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第十章
勇者と出くわす
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「くそっ…まさかこんなに侵入しているとは…」
貨物室へ向かう道中、十人目の海賊を屠ったリーヴァは溜息をついた。
「何?この程度でギブアップ?」
「誰がそう言った!これだから人間の田舎娘は…」
静葉のあおりに対してリーヴァは毒づいて返した。
「ラノベでもそうだけど、海賊って何百人も囲ってるもんなの?」
殺した海賊の生命力を吸収しながら静葉はふと抱いた疑問を口にした。
「この地域の海賊は元々サンユー海軍のとある一個小隊だったらしい。何らかの理由で軍を追放された彼らはどさくさに船を一隻持ち去り、目立たない入江を拠点にして海賊活動を開始したそうだ。略して海活」
「略称はどうでもいいわよ」
「当初は大した数ではなかったが、職を失った漁師や冒険者達が次々と身を寄せていき、いつしか数だけは一個大隊と互角のものとなったのだ」
静葉のツッコミを意に介することなくリーヴァは説明を続けた。
「しかし、所詮は海賊。縄張りに入った漁船ぐらいしか被害はなく、海軍の存在意義を示す理由にもなるということもあり、本格的な討伐もされることなくこれまで軽視されていた」
「わざと生かしておいたってこと?まあ、貴族の見世物にするぐらいだから納得はできるわね」
原因不明の爆発によって魔大砲が破壊され、海賊が船内に侵入さえしなければ貴族達は安全な船の中から海賊撃退ショーを楽しむことができた。そんな悪趣味なこの世界の娯楽に静葉は嫌悪感を覚えた。
「そのツケが回って来て、思わぬ痛い目を見ている最中ってとこかしら?この状況は」
「愚かな行為には必ず代償がつく…というわけだ。貴様もそれを肝に銘じることだな。シズハ・ミナガワよ」
「…そうさせてもらうわ」
あくまで高圧的な物言いをするリーヴァにイラっときた静葉だが、あえて聞き流すことに専念し、一人でさっさと歩きだした。
「とにかく、このフロアに貨物室――がっ!」
曲がり角を進もうとした静葉は出会いがしらに反対側から来た人物と衝突した。
「いたた…」
ぶつかった相手は貴族でも海賊でもない。この豪華客船には似つかわしくない平凡な剣士の少年だ。
「だ、大丈夫ですか?」
剣士は目の前の少女を気遣う言葉をかけてきた。
「あ、あなたは?」
静葉は目の前の少年の顔を高速で脳内検索した。サンユー王国の大臣、イッサクに招待された勇者オータだ。
「ここは危険です!早くこちらへ!」
逃げ遅れた貴族の少女。オータには静葉がそう見えたようだ。静葉はオータが通って来たであろう道に目をむけた。彼の背後には二、三人ほどの海賊が倒れている。それなりに実力はあると思われる。こちらはどう動くべきか。静葉は相手の次の動きを警戒した。
「ご安心ください!この勇者オータ。命に代えても皆さまをお守りいたします!」
相手の緊張を読み取ったオータは笑顔で目前の少女に手を差し伸べた。
このままか弱い少女のフリをして欺くか。さっさと首を撥ねてしまうか。後ろにいる小うるさいエリート(笑)をどうするべきか。静葉は次の一手を考えた。
「どうしたものか…ん?」
妙な違和感を肌で感じた静葉は周りに目を向けた。ほんのわずかだが空気、いや、空間が揺らめいている。何が起こっているのだろうか。
「さあ早く!まだまだ海賊――が…?」
静葉の思考は目の前の異常な光景を目撃したことで中断させられた。突如、オータの胸から緋色の刃が飛び出したのだ。
緋色の刃はそのまま斜め下に振り下ろされ、オータの口と胴体から鮮血がほとばしった。
「な…?」
大量の出血によってオータは瞬く間に力を失い、困惑の表情を浮かべたままうつ伏せに倒れこんだ。
貨物室へ向かう道中、十人目の海賊を屠ったリーヴァは溜息をついた。
「何?この程度でギブアップ?」
「誰がそう言った!これだから人間の田舎娘は…」
静葉のあおりに対してリーヴァは毒づいて返した。
「ラノベでもそうだけど、海賊って何百人も囲ってるもんなの?」
殺した海賊の生命力を吸収しながら静葉はふと抱いた疑問を口にした。
「この地域の海賊は元々サンユー海軍のとある一個小隊だったらしい。何らかの理由で軍を追放された彼らはどさくさに船を一隻持ち去り、目立たない入江を拠点にして海賊活動を開始したそうだ。略して海活」
「略称はどうでもいいわよ」
「当初は大した数ではなかったが、職を失った漁師や冒険者達が次々と身を寄せていき、いつしか数だけは一個大隊と互角のものとなったのだ」
静葉のツッコミを意に介することなくリーヴァは説明を続けた。
「しかし、所詮は海賊。縄張りに入った漁船ぐらいしか被害はなく、海軍の存在意義を示す理由にもなるということもあり、本格的な討伐もされることなくこれまで軽視されていた」
「わざと生かしておいたってこと?まあ、貴族の見世物にするぐらいだから納得はできるわね」
原因不明の爆発によって魔大砲が破壊され、海賊が船内に侵入さえしなければ貴族達は安全な船の中から海賊撃退ショーを楽しむことができた。そんな悪趣味なこの世界の娯楽に静葉は嫌悪感を覚えた。
「そのツケが回って来て、思わぬ痛い目を見ている最中ってとこかしら?この状況は」
「愚かな行為には必ず代償がつく…というわけだ。貴様もそれを肝に銘じることだな。シズハ・ミナガワよ」
「…そうさせてもらうわ」
あくまで高圧的な物言いをするリーヴァにイラっときた静葉だが、あえて聞き流すことに専念し、一人でさっさと歩きだした。
「とにかく、このフロアに貨物室――がっ!」
曲がり角を進もうとした静葉は出会いがしらに反対側から来た人物と衝突した。
「いたた…」
ぶつかった相手は貴族でも海賊でもない。この豪華客船には似つかわしくない平凡な剣士の少年だ。
「だ、大丈夫ですか?」
剣士は目の前の少女を気遣う言葉をかけてきた。
「あ、あなたは?」
静葉は目の前の少年の顔を高速で脳内検索した。サンユー王国の大臣、イッサクに招待された勇者オータだ。
「ここは危険です!早くこちらへ!」
逃げ遅れた貴族の少女。オータには静葉がそう見えたようだ。静葉はオータが通って来たであろう道に目をむけた。彼の背後には二、三人ほどの海賊が倒れている。それなりに実力はあると思われる。こちらはどう動くべきか。静葉は相手の次の動きを警戒した。
「ご安心ください!この勇者オータ。命に代えても皆さまをお守りいたします!」
相手の緊張を読み取ったオータは笑顔で目前の少女に手を差し伸べた。
このままか弱い少女のフリをして欺くか。さっさと首を撥ねてしまうか。後ろにいる小うるさいエリート(笑)をどうするべきか。静葉は次の一手を考えた。
「どうしたものか…ん?」
妙な違和感を肌で感じた静葉は周りに目を向けた。ほんのわずかだが空気、いや、空間が揺らめいている。何が起こっているのだろうか。
「さあ早く!まだまだ海賊――が…?」
静葉の思考は目の前の異常な光景を目撃したことで中断させられた。突如、オータの胸から緋色の刃が飛び出したのだ。
緋色の刃はそのまま斜め下に振り下ろされ、オータの口と胴体から鮮血がほとばしった。
「な…?」
大量の出血によってオータは瞬く間に力を失い、困惑の表情を浮かべたままうつ伏せに倒れこんだ。
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