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第五章
隠された通路
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「う~。中もやっぱ寒いわね」
洞窟の中の細長い通路を駆けながらビオラは身体を震わせた。
「風がないだけまだマシよ」
カンテラで奥を照らしながら先頭を走るリエルが答えた。耳を澄ますと来た道から複数の足音が聞こえる。先ほど倒した狼の仲間達だ。
「やっぱしつこいわね…でもここなら…」
ビオラは足を止めて振り返り、杖を構えた。
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。まとめてやってやるわ」
心配そうに声をかけるアズキにビオラが自信満々に返した。リエルがカンテラで照らした先に狼が数匹目に映った。獲物を逃がすまいとこちらに向かってくる。
「今だ!『フレイム』!」
普段より多めに魔力をこめた杖の先端から大きめの火球が放たれ、着弾した炎は狼の群れの先頭を包み込んだ。
「ギャウン!」
炎は通路を塞ぐように炎上し、三匹ほどの狼が火だるまになった。炎を逃れた残りの狼達は追撃をあきらめ、引き返した。
「どうよ?あたしだってこのくらいはやれるわよ!」
得意げな表情でビオラは感想を求めるように振り返った。
「ドヤ顔がうざい。40点」
足元のトニーが真顔でコメントした。
「炎に放り込んで叉焼にしたろかオォン!」
「プギャアァ!」
ビオラは思いきりトニーの顔を踏んづけた。
「ま、まぁまぁ。これで追手は退けたんだからいいじゃない」
なだめるようにリエルが声をかけた。
「そ、そうですよ。ほら、先へ進みましょう」
気を取り直して一行は通路の奥へ向かった。
――――
「…なんか、雰囲気が変わったわね…」
通路をしばらく進み、周囲をカンテラで照らすとそこは自然の洞窟とは異なる風景であった。
壁は大理石と思われるブロックが敷き詰められ、立派な石柱が規則的に並んでいる。ここが人為的に作られた通路であることは明らかであった。
「…ここに何か遺跡でもあったんですかね?」
「うーん。でもそんな話、ギルドでもグロハの町でも聞かなかったけど…」
「じゃあ、未知のエリアってこと?あたし達発見者第一号じゃん!」
浮かれた声をあげながらビオラが振り向くと、トニーが壁の一部を凝視していた。
「ん?アンタどうしたの?」
「あ…いや…」
声をかけられたトニーはビオラの方に向き直り、彼女の顔を見上げた。
「…何?あたしの顔になんかついてる?」
「いや…改めて見ると…」
どこか様子がおかしいトニーに対し、ビオラは首を傾げた。
「…胸ちっちゃいな。お前」
「…悪かったわね!」
下世話な指摘に激昂したビオラはトニーの胴体に思いきりローキックを入れた。
「プギャー!」
トニーは横の壁に叩き付けられ、壁は衝撃でひび割れるかと思われた。しかし、その壁は壊れることなく、すり抜けるようにトニーはその奥にそのまま飛ばされた。
「ええ?何今の?」
蹴り飛ばした張本人は動揺していた。
「これって…幻影?」
リエルがその壁に手を伸ばした。壁に触れた感触はなく、手首が壁をすり抜けた。恐る恐る足を踏み入れると、その奥に通路が続いていた。
「やっぱり…隠し通路だわ!」
リエルは幻影の壁の奥からハンドサインを送り、二人を誘導した。
「こんな仕掛けがあるとは驚きましたね」
「まったくね」
通路には先に侵入したトニーが何事もなかったかのように立っていた。
「どうよ。俺のおかげだぜ。褒めてもらおうか」
「うるせぇ!」
厚かましい態度の黒豚の顔にビオラは杖をぶつけた。そんな一人と一匹のやり取りを気にすることなくリエルとアズキは通路の奥へ進んだ。
洞窟の中の細長い通路を駆けながらビオラは身体を震わせた。
「風がないだけまだマシよ」
カンテラで奥を照らしながら先頭を走るリエルが答えた。耳を澄ますと来た道から複数の足音が聞こえる。先ほど倒した狼の仲間達だ。
「やっぱしつこいわね…でもここなら…」
ビオラは足を止めて振り返り、杖を構えた。
「だ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。まとめてやってやるわ」
心配そうに声をかけるアズキにビオラが自信満々に返した。リエルがカンテラで照らした先に狼が数匹目に映った。獲物を逃がすまいとこちらに向かってくる。
「今だ!『フレイム』!」
普段より多めに魔力をこめた杖の先端から大きめの火球が放たれ、着弾した炎は狼の群れの先頭を包み込んだ。
「ギャウン!」
炎は通路を塞ぐように炎上し、三匹ほどの狼が火だるまになった。炎を逃れた残りの狼達は追撃をあきらめ、引き返した。
「どうよ?あたしだってこのくらいはやれるわよ!」
得意げな表情でビオラは感想を求めるように振り返った。
「ドヤ顔がうざい。40点」
足元のトニーが真顔でコメントした。
「炎に放り込んで叉焼にしたろかオォン!」
「プギャアァ!」
ビオラは思いきりトニーの顔を踏んづけた。
「ま、まぁまぁ。これで追手は退けたんだからいいじゃない」
なだめるようにリエルが声をかけた。
「そ、そうですよ。ほら、先へ進みましょう」
気を取り直して一行は通路の奥へ向かった。
――――
「…なんか、雰囲気が変わったわね…」
通路をしばらく進み、周囲をカンテラで照らすとそこは自然の洞窟とは異なる風景であった。
壁は大理石と思われるブロックが敷き詰められ、立派な石柱が規則的に並んでいる。ここが人為的に作られた通路であることは明らかであった。
「…ここに何か遺跡でもあったんですかね?」
「うーん。でもそんな話、ギルドでもグロハの町でも聞かなかったけど…」
「じゃあ、未知のエリアってこと?あたし達発見者第一号じゃん!」
浮かれた声をあげながらビオラが振り向くと、トニーが壁の一部を凝視していた。
「ん?アンタどうしたの?」
「あ…いや…」
声をかけられたトニーはビオラの方に向き直り、彼女の顔を見上げた。
「…何?あたしの顔になんかついてる?」
「いや…改めて見ると…」
どこか様子がおかしいトニーに対し、ビオラは首を傾げた。
「…胸ちっちゃいな。お前」
「…悪かったわね!」
下世話な指摘に激昂したビオラはトニーの胴体に思いきりローキックを入れた。
「プギャー!」
トニーは横の壁に叩き付けられ、壁は衝撃でひび割れるかと思われた。しかし、その壁は壊れることなく、すり抜けるようにトニーはその奥にそのまま飛ばされた。
「ええ?何今の?」
蹴り飛ばした張本人は動揺していた。
「これって…幻影?」
リエルがその壁に手を伸ばした。壁に触れた感触はなく、手首が壁をすり抜けた。恐る恐る足を踏み入れると、その奥に通路が続いていた。
「やっぱり…隠し通路だわ!」
リエルは幻影の壁の奥からハンドサインを送り、二人を誘導した。
「こんな仕掛けがあるとは驚きましたね」
「まったくね」
通路には先に侵入したトニーが何事もなかったかのように立っていた。
「どうよ。俺のおかげだぜ。褒めてもらおうか」
「うるせぇ!」
厚かましい態度の黒豚の顔にビオラは杖をぶつけた。そんな一人と一匹のやり取りを気にすることなくリエルとアズキは通路の奥へ進んだ。
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