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第412話 銀雪祭3
しおりを挟む雪像や雪の城に見とれていると、あっという間に30、40分と時間が過ぎていった。
(って、やべ。屋台の制覇、時間ねぇ!!)
そしてふと、辺りを見渡すと、アリシアの手を引くチャッチャラーの姿が目に入った。
7年ぶりに自由に歩くのであろうアリシアの速度に合わせ、優しく手を繋ぎながら本当に幸せそうに歩いて来ると、同じく雪の城と雪像に目をやっていた。
手にはさっき俺たちも買ったポルケッタのパニーノを持っている。
「あ、ユキマっさん! クレハちゃんも!」
ブンブンとポルケッタのパニーノごと手を振るチャッチャラーとアリシアがこっちに向かってくる。
「よう、1時間振りぐらいか。後、それ美味いよな」
赤いマフラーを巻き直しながら俺は言う。
この街に来て一番美味かったな。ポルケッタのパニーノ。帰りに残ってたらもう1つ買っていくかな。
「──奉納舞踊はそろそろか?」
「もうすぐっスよ! お、噂をすれば」
ゾロゾロと列を成して銀雪祭の会場中心部に入ってきたのは、全身を銀色の狼の被り物で全身を包んだ。パッと見は獅子舞の狼バージョンみたいになってる、何だか祭りチックな集団──
(──待て! イカだ! イカが居るぞ!)
狼仮装集団の中に確かに1匹だけイカがいる。
白い全身タイツを着たスタイルの良い胴に、この会場では極めて異質なそいつの頭の被り物はイカだ。
ダメだ。目が、目がぁ~! イカに集中しちまう。
何だよあのイカは! キレッキレに舞いやがって!
「あぁ、本当に久しぶりに見たわ。もう二度と見れないと思ってた。懐かしい、あの頃と変わらない。銀雪祭──ありがとう、ユキマサ君、君のおかげよ」
両手を合わせ昔を懐かしむアリシアは嬉しそうに銀色の狼仮装集団を見ている。
アリシアがイカにノーコメントなのは、あのイカはこの奉納舞踊のレギュラーキャラなのか!?
それか俺にしか見えてないのか……あのイカは雪降る街に現れる伝説のイカの妖精なのかもしれない。
(な、何て、自由な動きだ!!)
異世界チックなケルト民謡の今すぐ踊り出してしまいたくなるような音楽にイカは怖いぐらいの奇妙な謎ダンスで参加している。
「オイ何だあのイカは? ノーファンタジーだぞ!」
「……?」
「え、イカスか? イカは奉納舞踊に付き物っスよ」
「よかった。お前にも見えるんだな」
チャッチャラーとアリシアには〝?〟の顔をされた。イカに疑問を持つのが疑問と言った感じで。え、俺がおかしいの?
でもまあ、チャッチャラーの言葉から推測するにあれはイカの妖精じゃなかったんだな。
一先ず安堵。でもだとしたらあれはなんだろうか?
「み、見えるっスけど。どうしたんスか?」
「いや、頭の思考がイカ迷宮に入っちまってな……」
「頭こんがらマッチョ的な感じッスか?」
「すまん、よく分からんが。多分それだ」
頭からイカが離れん。落ち着け俺。
祭りのメインは狼──銀狼だ。あと屋台!
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