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僕の恋の始まりと終わり 2月
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「戸崎さん、俺と歳近そうだし友達になりませんか?」
「はぁ…」
何で僕は曖昧な返事をしてしまうんだろうか。僕はいつも断るのが下手だ。人見知りのくせに、人付き合いが苦手なくせに、気が弱いわけじゃ無いけれど、使わなくてもいい気を遣ってしまう。
「ホントですか?良かったぁ」と、大袈裟過ぎるお隣さん。コイツも友達いないのか?
今日は金曜日だから今話題のゲームで遊ぼうと思ってたのに。早く風呂に入ってさっぱりしてからゲームしようと思ってたのに。
「戸崎さん、まだ夕飯食ってませんよね?」
「え?」
「俺、一人鍋しようと思ったんですけど、一人も二人も大して違わないし、食材多めに買っちゃったんで、一緒に食いましょうよ!」と、僕の返事も聞かないで、お隣さんは部屋に僕を入れてしまった。
知らない人の部屋……
硬直する僕……
自分の時間を、たかがお隣さんに乱されなくない!
のに、何も言えなくて促されるまま、
「お…お邪魔しまぁす」と、上がってしまった僕。
何やってんだよ!何なんだよ!僕はこういう自分が大っ嫌いだ!
「戸崎さん、お酒大丈夫ですか?」
「……いや」
「ビールとチューハイどっちがいいですか?」
「……お酒は飲めません」
「え?日本酒が良かったですか?」
僕の声が小さ過ぎて、会話のキャッチボールが成り立たない……
「すいません、俺勝手に勧めちゃって。じゃ、ミネラルウォーターでいいですかね」と、お隣さんは僕にペットボトルを渡す。
「じゃ、食いましょう。嫌いな物ありませんか?」
「多分…大丈夫です……」
「この時期はやっぱり鍋が手っ取り早いですよね。暖まるし」
黙ってお隣さんの話に頷く僕。
「鍋セット買ってきたんですけど、一人前が無くて。まぁ食おうと思えば一人でも食えますけどね」
またお隣さんの話に頷くだけの僕。
「俺、27なんですけど、いまだにバイトなんですよね。何となくダラダラとバイトしてます」
何が『何となく』だよ、と思いながらも黙って聞いている僕。
「自分でも、このままじゃダメだって思ってるんです……すいません、つまんない話しちゃって」
お隣さんはそう言うとグラスビールを一気に飲み干した。
「戸崎さんはお幾つですか?」
「……29です」
「やっぱり、大して歳変わらなかったんですね。仲良くなれそう」
何が『仲良くなれそう』だよ、コイツ。
流石の僕も、このお隣さんの動向に疑問が生じ過ぎてしまって、黙っていられなくなった。
「……あのぉ!」
「はい?」
「隣同士とはいえ、見ず知らずの人を家に上げたりするのは良くないと思います。僕が危険人物だったらどうするんですか?」
よく言った、僕。
「でも…」
何だよ、僕間違った事言ったかよ?
「戸崎さんは危険人物じゃないでしょ?」と、お隣さん。
「違いますけど、でも、僕の素性も知らないわけだし…それに僕に迷惑だと考えないんですか?」
そう言う僕に、お隣さんはびっくりした顔をしていたけれど、すぐに吹き出して笑いだした。
ムカつくぞ、コイツ……
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」と、失礼なお隣さんは笑いながら僕に謝ってきた。
「俺、寂しかったんですよ。知らない土地に来て、知り合いも一人も居なくて、たまたまお隣の戸崎さんが自分と歳が近くて、何か嬉しくなっちゃって。人と喋るのが、誰かと同じ時間を共有するのが、こんなにも楽しいんだ、ってなっちゃって」
僕と喋ってて楽しい?
こんなに不愛想なのに?
僕はただ聞いていただけだし……
楽しいのか?僕と居るのが……
「楽しいですか?」
思わず聞いてしまった僕。
「楽しいですよ」
「僕、喋ってないですけど…」
「でも俺の話を聞いてくれてるから、嬉しいです」
「……変な人ですね」
「……戸崎さんはサラリーマンですか?」
サラッと話題を変えてきた隣人。
「……一応」
「趣味は?」
「特には…まぁたまにゲームはしますけど…」
「俺もゲームやりますよ」と、隣人はパソコンとコンシューマーゲームを指差した。僕がお金を貯めて買った物より立派な物だった。
「じゃ、フレンドになりましょうよ!そしたら何時でもボイチャ繋いで遊べますよ」
『フレンドになりましょう』
ゲームフレンドすら居ない僕に、コイツは何て事を…
「……い、いいですよ」と、ちょっと嬉しくて返事してしまった僕。
そこからID交換と好きなゲームの話しで盛り上がってしまった。まぁ、殆どこのお隣さんが喋っていたんだけれども。
『人と喋るのが、誰かと同じ時間を共有するのが、こんなにも楽しいなんて…』
僕もそう感じてしまった2月の雪が降りそうな程寒い夜だった。
「はぁ…」
何で僕は曖昧な返事をしてしまうんだろうか。僕はいつも断るのが下手だ。人見知りのくせに、人付き合いが苦手なくせに、気が弱いわけじゃ無いけれど、使わなくてもいい気を遣ってしまう。
「ホントですか?良かったぁ」と、大袈裟過ぎるお隣さん。コイツも友達いないのか?
今日は金曜日だから今話題のゲームで遊ぼうと思ってたのに。早く風呂に入ってさっぱりしてからゲームしようと思ってたのに。
「戸崎さん、まだ夕飯食ってませんよね?」
「え?」
「俺、一人鍋しようと思ったんですけど、一人も二人も大して違わないし、食材多めに買っちゃったんで、一緒に食いましょうよ!」と、僕の返事も聞かないで、お隣さんは部屋に僕を入れてしまった。
知らない人の部屋……
硬直する僕……
自分の時間を、たかがお隣さんに乱されなくない!
のに、何も言えなくて促されるまま、
「お…お邪魔しまぁす」と、上がってしまった僕。
何やってんだよ!何なんだよ!僕はこういう自分が大っ嫌いだ!
「戸崎さん、お酒大丈夫ですか?」
「……いや」
「ビールとチューハイどっちがいいですか?」
「……お酒は飲めません」
「え?日本酒が良かったですか?」
僕の声が小さ過ぎて、会話のキャッチボールが成り立たない……
「すいません、俺勝手に勧めちゃって。じゃ、ミネラルウォーターでいいですかね」と、お隣さんは僕にペットボトルを渡す。
「じゃ、食いましょう。嫌いな物ありませんか?」
「多分…大丈夫です……」
「この時期はやっぱり鍋が手っ取り早いですよね。暖まるし」
黙ってお隣さんの話に頷く僕。
「鍋セット買ってきたんですけど、一人前が無くて。まぁ食おうと思えば一人でも食えますけどね」
またお隣さんの話に頷くだけの僕。
「俺、27なんですけど、いまだにバイトなんですよね。何となくダラダラとバイトしてます」
何が『何となく』だよ、と思いながらも黙って聞いている僕。
「自分でも、このままじゃダメだって思ってるんです……すいません、つまんない話しちゃって」
お隣さんはそう言うとグラスビールを一気に飲み干した。
「戸崎さんはお幾つですか?」
「……29です」
「やっぱり、大して歳変わらなかったんですね。仲良くなれそう」
何が『仲良くなれそう』だよ、コイツ。
流石の僕も、このお隣さんの動向に疑問が生じ過ぎてしまって、黙っていられなくなった。
「……あのぉ!」
「はい?」
「隣同士とはいえ、見ず知らずの人を家に上げたりするのは良くないと思います。僕が危険人物だったらどうするんですか?」
よく言った、僕。
「でも…」
何だよ、僕間違った事言ったかよ?
「戸崎さんは危険人物じゃないでしょ?」と、お隣さん。
「違いますけど、でも、僕の素性も知らないわけだし…それに僕に迷惑だと考えないんですか?」
そう言う僕に、お隣さんはびっくりした顔をしていたけれど、すぐに吹き出して笑いだした。
ムカつくぞ、コイツ……
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」と、失礼なお隣さんは笑いながら僕に謝ってきた。
「俺、寂しかったんですよ。知らない土地に来て、知り合いも一人も居なくて、たまたまお隣の戸崎さんが自分と歳が近くて、何か嬉しくなっちゃって。人と喋るのが、誰かと同じ時間を共有するのが、こんなにも楽しいんだ、ってなっちゃって」
僕と喋ってて楽しい?
こんなに不愛想なのに?
僕はただ聞いていただけだし……
楽しいのか?僕と居るのが……
「楽しいですか?」
思わず聞いてしまった僕。
「楽しいですよ」
「僕、喋ってないですけど…」
「でも俺の話を聞いてくれてるから、嬉しいです」
「……変な人ですね」
「……戸崎さんはサラリーマンですか?」
サラッと話題を変えてきた隣人。
「……一応」
「趣味は?」
「特には…まぁたまにゲームはしますけど…」
「俺もゲームやりますよ」と、隣人はパソコンとコンシューマーゲームを指差した。僕がお金を貯めて買った物より立派な物だった。
「じゃ、フレンドになりましょうよ!そしたら何時でもボイチャ繋いで遊べますよ」
『フレンドになりましょう』
ゲームフレンドすら居ない僕に、コイツは何て事を…
「……い、いいですよ」と、ちょっと嬉しくて返事してしまった僕。
そこからID交換と好きなゲームの話しで盛り上がってしまった。まぁ、殆どこのお隣さんが喋っていたんだけれども。
『人と喋るのが、誰かと同じ時間を共有するのが、こんなにも楽しいなんて…』
僕もそう感じてしまった2月の雪が降りそうな程寒い夜だった。
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