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第九章
そこについていたのは
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「あ、そうだ。そろそろ温泉に行ってみようか」
とりとめのない話をしばらく続けていたリエルは思い出したかのように自分達の鞄を見た。
「そうね――ってアズキは?」
鞄から入浴道具を取り出そうとしたビオラはアズキが部屋にいないことに気づいた。
「あれ?いつの間に?」
「先に温泉とやらに行ったんじゃね?」
部屋の隅に転がっているトニーが声をかけた。
「どうやらそうみたいね」
鞄の中を改めたビオラはアズキの分の入浴道具がないことを確認した。
「そういえば、みんなでお風呂に入るのってこれが初めてかもね」
「そうね。今までは一人用の風呂かシャワーだけだったからね」
二人はエキョウでアズキと出会ってからの道中を振り返った。
「メイリスさんと旅していた時もそういうのはなかったし、ちょっと楽しみね」
内心ウキウキしながらリエルは自分の入浴道具を用意した。
「ま、今日はあんだけ身体張ったんだし、ご褒美と思って入りましょか」
子供のように目を輝かせているリエルに苦笑しながらビオラは自分の入浴道具を手に取った。
「よし、行くか」
「アンタはお留守番!」
意気込んで部屋を出ようとしたトニーの顔をわしづかみし、ビオラはにべもなく阻んだ。
「プギャー」
――――
「ここね」
客室からしばらく廊下を歩き、台所の隣に温泉を表す記号が描かれた赤い暖簾がかけられた扉を見つけることが出来た。
「隣は男湯かしら…?」
隣には同じ記号が描かれた青い暖簾がかけられた扉があったが、使われている様子がなかった。
「今まで師範しかいなかったから使っていないんじゃない?」
扉を開き、暖簾をくぐると、そこには広めの脱衣所であった。エキョウの冒険者ギルド本部に併設されている大浴場のものほどきれいではないが、脱衣籠、洗面化粧台、体重計と一通り用意されていた。
「あ。やっぱり入ってるみたい」
脱衣籠の一つにアズキの衣服が入っていた。
「もーアズキってば!一番風呂狙うなんてずるいわよー」
ぼやきながらビオラは軽快に服を脱ぎ、乱雑に脱衣籠に放り込んだ。
「何ぼーっとしてんのよ!早く入るわよ!」
「あ、うん…」
あまりにも速い脱衣にリエルは思わず手を止めていた。返事をする頃にはすでにビオラは浴室への扉を開いていた。
「アズキー!あたし達も入るわ…よ…?」
ビオラは真正面にアズキの姿をしっかりと捉えた。湯舟から上がったばかりのその身体は色白で胸は女子にしてはあまりにも平坦。そこそこがっしりした肩と腰。そして、その股間には女性には絶対に持ちえないものが存在していた。
ビオラと対面したアズキは彼女の視線がそれに定まっているという事実に気づくまで数秒かかった。そして――
「い……いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
道場全体にアズキの悲鳴が響き渡った。
「な、何?どうしたの?」
身体にバスタオルを巻き終えた直後、悲鳴を耳にしたリエルは急いでビオラのもとに駆け付けた。
「あ…あががが…」
信じられない事実に直面したビオラは言葉を失い、全裸で直立していた。
「ビオラ?何があったの?ねぇ?」
問いかけに応じられない状態だと判断したリエルはアズキに尋ねようと浴室に目を向けた。当の本人はその場にうずくまり、自分の身体を隠していた。
「あ、アズキ?どうしたの?」
「み…見ないでくださいぃぃぃぃーーーーーー!」
顔を真っ赤にしたアズキはすごい勢いでリエルの横を通り抜け、身体を拭く、着替えるという退浴のプロセスを目にも止まらぬ速さで終えて廊下へ出て行った。リエルはその素早さに呆気にとられ、見ていることしかできなかった。
「な…何なの一体…?」
とりとめのない話をしばらく続けていたリエルは思い出したかのように自分達の鞄を見た。
「そうね――ってアズキは?」
鞄から入浴道具を取り出そうとしたビオラはアズキが部屋にいないことに気づいた。
「あれ?いつの間に?」
「先に温泉とやらに行ったんじゃね?」
部屋の隅に転がっているトニーが声をかけた。
「どうやらそうみたいね」
鞄の中を改めたビオラはアズキの分の入浴道具がないことを確認した。
「そういえば、みんなでお風呂に入るのってこれが初めてかもね」
「そうね。今までは一人用の風呂かシャワーだけだったからね」
二人はエキョウでアズキと出会ってからの道中を振り返った。
「メイリスさんと旅していた時もそういうのはなかったし、ちょっと楽しみね」
内心ウキウキしながらリエルは自分の入浴道具を用意した。
「ま、今日はあんだけ身体張ったんだし、ご褒美と思って入りましょか」
子供のように目を輝かせているリエルに苦笑しながらビオラは自分の入浴道具を手に取った。
「よし、行くか」
「アンタはお留守番!」
意気込んで部屋を出ようとしたトニーの顔をわしづかみし、ビオラはにべもなく阻んだ。
「プギャー」
――――
「ここね」
客室からしばらく廊下を歩き、台所の隣に温泉を表す記号が描かれた赤い暖簾がかけられた扉を見つけることが出来た。
「隣は男湯かしら…?」
隣には同じ記号が描かれた青い暖簾がかけられた扉があったが、使われている様子がなかった。
「今まで師範しかいなかったから使っていないんじゃない?」
扉を開き、暖簾をくぐると、そこには広めの脱衣所であった。エキョウの冒険者ギルド本部に併設されている大浴場のものほどきれいではないが、脱衣籠、洗面化粧台、体重計と一通り用意されていた。
「あ。やっぱり入ってるみたい」
脱衣籠の一つにアズキの衣服が入っていた。
「もーアズキってば!一番風呂狙うなんてずるいわよー」
ぼやきながらビオラは軽快に服を脱ぎ、乱雑に脱衣籠に放り込んだ。
「何ぼーっとしてんのよ!早く入るわよ!」
「あ、うん…」
あまりにも速い脱衣にリエルは思わず手を止めていた。返事をする頃にはすでにビオラは浴室への扉を開いていた。
「アズキー!あたし達も入るわ…よ…?」
ビオラは真正面にアズキの姿をしっかりと捉えた。湯舟から上がったばかりのその身体は色白で胸は女子にしてはあまりにも平坦。そこそこがっしりした肩と腰。そして、その股間には女性には絶対に持ちえないものが存在していた。
ビオラと対面したアズキは彼女の視線がそれに定まっているという事実に気づくまで数秒かかった。そして――
「い……いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
道場全体にアズキの悲鳴が響き渡った。
「な、何?どうしたの?」
身体にバスタオルを巻き終えた直後、悲鳴を耳にしたリエルは急いでビオラのもとに駆け付けた。
「あ…あががが…」
信じられない事実に直面したビオラは言葉を失い、全裸で直立していた。
「ビオラ?何があったの?ねぇ?」
問いかけに応じられない状態だと判断したリエルはアズキに尋ねようと浴室に目を向けた。当の本人はその場にうずくまり、自分の身体を隠していた。
「あ、アズキ?どうしたの?」
「み…見ないでくださいぃぃぃぃーーーーーー!」
顔を真っ赤にしたアズキはすごい勢いでリエルの横を通り抜け、身体を拭く、着替えるという退浴のプロセスを目にも止まらぬ速さで終えて廊下へ出て行った。リエルはその素早さに呆気にとられ、見ていることしかできなかった。
「な…何なの一体…?」
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