」

 ごにょごにょと返すと、ロランは疑わしそうな視線を向けてくる。

「本当に? 聞いただけなんだな?」
「それ以外に何があるって言うの……?」
「誰かに教え込まれたということもあるだろう」

 なんだかロランの目つきが怖い。信用されてないことにもアメリはショックを受けた。

「そんなことある訳ないじゃない! わたしはロラン以外のひとなんて知らないわ。信じてないの!?」
「もちろん信じている。だが君の可愛さ加減を見ていると……たまらなく心配になってくるんだっ」
「ゃあんっ」

 いきなり奥を強く突かれて、アメリの胸が激しく揺れた。そのままロランは動きを速めてくる。

「あ、あんっ、あんっ、ろらっ、もうやめ」
「本当に、本当に俺だけだな?」
「だからさっきからそう言って」
「ヴィルジールとはどうだ!?」
「ふぇっ!? そんなのあり得な」
「この部屋であいつとふたりきりだったじゃないか! しかも同じベッドの上でっ」
「よく見てよ! この部屋でベッド以外のどこで過ごせって言うの!?」

 バカでかいベッドはほぼほぼ部屋の面積を占めている。
 そんな間取りで一体どうしろと言うのだろうか。

「ではあの服は!? ヴィルジールに着せられたんじゃないのか!?」
「あれは魔法で! 肌に触れられたりなんて絶対にしてないもの!」
「いや、アメリが寝ている隙に何かされたかもしれない」
「そんなことされてたら、さすがにわたしだって気づくわよ!」
「いや、ヴィルは言っていたぞ! 早く魔王城に来ないとクッキーと一緒にアメリを食べるとっ」
「ちがっ、食べてたのはクッキーとわたしじゃなくって、わたしとヴィルジールさんが一緒にクッキーを」
「俺といるときにほかの男の名を口にするなっ」
「そ、そんなっ、ひゃぁあん!」

 ばちゅばちゅとさらに激しく突いてくる。

「アメリっアメリっ、アメリは誰にも渡さないっ、俺だけのものだっ」

 ロランの支離滅裂な嫉妬ぶりに、ついていけなくなったアメリは思い切りロランの唇をふさぎにかかった。
 すぐに集まった掌の光の渦から、反射的にロランが聖剣を抜き去った。
 腰を止め、ぽかんと掲げられた勇者の剣は、これまで以上に荘厳な輝きを放っている。

「わたし、ロランに嘘も隠し事もしてません」

 怒ったように言うと、しゅんっと聖剣がアメリの体に吸い込まれた。

「絶対にしてませんから」

 ロランの瞳をまっすぐに見つめ、ちゅっと唇のすれすれに口づける。
 それから頭を抱えるようにして、ロランを強く抱きしめた。

「アメリ……疑心暗鬼になってすまなかった……」
「もういいです。それだけわたしが好きなんでしょう?」

 悪戯っぽく言うと、ロランはぎゅっと抱きしめ返してきた。

「ああ……好きだ、好きなんだアメリ。俺はアメリだけを愛している」

 茶化したつもりが真顔で返され、頬に熱が集まってくる。
 なんだかそれが悔しくて、アメリは何かうまい言葉を探した。

「そう言うロランこそどうなんです? わたしに隠し事とかしてないですよね?」

 マーサ情報では昔ロランは遊びまくっていたそうだ。
 胡乱な眼差しで問うと、ロランは真摯な顔を向けてきた。

「この名にかけて誓う。アメリに出会ってから、俺はアメリひと筋だ」

 ロランの指がやさしくアメリの唇をなぞる。
 その感触にぽーっとなっていると、ロランはなぜか少し後ろめたそうな顔をした。

「いや、あるな。ひとつだけ、アメリに言わずに隠していたことが」
「え……?」

 アメリの瞳が不安に揺れる。そんなアメリに、ロランは愛おしそうに目を細めた。

「俺が初めて君に触れた日のことだ」
「ロランがわたしに……?」
「ああ、君は自分で俺の部屋まで来てくれたろう?」

 初めてというと、ロランの顔面を蹴り飛ばした日のことだろうか。動揺でアメリは目を泳がせた。
 あの日は訳も分からずいきなり押し倒されたのだ。渾身の蹴りを食らわせたことを、今さらここで蒸し返されても困ってしまう。

「アメリは俺が寝ぼけてやったと思ってるだろう?」
「だって、あのときロラン寝てたもの」
「ああ、確かに夢うつつではあったな」

 アメリの横髪を何度か梳くと、ロランは言いにくそうに瞳を伏せた。
 もしかするとアメリ以外の誰かを思いながら、間違えてたまたまそこにいたアメリに触れてしまったのかもしれない。
 そんな考えが頭をよぎり、アメリは聞く前に泣きたくなってしまった。

「い、いいの、ちゃんと分かってるからっ。誰かと間違えて、その気もなくわたしに手を出しちゃったんでしょう? 夢見てたのなら仕方ないし」

 先回りして、できるだけダメージを回避する。
 アメリと出会う前の出来事だとしても、ロランの口から思っていたひとの話など聞きたくなかった。

「いや、あのとき俺は、夢の中でもアメリに触れていたんだ」
「夢の中でもわたしに……?」
「ああ、むしろ積極的にな」
「え? どうして?」

 出会ったばかりのロランは不愛想で、アメリのことを疎んじていると思っていた。
 そんな気に入らない相手を捕まえて、夢の中でわざわざ手を出さなくてもいいだろうに。

「今思うとひと目惚れだったんだ」
「ひと目惚れ? ロランが誰に?」
「アメリにだ」
「え、だってロランずっとわたしにそっけなかったし……」
「ああ、俺のひねくれぶりも大概だな」

 口元に笑みを刻むと、ロランはアメリの耳元で囁いた。

「アメリに初めて口づけたとき、君からはとてもいい匂いがした」
「ふぇっ」
「だからずっと、こんなふうに触れたくてしょうがなかったんだ」

 首筋に吸いつかれ、ちくりと赤い跡を残される。

「これで一切隠し事はなしだ」

 熱い瞳で見つめられ、ロランが唇を啄んでくる。再び集った掌の熱に、口づけたままアメリは身じろいだ。
 聖剣が時間をかけて抜かれる間ずっと、ふたりは互いの唇をみ舌を絡めあった。

 名残惜しく唇が離されるころ、扉が開いたような軋む音が、どこか部屋の片隅からきぃ……っと響き渡った。
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