218 / 261
第十一章
恋愛沙汰
しおりを挟む
「はい、これで大丈夫です」
「ふう。助かったぜオイ」
アズキから傷薬を塗ってもらったトニーは頭を下げて礼を言った。
オウカ公国の首都セダンに向かう道中、リエル一行は鳥型の魔物のダイブイーグルの襲撃を受けた。ダイブイーグルは大きな翼から放つ突風による攻撃を得意とする魔物。その攻撃で背中に傷を負ったトニーは戦闘後にアズキの治療を受けていた。
「いつもありがとう。アズキ」
ダイブイーグルを難なく撃破したリエルは笑顔でアズキに感謝の意を伝えた。
「あ!い、いえ…!」
不意の笑顔を目の当たりにしたアズキはあたふたした。
「そ、そうだ!これ、よかったら…」
アズキは手元の鞄からいそいそと一本の薬の瓶を取り出した。無色透明の液体が入っている。
「武器の強度を上げる薬です。試しに作ってみましたのでエンハンスソードにでも塗ってみてください」
「塗るだけで?すごい!」
受け取ったリエルは素直に喜んだ。
「色もなく、匂いもしないので塗っても気にならないはずです」
「ありがとう。早速塗ってみるね!」
そう言ってリエルは木の下に置いてある自分の荷物の元へ向かった。アズキは彼女の背中を静かに見送った。
「…ふ~~~ん…」
「ひゃっ!」
背後からの妙な声にアズキが振り向くと、そこにはニヤニヤとした表情で彼を見つめるビオラの姿があった。
「ど、どうしたんですか?」
「いやなに。前から気になってたんだけどぉ…」
一瞬の沈黙を挟み、ビオラは口を開いた。
「あんた、リエルのことが好きなんでしょ?」
「うえ?」
鋭い指摘を受けたアズキは危うく手元の瓶を落としそうになった。
「ど、どうしてそう思うんですか?」
「だって~、あの道場の時からなんかアレだものぉ」
ビオラは近くの木に寄っかかった。
「ま、無理もないわね。アイツ本当にいい奴だから」
元騎士のサリアが営むハバキリ道場。そこにしばらく滞在した際にリエル達はアズキが男であることに初めて気づいた。言い出すタイミングを見失っていたアズキだったがリエルはそれを咎めることなく、今まで通り仲間として接してくれている。
分け隔てなくまっすぐな彼女の姿にアズキはやがて惹かれていったのであろう。
「昔からああなのよ。バカだけどツラは可愛いし、スタイルもいい方だし、誰にでも優しいから地元でもやたらとモテてたのよ」
「へぇ~」
「地元じゃ色んな奴があいつに近寄ったものだわ。ガリ勉な奴とかチャラい奴とか根暗な奴とか電波な奴とか。あいつの知らないところで奪い合いがしょっちゅう起きてたのよ。流血沙汰になった時はドン引きしたわ」
肩を竦め、呆れかえったビオラは当時の様子を振り返った。
「まったく、モテる女ってのは辛いわねぇ」
「その点、おめぇはいいな。全然モテねぇし」
「そうそう。あたしってばガサツだし、ちび体型だし、口と手が同時に出るし、ロクに男が寄ってこないから――ってやかましいわぁ!」
どさくさに口を挟んできたトニーにビオラは強烈なストンピングをかました。
「…ふふ。皆仲がいいわね」
作業をしながら二人と一匹のやり取りを眺めるリエルはのんきに笑っていた。
「ふう。助かったぜオイ」
アズキから傷薬を塗ってもらったトニーは頭を下げて礼を言った。
オウカ公国の首都セダンに向かう道中、リエル一行は鳥型の魔物のダイブイーグルの襲撃を受けた。ダイブイーグルは大きな翼から放つ突風による攻撃を得意とする魔物。その攻撃で背中に傷を負ったトニーは戦闘後にアズキの治療を受けていた。
「いつもありがとう。アズキ」
ダイブイーグルを難なく撃破したリエルは笑顔でアズキに感謝の意を伝えた。
「あ!い、いえ…!」
不意の笑顔を目の当たりにしたアズキはあたふたした。
「そ、そうだ!これ、よかったら…」
アズキは手元の鞄からいそいそと一本の薬の瓶を取り出した。無色透明の液体が入っている。
「武器の強度を上げる薬です。試しに作ってみましたのでエンハンスソードにでも塗ってみてください」
「塗るだけで?すごい!」
受け取ったリエルは素直に喜んだ。
「色もなく、匂いもしないので塗っても気にならないはずです」
「ありがとう。早速塗ってみるね!」
そう言ってリエルは木の下に置いてある自分の荷物の元へ向かった。アズキは彼女の背中を静かに見送った。
「…ふ~~~ん…」
「ひゃっ!」
背後からの妙な声にアズキが振り向くと、そこにはニヤニヤとした表情で彼を見つめるビオラの姿があった。
「ど、どうしたんですか?」
「いやなに。前から気になってたんだけどぉ…」
一瞬の沈黙を挟み、ビオラは口を開いた。
「あんた、リエルのことが好きなんでしょ?」
「うえ?」
鋭い指摘を受けたアズキは危うく手元の瓶を落としそうになった。
「ど、どうしてそう思うんですか?」
「だって~、あの道場の時からなんかアレだものぉ」
ビオラは近くの木に寄っかかった。
「ま、無理もないわね。アイツ本当にいい奴だから」
元騎士のサリアが営むハバキリ道場。そこにしばらく滞在した際にリエル達はアズキが男であることに初めて気づいた。言い出すタイミングを見失っていたアズキだったがリエルはそれを咎めることなく、今まで通り仲間として接してくれている。
分け隔てなくまっすぐな彼女の姿にアズキはやがて惹かれていったのであろう。
「昔からああなのよ。バカだけどツラは可愛いし、スタイルもいい方だし、誰にでも優しいから地元でもやたらとモテてたのよ」
「へぇ~」
「地元じゃ色んな奴があいつに近寄ったものだわ。ガリ勉な奴とかチャラい奴とか根暗な奴とか電波な奴とか。あいつの知らないところで奪い合いがしょっちゅう起きてたのよ。流血沙汰になった時はドン引きしたわ」
肩を竦め、呆れかえったビオラは当時の様子を振り返った。
「まったく、モテる女ってのは辛いわねぇ」
「その点、おめぇはいいな。全然モテねぇし」
「そうそう。あたしってばガサツだし、ちび体型だし、口と手が同時に出るし、ロクに男が寄ってこないから――ってやかましいわぁ!」
どさくさに口を挟んできたトニーにビオラは強烈なストンピングをかました。
「…ふふ。皆仲がいいわね」
作業をしながら二人と一匹のやり取りを眺めるリエルはのんきに笑っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる