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第280話 帰路10
しおりを挟む「ふぅ、食ったなぁ!」
竜車に戻るとホっと一息吐く。
「はい、お腹一杯です!」
フォルタニアも屋台で結構色々と食べていた。
傍から見ても楽しそうだったので俺も嬉しくなる。
街で宿を取るかと言う話になったが、何故かフォルタニアが偉く竜車の荷台を気に入ったらしく、昨日と同じく二人とも竜車で今夜も休むことにした。
今日も俺は竜車の回りに結界を張る。
比較的、安全な街と言っても用心するに越したことは無いだろう。
戸締まりした竜車の荷台に布団を並べ、横になると、フォルタニアが楽しそうに話かけて来る。
「そういえば、ユキマサ様の武器はエルルカ様の作られた武器なんですよね?」
「ん、ああ、らしいな? てか、エルルカは鍛冶師なんだよな?」
「ふふ、エルルカ様の実力なら鍛冶以外で引く手数多でも、納得ですよ。とても優しい方ですし」
「六魔導士は内面も重視されるんだったな?」
シラセもパンプキックも世辞抜きで良い奴らだった。実力も確かだ。
「ユキマサ様の剣は何て名前ですか! 雪月花シリーズの1つですよね?」
「月夜って名前だ。てか、雪月花シリーズ?」
「ご存じ無いんですか? エルルカ様が作られる武器は3種類のみ。短剣、剣、刀の3種です。そしてその武器の名前には、短剣に雪、剣に月、刀に花が必ず付くので、通称──雪月花シリーズと呼ばれています」
キリッとした目でフォルタニアが説明する。雪月花シリーズが好きなのか少し興奮気味だ。
「そんな呼び方の決まりがあったんだな」
「代表作だと〝雪歩〟や〝花橘〟は〝中央連合王国アルカディア〟の国宝に指定されてますよ」
「それに並ぶ名剣ってことか」
一先ず、大猪とかをバカスカと解体するような代物ではないことは分かった。
てか、国宝に並ぶって下世話な話、あれ一体いくらするんだ? ……うわあ、考えたくねぇ。
「はい、そうですよ。大切にしてくださいね──ですが、魔王を葬り、黒龍を倒した剣ってだけで、もう十分以上に名剣と呼べる代物でしょうね」
ふふふ、と、謎テンションのフォルタニア。
「どうした? やけにテンション高いな」
「あ、すいません。ちょっと楽しくなってきちゃいまして」
「いや、謝る必要は無いが。ハハッ、そんなにこの雪月花シリーズが好きなんだな」
「む、それもですが。私はユキマサ様とこうして居られることが楽しいのです」
ん? ありがとう……で、いいのか?
「竜車に乗り、街を見て、美味しい物を一緒に食べて、色んなことを話ながら、こうして隣り合わせで寝る。いつまでも、こんな時間が続けばいいのに」
と、フォルタニアは何処か寂しそうな声で言う。
俺も楽しくて忘れていたが、明日にはもうこの旅は終わりなんだな。そう思うと確かに俺も寂しく思う。
そうか、そうか……そうか。
「また来ればいいさ。いつでも付き合うぜ、旅ぐらい。まあ、俺はこの世界に詳しくないから案内するのはフォルタニアになるけどな?」
「そうですね、また必ず来ましょう、約束ですよ」
小指を伸ばしてくるフォルタニアの指に俺は、自身の小指を絡める。ああ、約束だ、また必ず来よう──
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