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第十一章

捕虜のメイド達

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「ね、ねぇ…」
「どうしたの?」
「私達…本当に大丈夫かな…?」
「奇遇ね。私もそう思う…」

 魔王城の人間用居住区。その一画に設けられた休憩フロアにて、給仕服を着た三人の人間の少女は不安そうに身を寄せていた。

 少女の一人――フレーネは元々、親の借金のカタとして貴族に身を売られ、似たような境遇の少年少女と共にクイーン・ゼイナル号の貨物室に押し込まれ、貴族達の商品として出荷される予定であった。その途中、魔族の襲撃によって船は制圧され、積み荷のほとんどは魔族の手に渡ることとなった。無論、その中にはフレーネ達の身柄も含まれていた。
 そのまま魔族の餌になる。そう腹をくくっていたフレーネだったが――

「なんか…好待遇すぎない?」
「やっぱそう思う?」
「私も」
 丸いテーブルを囲む三人の少女は一斉に頷いた。
 魔王城に連れてこられ、魔王率いる魔族達から与えられたのはきれいな給仕服と生家よりも立派な居室、美味しい食事に大浴場と適度な労働という奴隷にしてはあまりにも環境が整いすぎであった。メイド長を名乗るハーピーによって業務内容とシフトを振り分けられ、指定された時間以上の労働は決して許されない。挙句の果てには給金までもが支払われるという有様であった。ここにいる三人はメイドという業務を与えられ、主に城内の清掃を担当している。

「なんで…人間の私達にここまで良くしてくれんの?」
「そうよね。ごはんはやたらと美味しいし、魔族だらけじゃ居心地悪かろうってわざわざ人間わたしたち用の食堂や大浴場まで用意してくれるし…」
 ちなみに、食堂と大浴場の構造は魔族達が使うものとほぼ同じであった。
「しかも、パルティア様の礼拝堂まであるのよ?」
「パルティア様の?魔族にとっては異教でしょ?」
「でも、そこに何人かの魔族がお祈りしてたのよ?」
「マジで?」
 人間の少女達は魔王城の環境に大きく困惑していた。この城で暮らす魔族達は誰一人としてフレーネ達に危害を一切くわえない。下級の魔族のペズスライムやホブゴブリンでさえも気軽に挨拶せてくる有様である。訓練場や調理場で働いている男子達にも友好的に仕事を教えているのだ。
「確かに居心地は悪くない…むしろ実家よりも良いんだけど…」
「親にすらもこんなに優しくしてもらったことなくて…逆に怖い…」
「労働って…休み時間と給金なんてあったのね…」
 腕を組む。身体を震わせる。目を白黒させる。フレーネ達は各々のリアクションを見せ合った。

「何重々しくなってんのよあなた達」

 フレーネの背後から別の人間の女性が声をかけてきた。彼女達と同じ給仕服に身を包んだやや年上の女性だ。
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