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第411話 銀雪祭2
しおりを挟むポルケッタのパニーノを注文しようとすると──
「ユキマサ君、ポルケッタのパニーノはエネルギーチーズの組み合わせが私のオススメだよ」
クレハがエネルギーチーズなる組み合わせを勧めてくる。特に断る理由もないので俺は頷き。
「お、じゃあ、それにしようぜ」
と、ポルケッタのパニーノをエネルギーチーズをトッピングで1つ頼む。
待つこと数分──
(──お、美味そう!)
ポルケッタは牧野とイタリアに行った時に食った以来だな。パニーノは初。エネルギーチーズも勿論初。このチーズは異世界独自の産物だろうしな。
ポルケッタのパニーノを食ってみると、これがやたら美味い。クレハも「美味しい!」と言いながら、一口と言わず三口くらい食べてた。
銀雪祭の会場はとにかく何でもあった。
日本の祭り屋台とは違い、服、靴、玩具、花、飾り物、食器、骨董品、家具、アクセサリー、香水、絵、終いには馬や地竜まで売ってたよ。
地竜な。この逃亡旅に欲しいっちゃ欲しいんだけど。今はいいかな〝アイテムストレージ〟にも生きてる物は仕舞えないし。
食い物も色々あった。生のソーセージを焼いたサルシッチャ。子牛肉のカツレツ、ウィンナーシュニッシェル。肉ばっかだな。クレハが喜んでたよ。
馴染みが深い所だと日本の屋台でもよくあるイカ焼きがあった。
異世界でも変わらぬ醤油の香りが心地よい。でもイカの種類は一般的なスルメイカでは無く、雪イカと言う異世界独自のイカだった。
「お兄さん、お兄さん、この絵はいかがだい?」
少しケバい露天のお姉さんに声をかけられる。
「残念ながら、絵にはあまり興味なくてな?」
「そうと言わず、一枚だけ、一枚だけ。今なら金貨2枚の所を金貨1枚に負けとくよ!」
(10万じゃねぇか! 祭りの屋台の値段じゃねぇよ。つーか、九分九厘偽物だろそれ)
「値引きはありがたいが、絵はやめとくよ。悪いな」
そう言い俺はクレハを連れてその場を去る。
少し進むと雪で作られた雪像が列を成していた。
三本角のペガサス、雪のお姫様、剣を携えた英雄、イカ、ドラゴン。ファンタジー系な雪像シリーズの中にナチュラルにイカ混ざってるけどそこはスルーで。
その中でも一際、目を引くのはイカ──! じゃなかった……城だ。城! 1000分の1スケールぐらいの雪で作られた城。1000分の1って言っても普通の民家ぐらいのサイズはある。城って大きいからな。
「凄い綺麗、見て、ユキマサ君、雪のお城だよ!」
「ああ、綺麗だな。誰が作ったんだか知らねぇが。惜しみ無い拍手と称賛を送りたい気分だぜ!」
「お伽噺の世界みたい──私、お伽噺大好きなんだ」
クレハは笑う。小さな子供がトランペットや正義のヒーローでも見るかのようなワクワクした表情だ。
釣られて俺も笑う。
「俺も好きだぜ。お伽噺、ロマンがあるよな」
「うん、それにワクワクするよね。好きだなぁ」
本当に好きなんだろう。その笑顔は眩しい。もー好きで好きで堪らないみたいな感情が一目で分かる。
一頻り、俺とクレハは城を眺めた。ライトアップされている雪の城は時間を忘れて眺めていた。
余談で、城を見てる途中にクレハが手を握って来たんだが……(寒かったのかな?)
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