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第二章
黒竜の説教
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「ここじゃよ、ここ」
声のする方に目を向けるとそこには黒竜しかいなかった。
「ま、まさか…」
「そのまさかじゃ。わしじゃよ」
やはりというべきか、声の主は黒竜であった。
「あやつから魔勇者とやらを紹介してやると聞いてはいたが、まさかこんな小娘とはのぉ」
「悪かったわね…って紹介?」
何やら妙な言葉が聞こえた。
「私はこの洞窟の竜の援護をするよう言われて来たんだけど?」
そう魔王から命じられて私はここに来た。ちなみに私が冒険者達の背後をつくことができたのは魔物だけが知る隠し通路をヌコから教えてもらったからである。この黒竜の部屋の天井に開けられた穴から飛び降り、頭上から冒険者を一人葬ったのだ。思ったより高くてちょっとビビったのは内緒だ。また、私一人だけが洞窟に潜入したのは黒竜の攻撃の巻き添えによる被害を減らすためである。アウルとヌコは万が一に備えて洞窟の入り口で待機している。
「あやつのことじゃ。そういう建前でお前さんを送り込んだんじゃろう。まったく…このくらいわし一人で十分だというのに…」
黒竜は呆れたようにつぶやいた。その口ぶりからみるに彼は魔王のことをよく知っているようだが、部下という雰囲気でもないようだ。一体どんな関係なのだろうか。
「で、お前さんの戦い見せてもらったが、まるでなっとらんのぉ」
黒竜はハッキリとそう告げた。
「な…」
「そうであろう。七人のうち二人しか殺っておらんし、そのうち一人には随分と手こずっていたではないか」
「ぐ…」
まるで反論できなかった。実際その通りだからだ。初めての戦いに比べてうまく立ち回れていない。自分でもなんとなくわかっていた。
「わしがお前さんの立場ならば一人で七人殺っておったわい。奴らが動揺する前にな」
黒竜は自慢げに胸を反らしながら語った。よほど自分の実力に自信があるようだ。まぁ、こんな洞窟の奥底にボスキャラのごとく佇んでいる巨大なドラゴンが弱いわけがない。
「まぁ、せっかくここに来たんだ。わしが少しばかりお前さんを鍛えてやろう」
「はぁ?」
いきなり何を言ってるんだこのドラゴンは?
「悪いけど、そんなことに付き合っている暇はないわよ…」
私が文句を言った途端、黒竜はその大きな口を開き、大玉ほどの大きさの火球を打ち出した。火球は私の横を掠めて部屋の出入口に当たり、轟音と共に大爆発を起こした。後ろを振り向くと出入口は落盤によって塞がれていた。
「ちょ…おま…」
「どうじゃ?これで帰ることはできんぞ?」
「問答無用かよこの野郎…」
あの魔王といい、魔族ってヤツは強引に話を進めるのが基本スタイルなのかしら…。
「今の火球を片手で打ち返せるようになるまで帰さんぞ?」
「オイ!どんだけ修行させるつもりなのよ!私にも一応任務が…」
「ははは、冗談じゃよ。今日のところは基本的な訓練ぐらいにしておいてやるわい。少しばかりじゃが剣技も教えてやるぞ?」
黒竜はカカカと笑った。しかし、この竜のことだ。どこでどんな無茶ぶりを振ってくるかわからない。正直不安である。
「というか、その図体でどうやって剣技を教えるってんのよ?」
「ふふん、心配無用じゃ」
黒竜は鼻を鳴らすとその身体は白い煙に包まれた。ほどなくして煙の中からガタイのよい壮年の男性が姿を現した。黒い竜の鱗を彷彿させる服を身にまとった重量級の格闘家のような風貌だ。
「この程度の変身、わしぐらいの魔族にとって基本中の基本じゃ」
魔物が人間に変身するというファンタジーな光景に私は一瞬絶句した。まぁ、ファンタジーの世界なんですけど。
「ほれ、早く刀をとるがよい」
そんな感じで半ば強引に黒竜による修行が始まったのだ。
声のする方に目を向けるとそこには黒竜しかいなかった。
「ま、まさか…」
「そのまさかじゃ。わしじゃよ」
やはりというべきか、声の主は黒竜であった。
「あやつから魔勇者とやらを紹介してやると聞いてはいたが、まさかこんな小娘とはのぉ」
「悪かったわね…って紹介?」
何やら妙な言葉が聞こえた。
「私はこの洞窟の竜の援護をするよう言われて来たんだけど?」
そう魔王から命じられて私はここに来た。ちなみに私が冒険者達の背後をつくことができたのは魔物だけが知る隠し通路をヌコから教えてもらったからである。この黒竜の部屋の天井に開けられた穴から飛び降り、頭上から冒険者を一人葬ったのだ。思ったより高くてちょっとビビったのは内緒だ。また、私一人だけが洞窟に潜入したのは黒竜の攻撃の巻き添えによる被害を減らすためである。アウルとヌコは万が一に備えて洞窟の入り口で待機している。
「あやつのことじゃ。そういう建前でお前さんを送り込んだんじゃろう。まったく…このくらいわし一人で十分だというのに…」
黒竜は呆れたようにつぶやいた。その口ぶりからみるに彼は魔王のことをよく知っているようだが、部下という雰囲気でもないようだ。一体どんな関係なのだろうか。
「で、お前さんの戦い見せてもらったが、まるでなっとらんのぉ」
黒竜はハッキリとそう告げた。
「な…」
「そうであろう。七人のうち二人しか殺っておらんし、そのうち一人には随分と手こずっていたではないか」
「ぐ…」
まるで反論できなかった。実際その通りだからだ。初めての戦いに比べてうまく立ち回れていない。自分でもなんとなくわかっていた。
「わしがお前さんの立場ならば一人で七人殺っておったわい。奴らが動揺する前にな」
黒竜は自慢げに胸を反らしながら語った。よほど自分の実力に自信があるようだ。まぁ、こんな洞窟の奥底にボスキャラのごとく佇んでいる巨大なドラゴンが弱いわけがない。
「まぁ、せっかくここに来たんだ。わしが少しばかりお前さんを鍛えてやろう」
「はぁ?」
いきなり何を言ってるんだこのドラゴンは?
「悪いけど、そんなことに付き合っている暇はないわよ…」
私が文句を言った途端、黒竜はその大きな口を開き、大玉ほどの大きさの火球を打ち出した。火球は私の横を掠めて部屋の出入口に当たり、轟音と共に大爆発を起こした。後ろを振り向くと出入口は落盤によって塞がれていた。
「ちょ…おま…」
「どうじゃ?これで帰ることはできんぞ?」
「問答無用かよこの野郎…」
あの魔王といい、魔族ってヤツは強引に話を進めるのが基本スタイルなのかしら…。
「今の火球を片手で打ち返せるようになるまで帰さんぞ?」
「オイ!どんだけ修行させるつもりなのよ!私にも一応任務が…」
「ははは、冗談じゃよ。今日のところは基本的な訓練ぐらいにしておいてやるわい。少しばかりじゃが剣技も教えてやるぞ?」
黒竜はカカカと笑った。しかし、この竜のことだ。どこでどんな無茶ぶりを振ってくるかわからない。正直不安である。
「というか、その図体でどうやって剣技を教えるってんのよ?」
「ふふん、心配無用じゃ」
黒竜は鼻を鳴らすとその身体は白い煙に包まれた。ほどなくして煙の中からガタイのよい壮年の男性が姿を現した。黒い竜の鱗を彷彿させる服を身にまとった重量級の格闘家のような風貌だ。
「この程度の変身、わしぐらいの魔族にとって基本中の基本じゃ」
魔物が人間に変身するというファンタジーな光景に私は一瞬絶句した。まぁ、ファンタジーの世界なんですけど。
「ほれ、早く刀をとるがよい」
そんな感じで半ば強引に黒竜による修行が始まったのだ。
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