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第350話 捜索依頼
しおりを挟む「なあ、シナノ。人を探してるんだが、ちょっと手伝ってくれねぇか? 銀貨1枚出す」
「人探し? 1時間で銀貨1枚なら引き受けましょう」
時給1000円か。
まあ、人探しなら安い部類だろう。
「ちゃっかりしてるな。分かった、払う」
「私はお金に困ってるんです。無償じゃ誰も食べてはいけませんよ」
シナノは少し目を細め、ムスり目で俺を見る。
「ごもっとも。さて、人探しと言ったが、結構簡単だ。さっきの場所に16歳ぐらいの黒髪のセミロングの少女が来る筈だ。そいつに取り合ってほしい」
「追われてるんですか? いえ、深くは聞きたくないですが。あ、いえ、でも、少し気になります」
「なら簡単に話そう。正解だ。追われてるのは俺だがな。その子は俺の逃亡旅に付いてきてくれてる」
うわぁ……と、冷たい目でドン引きのシナノは俺を見る。無言というのは時にどんな言葉よりも刺さる時があるよな。まあ、それが今なんだけど。
「まあ、分かりました。ユキマサさんが呼んでると言えばいいですね」
「ああ、それで伝わる」
「それと追われているのなら、私が行ってきますので、そこのボロい小屋──もとい、私の家ですが。そこに身を隠していてください。汚い、ボロい、狭い等の文句は一切受け付けません。言ったら蹴ります」
うおっと、怖い。
俺はそんな大袈裟なジェスチャーをする。
そんな俺の反応が何故か気に入ったらしく、ふふん、とシナノは満足そうな顔をする。
「では、行ってきます」
「悪いな、頼んだぜ」
て、ことで俺はシナノの家で待たせて貰う。
小屋の後ろには敷居で囲われた公衆電話ぐらいの、これまたボロい更に小さな小屋(?)があった。
ん、あ、これトイレか。一瞬、分からなかったぜ。
「お邪魔します」
家の方の古びた木製の扉を開け、中を覗く。
畳4つ分ぐらいのスペースがあった。
お世辞にも広いとは言えない。
床は畳は勿論、木とかも無く、剥き出しの地面だ。
多分キッチンと思われる場所には〝火の結晶〟やこれまた年期の入った鍋やフライパンが1つずつ、そして一人分の皿とコップとスプーンとフォークがあった。
瓶に入った調味料は塩と醤油しか無かった。
小袋に入った随分と水分の少ない米──
恐らくは古々米、いやそれより古いかもしれん。
桶に汲まれた水だけは新しいな。
つーか、あまり物色しても悪いか。
ひとまず適当な壁に寄り掛かり二人の帰りを待つ。
そーいや、異世界で女子の部屋に入ったの三軒目だな。まあ、だから何だって話しだけど。
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