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僕の恋の始まりと終わり 1月
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「奏、今日もかわいいよ」
「やめろよ。可愛いなんて…嬉しくないし…」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
僕、戸崎 奏は、街の小さな会社の経理をしている。社員も少なく、事務仕事は社長の奥さんと僕だけ。僕は元々人見知りが激しくて、人付き合いが大の苦手だ。だからこの仕事は僕に向いていると思う。誰かと喋る時は電話が鳴った時だけでいいし、社長の奥さんの世間話には相槌を打つだけでいい。
9時に仕事が始まり18時に終わる。残業は、ほぼない。収入は同年代より少ないと思うけれど、僕にとってはとても快適な職場環境である。それに不自由なく生活は出来ているし、好きな事も出来ている。
何も不満は無かった。
恋愛以外は__
僕は恋愛の対象が男性で……
学生時代、何人か女の子に告白された事はあるけれど、僕はゲイだから、それに応えることが出来なかった。無理して女の子と付き合おうと思った事もあったけれど、相手に失礼だし僕も後悔すると思って、それはしなかった。
ゲイだと気付いたのは中学の頃。
体育祭の時にクラスメイトが彼女との初体験の話をしていて、それを聞いても何の感情も湧かなかった。
それよりも、そのクラスメイトの男に成長しかけている筋肉や喉仏に、ムラムラしている僕がいた。
高校生の時には完全に性対象が男だと自覚して、ゲイのエロ動画に興奮して抜いていた。女性の裸を見ても勃起すらしなかった。
普通の恋愛をしてみたい。それが一番してみたい事だ。好きな人とキスしたりデートしたり、セックスしたいとずっと思っている。
でも出会いのきっかけを作る方法が分からなかった。一度だけの関係も嫌だった。だからもうすぐ30になろうと言うのに、僕は童貞だった。
去年までは___
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
去年の1月___
休日だからと昼頃まで寝ていようと思っていたのに、外の騒音で目が覚めた。様子を伺っていると、どうやら隣で引越しの作業をしているようだった。
僕はかなり嫌な気分になった。僕の住んでいるマンションはかなり古いから、結構音が響く。隣の部屋は二年程空き部屋だったから、静かで快適だった。その平穏な生活が脅かされると思うと、物凄く憂鬱な気持ちになった。
夕方頃チャイムが鳴った。インターホンの画面を見ると、僕と同年代くらいの男性が立っていた。通話ボタンを押して、
「はい…」と、僕はボソッと出る。
「こんにちは。あのぉ、隣に引っ越してきた田宮です」
今時、引っ越しの挨拶なんて珍しい。新婚さんかな、と思った。もっと憂鬱になった。
「これ、玄関先に置いておきますね。これからよろしくお願しまぁす」
そう言うと田宮という男は手を振って立ち去った。
イケメンで陽キャっぽさが更に僕の気分を憂鬱にさせた。
玄関を開けると、小さな包が置いてあった。ハンドタオルだった。本当に今時珍しい。
暫くは隣の田宮という男と会う事は無かったけれど、2月の雪が降りそうな程寒い夜にばったり玄関先で出会ってしまった。
「あっ!」
「あっ…」
僕はすぐ目を逸らして、自分の部屋の鍵を開けようとした。
「あのぉ…戸崎さん、ですよね?」
そう声を掛けられたら無視することが出来なくて、小さく深呼吸して、
「はい、そうですが、何か?」と返事をした。
「僕、隣の田宮です。田宮 凌二」
何故フルネームで自己紹介するんだ、このお隣さんは。
「どうも、戸崎です」
僕は軽く会釈をして、部屋に入ろうとする。だが、
「あの」と、僕を引き止めるお隣さん。仕方ないから、再び振り返ると、
「俺、この街に来たばかりで、この辺りの事よく知らなくて。知り合いも居ないし…戸崎さん、俺と歳近そうだし友達になりませんか?」と言ってきた。
何で『お隣さん』というだけで、友達にならないといけないんだよ。分からない事があったらスマホで調べろよ、と思いつつ、ヘタレの僕は、
「はぁ…」と曖昧な返答をしてしまった。
それが僕の恋の始まりだった___
「やめろよ。可愛いなんて…嬉しくないし…」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
僕、戸崎 奏は、街の小さな会社の経理をしている。社員も少なく、事務仕事は社長の奥さんと僕だけ。僕は元々人見知りが激しくて、人付き合いが大の苦手だ。だからこの仕事は僕に向いていると思う。誰かと喋る時は電話が鳴った時だけでいいし、社長の奥さんの世間話には相槌を打つだけでいい。
9時に仕事が始まり18時に終わる。残業は、ほぼない。収入は同年代より少ないと思うけれど、僕にとってはとても快適な職場環境である。それに不自由なく生活は出来ているし、好きな事も出来ている。
何も不満は無かった。
恋愛以外は__
僕は恋愛の対象が男性で……
学生時代、何人か女の子に告白された事はあるけれど、僕はゲイだから、それに応えることが出来なかった。無理して女の子と付き合おうと思った事もあったけれど、相手に失礼だし僕も後悔すると思って、それはしなかった。
ゲイだと気付いたのは中学の頃。
体育祭の時にクラスメイトが彼女との初体験の話をしていて、それを聞いても何の感情も湧かなかった。
それよりも、そのクラスメイトの男に成長しかけている筋肉や喉仏に、ムラムラしている僕がいた。
高校生の時には完全に性対象が男だと自覚して、ゲイのエロ動画に興奮して抜いていた。女性の裸を見ても勃起すらしなかった。
普通の恋愛をしてみたい。それが一番してみたい事だ。好きな人とキスしたりデートしたり、セックスしたいとずっと思っている。
でも出会いのきっかけを作る方法が分からなかった。一度だけの関係も嫌だった。だからもうすぐ30になろうと言うのに、僕は童貞だった。
去年までは___
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
去年の1月___
休日だからと昼頃まで寝ていようと思っていたのに、外の騒音で目が覚めた。様子を伺っていると、どうやら隣で引越しの作業をしているようだった。
僕はかなり嫌な気分になった。僕の住んでいるマンションはかなり古いから、結構音が響く。隣の部屋は二年程空き部屋だったから、静かで快適だった。その平穏な生活が脅かされると思うと、物凄く憂鬱な気持ちになった。
夕方頃チャイムが鳴った。インターホンの画面を見ると、僕と同年代くらいの男性が立っていた。通話ボタンを押して、
「はい…」と、僕はボソッと出る。
「こんにちは。あのぉ、隣に引っ越してきた田宮です」
今時、引っ越しの挨拶なんて珍しい。新婚さんかな、と思った。もっと憂鬱になった。
「これ、玄関先に置いておきますね。これからよろしくお願しまぁす」
そう言うと田宮という男は手を振って立ち去った。
イケメンで陽キャっぽさが更に僕の気分を憂鬱にさせた。
玄関を開けると、小さな包が置いてあった。ハンドタオルだった。本当に今時珍しい。
暫くは隣の田宮という男と会う事は無かったけれど、2月の雪が降りそうな程寒い夜にばったり玄関先で出会ってしまった。
「あっ!」
「あっ…」
僕はすぐ目を逸らして、自分の部屋の鍵を開けようとした。
「あのぉ…戸崎さん、ですよね?」
そう声を掛けられたら無視することが出来なくて、小さく深呼吸して、
「はい、そうですが、何か?」と返事をした。
「僕、隣の田宮です。田宮 凌二」
何故フルネームで自己紹介するんだ、このお隣さんは。
「どうも、戸崎です」
僕は軽く会釈をして、部屋に入ろうとする。だが、
「あの」と、僕を引き止めるお隣さん。仕方ないから、再び振り返ると、
「俺、この街に来たばかりで、この辺りの事よく知らなくて。知り合いも居ないし…戸崎さん、俺と歳近そうだし友達になりませんか?」と言ってきた。
何で『お隣さん』というだけで、友達にならないといけないんだよ。分からない事があったらスマホで調べろよ、と思いつつ、ヘタレの僕は、
「はぁ…」と曖昧な返答をしてしまった。
それが僕の恋の始まりだった___
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