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第15話 お泊まり3

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 シャワーを終えた俺は〝アイテムストレージ〟にある寝巻きに着替え、脱衣所から出ようとすると……

 ──脱衣所のドア越しに、クレハが凄く嬉しそうにお婆ちゃんと話してる声が聞こえる。

「それでね、システィア隊長とエメレアちゃんとミリアとね──」

 お婆ちゃんの、と言われた病気が治り、クレハは元気なお婆ちゃんとこうしてまた話せるのが、嬉しくて嬉しくて仕方がないといった感じだ。

 楽しそうな所、何か少し悪い気がしないでも無いが……ずっと脱衣所にいるわけにもいかないので、パタンとドアを開けて脱衣所から出る。

「あ、ユキマサ君、シャワー浴び終わった?」

 こちらに気づいたクレハがパタパタと走ってくる。

「ああ、タオルもありがとうな」
「どういたしまして。私もシャワー浴びてくるから私の部屋で待ってて? そこが私の部屋だから」

 と、自分の部屋をクレハは指をさして言う。

「私がシャワーから出て来るまでに寝ちゃダメだからね。ユキマサ君のこと話してくれる約束でしょ?」

 クレハが、そっと耳打ちしてくる──

 ああ、俺の話をするって約束したやつか?

 別にここで話してもいいんだが、システィア達にも聞かれた時も、俺は渋ってたからな……
 あまり知られたくない話だと思って、俺に気を使い、自分の部屋で2人で話そうってことか?

「それじゃ、あたしゃ部屋に戻って休もうかねぇ」

 と言い婆さんは立ち上がり、自室に戻ろうとする。

「お婆ちゃん、元気になって本当によかった……」

 その様子をクレハは嬉しそうに見ている。

「ユキマサさん、クレハの事をこれからも何卒宜しくお願いします」

 婆さんはペコリと俺に頭を下げ自室に戻っていく。

「お婆ちゃん! だからそういうのじゃ無いから!」
「おやおや、そうかい?」

 と、楽しそうにクレハをからかう婆さんは、今度こそ自室に戻って行った──。

「じゃ、じゃあ、私シャワー浴びてくるね! 私の部屋で適当に座って待ってて!」
「──あ、おいッ……」

 俺はクレハに呼び掛けるが、クレハはダッシュでシャワーを浴びにいってしまう。

(まあ、言われたとおり部屋で待たせてもらうか)

 ──お邪魔します……と、心の中でいいながら、パタン、と扉を開けクレハの部屋に入る。

 部屋に入ると、さっき聞いた部屋を明るく照らす役割の、日本で言う電球の役割になる──黄色の〝ウィータクリュスタル〟の〝光の結晶ラヴェ・クリュスタル〟がある。

 女の子の部屋で明かりも点けずに暗い中、1人待ってても──それこそエメレアに言われた〝黒い変態〟なので〝光の結晶ラヴェ・クリュスタル〟に明かりを点け待たせてもらう。

(それにしても、小綺麗な部屋だな?)

 木製の床に石造りの壁、本の並んだ勉強机のような物と椅子が1つずつあり。騎士隊で使っている鎧にズラリと綺麗に並んだナイフ? ……いや短剣か?

 それと少し大きめのベッドとクローゼットがある。

 全部キチンと整理されており、ホコリやゴミなども見当たらず、クレハの真面目と言うか綺麗好きな性格が部屋に出ている。

 取り敢えず、俺は椅子に座り待たせてもらう。

 別に女の子の部屋に入るのは、孤児院の理沙の部屋に行ったり来たりはよくあったので初めてじゃないが、やはり何となく落ち着かない。

 ……そういや昔、逆に理沙が真夜中に俺の部屋に『寝れないから眠くなるまで一緒に起きてて!』と言い、熟睡中の俺を『えい!』と言う掛け声と共に叩き起こし、理沙が眠くなるまで話に付き合わされたな。

 だが、理沙は何故か俺のベッドで寝てしまい、俺は理沙に怒られないよう、床で寝るハメになった。

 でも、結局あの後理沙には怒られたんだよな──

『何で床で寝てるのよ! これじゃ、私が夫婦喧嘩した時の奥さんみたいじゃない! ていうか、誰と誰が夫婦よ! ──ま、まだ付き合ってないも居ないでしょ! バカ! ユキマサなんて風邪引いて寝込め!』

 寝ぼけてたのか、理沙は謎の夫婦ワードと、ノリ突っ込みと──〝風邪引いて寝込め!〟と言う、あまり聞かない捨て台詞と共に台所キッチンへ走り去っていった。

 確か、その週は理沙が食事当番で──そのままキッチンへ走り去る辺り、根は凄く真面目なんだよな。

 ちなみに俺は理沙にごはん何食べたい?
 と、聞かれると、俺は毎回決まって〝和食〟と答えるのだが──その週の食事は全部洋食だった。

 いや、洋食も美味しかったけどさ?

 それでも、オムライスにケチャップで〝風邪〟って書くのは勘弁してくれよな……

(つーか、よくケチャップで漢字書いたな?)

 ──と、昔の事を思い出してると……

 パタン、と扉が開き──

「ユキマサ君、待たせちゃってごめんね!」

 風呂上がりの女の子特有の、良い匂いをさせたクレハが、ラフな寝巻き姿の格好で入ってくる。

「待たせちゃってと言うか、他にいる場所もないしな? どちらかと言うと俺が待たせてもらってた形になるからな? 何も謝ることはないぞ?」
「そ、そう言われると……そうだね、じゃあ……お待たせ? で、いいのかな……? 合ってる?」

 少し照れぎみに上目使いでクレハが言ってきて、それがかなり可愛く俺は少しドキッとする。

「ああ、正解じゃないか? あってるよ」
 ──いや、むしろ反則か?
 と、頭をよぎるが……まあいい。

「良かった。ユキマサ君、寝る時はそのベッド使ってね。私は床で寝るから。でも掛け布団は1枚貰うね」

 待て、俺ここで寝るのか?
 てか、クレハ俺と一緒の部屋で寝る気か?

 流石に警戒心無さすぎじゃないか……?

「え、いや、俺が床で寝るが。そもそもクレハが俺と同じ部屋で寝るのも、流石に色々と不味くないか?」
「そんな、私が床でいいよ。後、私はユキマサ君なら嫌じゃないから! それに──ユキマサ君、もしかして……私のこと警戒心の無い女とか思ってないよね?」

「……」
「……ユキマサ君?」

 二コッとしてるが、目が笑ってない……
 あれ……お怒りになってるなこれ……?

「勘違いしないでほしいけど! 男の人をこうやってお家に泊めたり、部屋で一緒って言うのはユキマサ君だからだよ!」

 ムスッとし不機嫌そうなクレハに俺は怒られる。

 えーと、信用してくれてるって認識でいいんだよな……?

「あ、ありがとう……それは素直に嬉しい」
「う、うん……分かってくれればいいよ」

 何やらクレハは少し顔を赤くしながら……
 気合いを入れるように『よしッ』と言い──

「ユキマサ君、じゃあ、半分こしよ!」

 は、半分こ……?

「えーと、ベッドを2人で半分ずつ使うって事か?」

 これで『え? 床を半分こだよ? 2人で床で寝よ!』みたいな、摩訶不思議な発想をする子では無いとは信じているが、念のため確認する。

「うん……/// 小さい頃、まだお母さんとお父さんが生きてた時は、3人で一緒に寝てたベッドだから狭くは無いと思うよ? エメレアちゃんやミリアが泊まる時は基本ここで一緒に寝てるし?」

 だから、ベッドが少し大きめだったのか。

 ──って、そこじゃなくてな?

「それとも……ユキマサ君……私と2人で同じベッドは嫌だったかな……?」

 『あはは……』と少し困ったような様子のクレハだが、その困り顔を頑張って隠そうとするクレハは、見るからに作り笑顔だ。
 そして、その声には力も無く、よく見ると──クレハは今にも泣き出してしまいそうな顔をしている。

(何で、そんな泣きそうな顔するんだよ……)

 本当に感情が分かりやすい奴だな?

「嫌なわけないだろ……だから困ってんだよ……」

 クレハみたいな美少女が一緒のベッドで隣で寝てて、嫌な訳ないだろ……少なくとも俺はな──

「本当……?」
「本当だ。むしろ……」

(──っと、俺は〝むしろクレハみたいな可愛い子が隣にいてくれたら嬉しい〟と言いかけ、口を閉じる)

「むしろ?」
「何でもない……」

(何を言いかけてんだ俺は……)

「そこまで言ったなら言ってよ、気になるでしょ?」

 クレハはムスりとし始める。

「今度な……まあ、嫌なことでは無い……多分」
「た、多分なの!?」

 嫌なこと言ったつもりは無いが……
 可愛いだとか、隣に居てくれたら嬉しいとか言われても、言われた本人は──人によっても受け取り方や感情は違うだろう、だから多分だ。

「じゃあ……今度絶対教えてよ……約束だよ」
「分かった、約束だ。いつとは言わないがな?」

 時間指定は無いのでそれで約束を取り付ける。

「あ、ズルい!」

 うん、まあ、ズルかったなこれは……

 またムスッとし納得がいかなそうなクレハは──

「約束は約束だからね! ちゃんと言ってね!」

 ちゃんとか? それこそズルいな? クレハにそう言われると、何かしっかり伝えないといけない気がする。

「分かったよ……」
「うん、よろしい!」

 と、クレハは満足気で無邪気な可愛い表情になる。

「じゃあ、ユキマサ君はベッドの右半分を使って、私は左半分を使うから──」

 クレハはべッドを指さし半分ずつの詳細を話す。

「分かった。ありがとう」
「そ、それと、ユキマサ君の事は信じてるけど……変な事はしちゃ……ダメだからね……? ほ、本当に……!」

 変な事と言うと……あー、うん。

「分かってる……」

 フリとかでも無いだろうし、信頼してくれてるのだからそれを裏切るわけにいかない──それにエメレアにも、クレハが嫌がる事はしないって約束したからな。

「うん、信じたよ!」

 頷くクレハだが、その後にボソッと──
 『む……そういうの……あまりよく分からないけど──でも、何かあっさり過ぎな気が……う……難しい……私やっぱ魅力無いのかな……』
 と、凄く小さな声で呟いている。

 耳は良い方なので、普通に聞こえてた俺は思わず、

「クレハはどう見ても魅力的だろ? お前、鏡見たことあるのか?」

 と、反射的に本心でそう言ってしまう。

「──ふひゃぁッ!!」

 ボンッ! とクレハの顔は真っ赤になり、珍しく素っ頓狂すっとんきょうな声をあげる。

「き、聞こえてた?」

 恐る恐る……とクレハは聞いてくる

「耳は良い方なんだ」
「……ッ……///」

 まさか聞こえてるとは思わなかったのか……
 クレハは顔を赤くした下を向いたままだ。

「わ、私もう寝るね……!」
 
 ──ヒュンッ! パッ!!
 と、クレハは〝空間移動〟を使いベッドに潜り込む。

 いや、この距離でそれ使うのかよ!?

「……おやすみ。じゃあ、俺の話はしなくていいな?」

 と言いながら、俺もベッドに向かおうとすると……

 ──ヒュンッ! パッ!!

「 聞 く !」

 と、再び〝瞬間移動〟で目の前にクレハが現れる。

「あ、ああ……お帰り?」

 というか、そこまで期待されても困るんだがな?

「き、聞くまで寝ないから!」

 クレハはグイグイッと俺の袖を掴んでくる。

「そんな期待されるような話じゃないぞ?」
「私が聞きたいだけだからいいの!」

 クイックイッとクレハが更に袖を引っ張ってくる。

「分かった。まあ、多分、突拍子も無い話しだから、寝る前に絵本でも読んでると思って聞いてくれ」

 ──神様も出てくる話になるしな?

「それと少し疲れた、横になってもいいか?」
「うん。じゃあ私もちょっと横になろうかな」

 俺とクレハは半分ずつベッドを使い横になる。

 さて、どこから話せばいいんだ?
 と、考えながら……ふと横を見ると……

「──ッ……!!」

 ちょうど同じタイミングでクレハと目が合う。

「で、何が聞きたい?」

 よし、質問形式にしよう。
 そう考えて俺はクレハに何を聞きたいかを聞く。

「えっと……じゃあ、ユキマサ君は何処から来たの? 出身とか聞いてもいいかな?」

 これは聞かれるだろうと思ってたので……

「嘘じゃないからな、ふざけてもないぞ?」

 と、俺は最初に念を押す……

「うん、分かった」

 それにクレハは真剣な目で答えてくれる。

 なので、俺は変に隠さずに……

「──俺は神様に……正確には、女神アルテナに呼ばれてな? 俺はこの世界からみて〝異世界〟から来た」

 と、率直にクレハに告げるのだった。
 ……いや、だって他に言いようも無いしな?
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